筋肉の量は、そのまま筋力を示しているわけではありません。高齢者、特に糖尿病の人では筋肉があっても筋肉の質が低下するようです。
今回の研究では、糖尿病の高齢者485人と糖尿病でない高齢者2,133人の握力と膝伸筋の強さおよび筋肉量を評価しました。平均年齢は73~74歳、BMIは27~30程度です。HbA1cは糖尿病ではない人が6.0、糖尿病ではおよそ8です。(図は原文より)
上の図は、男女別にみた糖尿病の有無別の腕と脚の筋力、筋肉量、筋肉の質の比較です。男女ともに、脚と腕両方で筋肉の量(muscle mass)は糖尿病患者の方が有意に多いにもかかわらず、筋力(strength)は男性では有意ではありませんが低くなっていました。そして、筋肉1kg当たりの筋力を筋肉の質(muscle quality)として、糖尿病では、男女ともに腕も脚も有意に筋肉の質が低くなっていました。
上の図はAが脚、Bが腕の筋肉の質を示しています。糖尿病なし (□)、糖尿病罹病期間が6年未満の被験 ()、糖尿病罹病期間が6年以上 (■)です。糖尿病がない人と比較して、糖尿病罹病期間が長い人(6年以上)は、筋肉の質が最も低くなっていました。
上の図は、血糖コントロールのレベルと筋肉の質糖尿病なし (□)、HbA1c≤8.0%の糖尿病 ()、HbA1c >8.0%の糖尿病 (■)です。血糖コントロールが不良な糖尿病患者(HbA1c >8.0%)は、筋肉の質が最も低くなっていました。
2型糖尿病の高齢者における機能制限や障害のリスクの増加の一因は、このような筋肉の質の低下にあると思われます。さらに、糖尿病での骨格筋への脂肪浸潤の増加による筋肉組成の変化が、筋肉の質の低下につながる可能性があります。
糖尿病では、慢性の炎症、AGEs(終末糖化産物)の増加が起きています。このことも筋肉の質の低下を招くでしょう。糖尿病性神経障害の存在も関係しているでしょう。
いずれにしても、糖質過剰摂取を続けることは、筋肉に悪影響があります。まずは糖質制限で血糖値、インスリン分泌を低下させましょう。
「Decreased Muscle Strength and Quality in Older Adults With Type 2 Diabetes: The Health, Aging, and Body Composition Study」
「2型糖尿病の高齢者の筋力と筋質の低下:健康、老化、体組成に関する研究」(原文はここ)
「筋トレに炭水化物(糖質)は必須!」
とのトレーナーは多い(ほとんど)
ですが、単純な筋肥大には有効でも、
今回の論文のように筋肉の質に
対しては問題があるのかも
しれませんね。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
筋肉も骨も、その質は非常に重要です。糖質は質を劣化させます。