尿酸値を下げる薬のダークサイド

尿酸値の上昇は、恐らくコレステロールの上昇と似ていて、その値が高くなると有害で、薬などで低下させることが健康的であると思わされています。高尿酸血症は慢性腎臓病(CKD)でよく認められているので、血中の尿酸の増加が腎臓に有害な影響を与えると考えれています。本当でしょうか?

症状もないのに、尿酸降下薬を使用することは正当化されるのでしょうか?薬を飲むと慢性腎臓病の進行を遅らせることができるのでしょうか?

実際には、「高尿酸尿症」が腎疾患を引き起こすという明確な証拠がある一方で、「高尿酸尿症」がない状態での「高尿酸症」が腎疾患を引き起こすかどうかは明らかではありません。

今回の研究では、最近実施されたアロプリノールによる血中の尿酸値の低下が慢性腎臓病の進行に及ぼす影響を検討した2件の大規模プラセボ対照試験(PERLおよびCKD-FIX)を分析しています。

PERL試験の方は1型糖尿病で糖尿病性腎症の患者530人が対象です。CKD-FIX試験はCKDステージG3およびG4の369人が対象です。(図は原文より)

上の図はPERLおよびCKD-FIXの結果です。青がプラセボ、オレンジがアロプリノール投与群です。AのPERL試験の結果は、どれも有意差はありませんでしたが、死亡者数はアロプリノール群10人(3.8%)でプラセボ群4人(1.5%)でした。死亡のリスク比はアロプリノール群が2.46倍で死亡リスクが高い傾向が認められました。

その他の、心血管イベントのリスク、クレアチニンが2倍になるか末期腎不全になるリスクもアロプリノール群の方が多い傾向でした。有意差はないとはいえ、尿酸値の低下は腎臓になんら良い影響は与えないというよりは、むしろ悪い方に影響しているようにも見えます。

BのCKD-FIX試験の結果も同じような傾向です。死亡数はアロプリノール群11人(6%)、プラセボ群6人(3%)とアロプリノール群の方が多くなり、リスク比も1.89倍でした。

上の図は、死亡数や死亡率を示しています。図のAはCKD患者において、PERLおよびCKD-FIXで、アロプリノールにより血中の尿酸値がどの程度のレベルに下がったかによる、プラセボに対する死亡リスク増加を見ています。PERL試験ではより尿酸値が低下し、より死亡リスクが高くなっています。

図のBは、PERLとCKD-FIXのアロプリノールとプラセボをそれぞれ合わせた死亡数を示しています。アロプリノール群では21/449(4.7%)とプラセボ群では10/444(2.2%)の患者が死亡しました。アロプリノール群の方が2倍以上です。

図のCは別の研究で、痛風患者を対象として、アロプリノールとフェブキソスタットなどの薬に、レシヌラドという尿酸値を下げる薬(恐らく日本では未承認)を併用した群とプラセボを併用した群を比較したものです。血中の尿酸値が5.0mg/dL未満に低下した割合はプラセボでは10%にも満たなかったのですが、レシヌラド併用群では200mgで30%程度、400mgでは50%近くに尿酸値が低下しました。しかし、死亡率はプラセボではゼロだったのに、レシヌラド200mgでは0.25%程度、400mgでは0.5%程度と増加しました。

図のDではアロプリノールとフェブキソスタットを比較した別の研究で、フェブキソスタットの方が尿酸値が低下した割合が大きかったのですが、その分死亡率も高くなっていました。

尿酸値を下げる薬ではCKD患者における腎機能低下の進行速度を遅らせることができないこと、さらに、痛風患者の研究でも死亡率に関する明確な危険性のシグナルが現れていると思われます。

恐らく血中の尿酸値を下げても腎機能に有益な影響は示しません。どのような治療においても重要なのは安全性です。CKDまたは痛風に対する尿酸値低下療法の主な問題ももちろん安全性です。今回の研究の結果のように、尿酸値を下げることの安全性は決定的には証明されていません。逆に、危険シグナルが点灯しています。死亡率の危険シグナルが確認されています。最近の2つのCKD試験では、両方のアロプリノール群で患者数が死亡数より多くなりました。

様々な薬にはダークサイドがあります。尿酸値を下げる薬にもダークサイドが存在しているようです。薬は人間の重要なメカニズムの一部を無理やり変化させて、数値上、表面上のデータをよくするだけで、健康になれるわけではありません。様々な研究ではできる限りダークサイドが見えないようにしています。ほとんどの研究では製薬会社がスポンサーですからね。

まずは日常生活、食生活を改善することが重要です。

「The dirty little secret of urate-lowering therapy: useless to stop chronic kidney disease progression and may increase mortality」

「尿酸値を下げる治療の汚い秘密:慢性腎臓病の進行を止めるのに役立たず、死亡率を上昇させる可能性がある」(原文はここ

2 thoughts on “尿酸値を下げる薬のダークサイド

  1. 「様々な薬にはダークサイドがあります。尿酸値を下げる薬にもダークサイドが存在しているようです。薬は人間の重要なメカニズムの一部を無理やり変化させて、数値上、表面上のデータをよくするだけで、健康になれるわけではありません。」
    早期発見早期治療が大切、といわれますが、このような面も確かにあると思うので、病院からは足が遠のきます。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      できる限り医療には頼らない方が良いでしょう。
      特に慢性のものは医療で治るわけがありません。

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