インスリン抵抗性を示すTyGインデックスと冠動脈プラークとの関係

TyGインデックスはインスリン抵抗性のマーカーで、この数値が高いと様々な疾患のリスクが高くなることが示されています。(測定はここから)

当然、心血管疾患は糖質過剰諸侯群なので、TyGインデックスの増加は冠動脈疾患と関連があると考えられます。(「中性脂肪と血糖値からわかるTyGインデックスと心血管代謝疾患のリスクとの関連」「中性脂肪値と血糖値からわかるTyGインデックスと動脈硬化」など参照)

今回の研究では、TyGインデックスと冠動脈プラークの関係を調べています。冠動脈造影とOCT(OCT:Optical Coherence Tomography(光干渉断層撮影))を受けた冠動脈疾患患者の、最終的に232人の冠動脈プラークが収集されました。平均年齢は58歳、79.3%が男性で、すべての患者は、TyGインデックスの中央値に従ってグループ分けされました。T1グループ:7.71≤TyGインデックス≤9.13、T2グループ:9.14≤TyGインデックス≤10.99です。OCTでプラーク線維性キャップの厚さを測定し、プラークを脆弱プラークと非脆弱プラークに分けました。

下の表は脆弱性プラークとさまざまなリスク因子との関係です。(表は原文より改変)

変数 脆弱なプラーク
OR(95%信頼区間) β
セックス
女性 1
1.824 (0.944, 3.522) 0.611 .074
年齢 1.020 (0.994, 1.047) 0.02 .134
BMI 1.012 (0.931, 1.101) 0.012 .771
喫煙
いいえ 1
はい 2.021 (1.127, 3.623) 0.704 .018
飲酒
いいえ 1
はい 0.761 (0.419, 1.382) −0.273 .37
高血圧
いいえ 1
はい 2.258 (1.315, 3.877) 0.815 .003
糖尿病
いいえ 1
はい 1.619 (0.916, 2.860) 0.482 .097
脳梗塞の既往歴
いいえ 1
はい 1.813 (0.759, 4.416) 0.605 .178
腎機能障害
いいえ 1
はい 8.282 (2.378, 18.845) 2.114 .001
総コレステロール 0.957 (0.765, 1.196) −0.044 .699
中性脂肪 0.959 (0.782, 1.176) −0.042 .689
ホモシステイン 1.174 (1.101, 1.251) 0.16 <.001
CRP 1.389 (1.161, 1.663) 0.329 <.001
血清アミロイドA 1.154 (1.065, 1.249) 0.143 <.001
空腹時血糖 1.190 (1.100, 1.288) 0.174 <.001
TyGインデックス 2.175 (1.409, 3.357) 0.777 <.001
T1 1
T2 2.638 (1.548, 5.797) 1.183 <.001

非脆弱性プラークと比較して、喫煙歴、高血圧歴、腎不全歴、ホモシステイン、CRP、血清アミロイドA、空腹時血糖、TyGインデックスは、脆弱性冠動脈プラークと有意に相関していました。やっぱりコレステロールは関連がありませんでした。

TyGインデックスは、冠動脈の脆弱性プラークと有意に正の相関があり、TyGインデックスの高いT2の患者はT1の患者よりも脆弱性プラークを発症する可能性が2.638倍高くなりました。様々な調整をしても、TyGインデックスは、冠動脈の脆弱性プラークと有意に正の相関がありオッズ比は3.273でした。

様々な調整をすると、非糖尿病患者におけるTyGインデックスと脆弱プラークの間には統計的有意差は認められませんでしたが、糖尿病患者においては、TyGインデックスは脆弱プラークと有意に相関し、統計的有意差が認められ、オッズ比は3.273でした。

急性冠症候の原因の多くは、冠動脈壁に存在する脆弱なプラークが破綻し,血栓が形成されることにより冠動脈が一部あるいは完全に閉塞を来すことにより発症します。これらのプラークは必ずしも有意狭窄病変とは限らず、70%近くの症例において発症前の冠動脈狭窄度は50%以下であることが報告されています。(ここ参照)

心血管疾患は糖質過剰症候群です。プラークにLDLコレステロールが認められたとしても、それは原因ではなく、結果です。糖質過剰摂取は高血糖と高インスリン血症、インスリン抵抗性を起こします。その状態ではインスリンシグナル伝達が異常になり、内皮機能障害を引き起こし、血管拡張の崩壊や細胞炎症を引き起こし、その結果、血管壁へのLDLコレステロールの多量の沈着を促進するのでしょう。また、高血糖やインスリン抵抗性では酸化LDL、糖化LDLが増加し、それがスカベンジャー受容体を介して、貪食され、マクロファージは次に泡沫細胞となり、プラークの蓄積となるのでしょう。糖質過剰摂取およびインスリン抵抗性はプラーク形成を促進する可能性があるのです。LDLコレステロールが原因ではありません。

今回の研究のTyGインデックスの中央値は9.13でしたが、私は8未満というのが一つの目標値だと思っています。8.3以上は注意信号、9を越えたらかなり危険な状態だと思います。

「Correlation between triglyceride glucose index and coronary plaque: An observational study」

「中性脂肪血糖指数と冠動脈プラークの相関関係:観察研究」(原文はここ

2 thoughts on “インスリン抵抗性を示すTyGインデックスと冠動脈プラークとの関係

  1. 塩分制限必須、脂質悪玉説などの
    「健康常識」が、
    「糖質過剰摂取およびインスリン抵抗性はプラーク形成を促進する可能性があるのです。LDLコレステロールが原因ではありません。」
    へとシフトする日は来るのでしょうか?
    知らんけど(「常識」より「実感」)

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      一般人へのメッセージとして現在の健康常識が変わることはないでしょう。
      それで儲けている人、企業ばかりですから。

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