糖尿病は認知症の危険因子としてよく知られています。しかし、これは糖尿病という病気が認知症を起こすわけではありません。根本原因が同じだからです。アルツハイマー病は3型糖尿病と呼ばれているくらいで、その根本原因は糖質過剰摂取でしょう。(「認知症になる前の14年間を追ってみると・・・」「血糖値スパイクは認知症のリスクを増加させる」「糖尿病や糖尿病予備軍は軽度認知機能障害から認知症になるスピードを加速させる」「糖質摂取と軽度認知障害、認知症の関連」など参照)
今回の研究では、糖尿病や前糖尿病と脳年齢の関連性を分析しています。UKバイオバンクの40歳から70歳までの認知症のない人31,229人が対象です。11年間の追跡調査中に最大2回の脳MRIを受けており、そのデータを基にAIによって1,079パターンの表現型を特定して、脳年齢ギャップ(BAG:脳年齢から実年齢を引いたもの)が推定されました。(図は原文より)
上の図は血糖状態と脳年齢ギャップ(BAG)の関係です。Aの図は、正常血糖、前糖尿病、糖尿病の参加者における BAGです。Bは横軸のHbA1cとBAGの関係です。Cは血糖状態とBAGの変化の関係を示しています。グレーは正常、薄い赤が前糖尿病、濃い赤が糖尿病です。
前糖尿病の人の脳年齢は、実際の年齢よりも平均0.5歳高齢と判定されました。糖尿病患者の脳年齢は、平均2.29歳高齢でした。糖尿病をHbA1cで分けると、HbA1cが8%以上の患者では平均4.2歳高齢と判定されました。
HbA1cが増加すると、BAGはほぼ直線的に増加すると推測されます。
糖尿病はBAGの年間0.27年の増加と関連していました。
血糖状態とBAGの関連における性別、心血管代謝リスク因子、健康的なライフスタイルの役割を示しています。。Aの図は正常血糖、前糖尿病、糖尿病におけるBAGを性別と心血管代謝負荷で分けたものです。血糖状態と性別および心血管代謝リスク因子の間に有意な相互作用が検出されました。
糖尿病とBAG高値との関連は男性でより顕著でした。糖尿病の男性のBAGは2.63歳上昇したのに対し、女性は1.76歳でした。
2つ以上の心血管代謝リスク因子を持つ人では、前糖尿病と糖尿病は平均BAG がそれぞれ1.32年、3.08年と関連していたのに対し、心血管代謝リスク因子の負荷が低い人ではそれぞれ0.24年と1.96年でした。
Bの図は血糖状態とライフスタイルのBAGへの効果のβ係数(関連の強さ)です。菱形は最適な健康的なライフスタイル(非喫煙、無飲酒または軽度/中程度の飲酒、高い身体活動)で〇はその逆、最適ではないライフスタイルの人です。
糖尿病があり最適なライフスタイルを送っている人の脳年齢は、実年齢より平均でわずか0.78歳高かったのに対し、最適でないライフスタイルを送っている人の脳年齢は2.46歳高くなりました。したがって、健康的なライフスタイルはBAGの1.68歳の減少に関連していました。正常血糖と前糖尿病の人の間、および最適なライフスタイルと最適でないライフスタイルの間では、それぞれBAGのより緩やかな減少が見られました。
本当の最適なライフスタイルは人間としての正しい食事と運動です。もちろん喫煙は良くないでしょうが、この研究では、糖質過剰摂取から目を逸らすような目的でライフスタイルを持ち出しているようにも見えます。そもそも食事が間違っていなければ糖尿病にもなりません。
いずれにしても、糖質過剰摂取により、高血糖や脳のインスリン抵抗性が増加し、脳が劣化していきます。(「肥満の人の脳のインスリン抵抗性」「20代の若者でもインスリン抵抗性で脳のグルコースの代謝が低下する」「ほんのわずかな空腹時血糖の増加でさえ、脳はアルツハイマー様のパターンの反応になる」など参照)脳はケトン体が大好きで、ケトン体を利用することは標準装備です。(「脳はケトン体好き」「脳のケトン体の利用は標準装備」など参照)脳は使えるブドウ糖が少なくなったから仕方がなくケトン体を利用しているのではなく、ケトン体が豊富に存在すれば、好んでケトン体を利用していると考えられます。
甘いものがやめられないのは、糖質依存だけでなく、脳のエネルギー源として上手くブドウ糖を利用することができなくなったために、脳がエネルギー不足を感じて、どんどん糖質を欲しているのかもしれません。年齢を重ねて、甘いもの好きになってしまった人も同様でしょう。そこで糖質摂取をしてしまっては悪循環で、ケトン体(MCTオイルなど)を摂取したり、体でケトン体を生成したりすれば良いのです。
認知症も糖質過剰症候群です。
「Diabetes, Prediabetes, and Brain Aging: The Role of Healthy Lifestyle」
「糖尿病、前糖尿病、脳の老化:健康的なライフスタイルの役割」(原文はここ)
私見ではありますが
長年要介護高齢者と接して
いて実感するのは、
麻痺や難病などで動けない
方々よりも、
認知機能が低下した方々のほうが
尊厳が犯されがち、という現実です。
糖質に気をつけて認知機能は
保ちたいものです。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
死ぬまで認知機能は維持したいですね
昨日2024年糖質制限講演会東京で
江部先生と大櫛教授の話を聴講してきましたが
まさに糖質の摂り過ぎはあらゆる病気の原因と言われてて
自分もそれに同意です。
ほとんどの病気の原因は糖質過剰摂取でしょうね。
何故野生動物に認知症がないのか少し考えれば分かること。
ケトン回路優先にして自身の健康を維持したいものです。
2024.10.6 糖質過剰講演会東京
https://koujiebe.blog.fc2.com/blog-entry-6663.html
ギムレットさん、コメントありがとうございます。
私も参加したかったのですが。
非常に有意義な講演でしたでしょうね。
ある意味人間は一番愚かな動物かもしれません。
脳細胞がケトン体を好んで吸収するだけでなく、全身の細胞のミトコンドリアがケトン体を好んでいると考えます。
私は、5年前に腎臓病ステージ3bと前期糖尿病が見つかり、それ以来、ケトン食に切り替えた結果、ステージ3aの状態で横ばいを続けています。
日本の医学界で腎臓病を横ばい状態に維持できる医者はいないと思います。
彼らは、順調に悪化させて透析患者に仕立てています。
すべての生活習慣病は細胞の老化が原因でしょう。
ケトン食に切り替えれば、すべての細胞のカロリー補給が強化され、元気に老後が過ごせるはずです。
kzさん、コメントありがとうございます。
ケトン食に切り替えた結果、ステージ3aの状態で横ばい、とのこと、さらに改善があると良いですね。
仰るように、今の医療、ガイドラインでは腎臓病を横ばい状態に維持できないでしょう。
多くの医師は悪化しても仕方がないとしか思っていないでしょうね。
ケトン体が腎臓の劣化を防げる理由を調べました。
『代謝がわかれば身体がわかる』 大平万里著
ケトン体はブドウ糖に比べてATPに代謝される経路が単純と書いてありました。
高齢化して、ブドウ糖の代謝経路が劣化したとき、代わりにケトン体経路を働かせれば、
ATPの供給が増加して老化傾向を抑えられるはずです。
「腎臓はPET検査をすると大量の血液が集まっていることがわかります。
エネルギー消費の高い臓器です。ブドウ糖では間に合わないATPをケトン体が供給し、糸球体の死を防いだ」と理解しました。
糖質制限で糖尿病の悪化を防げるように、腎臓病の悪化も防げました(n=1)。
アルツハイマー病もケトン体によるATPの補給で神経細胞の死滅を防げるから、進行を抑制できているのでしょう。(アメリカ女性開業医の著書による)
江部先生が75際になっても全身状態が若い理由は、糖質制限により全身にケトン体によるATPが行き渡っているからでしょう。
私は85歳、電子系開発技術者でした。
文献を調べて論理を組み立てる作業は慣れています。
清水先生の本ブログが道案内になって、医学文献探索が効果的にできるようになりました。有難うございました。