人工甘味料が体重に与える影響のエビデンス

製薬会社がスポンサーの研究の結果が歪められているように(「ある薬が他の薬よりも効果的であるように見える理由」参照)、食品業界の関係する研究も同様のことが起きています。

今回の研究では人工甘味料業界がスポンサーとなるかどうかで、体重に与える影響の研究の結果にどのように影響するかを分析しています。

1978年から2014年の間に発表された31件のレビューが対象になりました。4件のレビューは人工甘味料業界 から資金提供を受けていました。4件のレビューは砂糖または水業界から資金提供を受けており、人工甘味料業界とは競合業界になります。11件のレビューは業界外の資金提供を明らかにし、13 件のレビューは資金提供元を明らかにしませんでした。資金提供元を明らかにした18件のレビューのうち、10件はスポンサーが論文作成の何らかの段階で関与したと述べていました。

人工甘味料業界がスポンサーのレビュー(3/4)は、それ以外の業界がスポンサーのレビュー(資金提供が明らかにされていないレビューを含む)(1/23)よりも好ましい結果になる可能性が17.25倍高くなりました。資金提供が明らかにされていないレビューを除外して分析しても、人工甘味料業界がスポンサーのレビュー(3/4)は、政府および民間の非営利団体のレビュー(1/10)よりも好ましい結果になる可能性が依然として7.5倍高くなりました。

また、人工甘味料業界がスポンサーとなったレビューと競合業界がスポンサーとなったレビューの結果を比較すると、人工甘味料業界がスポンサーとなったレビュー(3/4)は、競合業界がスポンサーとなったレビュー (0/4)と比較して、好ましい結果を示す割合が高かったです。

人工甘味料業界がスポンサーとなったレビュー(4/4)は、それ以外の業界がスポンサーとなったレビュー(資金提供が明らかにされていないレビューを含む)(15/23)よりも、肯定的な結論になる可能性が1.52倍高くなりました。

レビューの55%(31件中17件)では、著者の半数以上が食品または飲料業界と利益相反関係にありました。
利益相反のない著者が実施した9件のレビューではい​​ずれも好ましい結果は報告されなかったが、利益相反のある著者による4件のレビューではどれも好ましい結果が報告されました。
業界と利益相反のある著者が実施したレビュー(11/22)では、利益相反のない著者が実施したレビュー(1/8)よりも不明確な結果を報告する可能性が(有意差はありませんが)4.5倍高くなりました。
業界と利益相反のある著者が実施したレビュー(18/22)では、利益相反のない著者が実施したレビュー(1/9)よりも、好ましい結論が出る可能性が7.36倍高く、利益相反のある著者が実施したレビューで好ましくない結論を報告したのは、すべて競合業界から資金提供を受けたもの(4/4)でした。
結果と結論は大体一致するものですが、好ましい結論と一致しない(好ましくない)結果を報告したすべてのレビュー(5/5)は、利益相反のある著者によって実施されました。好ましい結論と一致した(好ましい)結果を報告したすべてのレビューは、金銭的な利益相反のある著者によって実施され(4/4)、大部分は人工甘味料業界から資金提供を受けていました(3/4)。好ましくない結論と一致した(好ましくない)結果を報告した10件のレビューのうち、8件は利益相反のない著者によって実施され、2件は利益相反のある著者によって実施されましたが、それは人工甘味料の競合業界から資金提供を受けました。利益相反のある著者によるレビューは、利益相反のない著者によるレビューよりも、結果と結論が一致する可能性が0.55倍低くなりました。
お金のためなら矛盾することさえ、平気なのかもしれません。
論文が掲載された雑誌の違いもあからさまです。業界や混合資金の雑誌に掲載されたほぼすべてのレビュー(11/12)で、好ましい結論が報告されました。非業界資金提供の雑誌に掲載されたレビューよりも、好ましい結論が2.18倍多く見られました。

人工甘味料が体重に影響するかどうか、それは実際には不明確です。今回の研究のように、エビデンスはあまりにもお金の影響を受けやすいからです。

砂糖入りドリンクが体重に影響を与えるかどうかの研究も同様です。(この論文参照)砂糖入りドリンクが体重増加および肥満と関連するかのシステマティックレビュー17件を分析すると、6件で食品業界との金銭的な利益相反が開示されていて、利益相反が報告されていないレビューでは、結論の83.3%が、砂糖入りドリンク摂取は体重増加の潜在的なリスク要因である可能性があるというものでした。対照的に、食品業界との金銭的な利益相反を明らかにしているレビューでは、83.3%が砂糖入りドリンク摂取と体重増加または肥満との正の関連性を裏付ける科学的証拠が不十分であるというものでした。真逆です。利益相反のあるレビューでは、利益相反のないレビューよりも、正の関連性がないという結論を示す可能性が5倍高かったのです。

利益相反が示されている研究は、話半分どころか、話10分の1くらい受け止めで十分でしょう。利益相反が示されていなくても、裏では利益相反がある可能性は十分に考えられるので、注意が必要です。

世の中、金の力で事実が曲げられてしまいます。だからこそ、専門家やマスコミなどの情報を鵜呑みにせず、自分自身で考え、判断しなければなりません。エビデンスが正しいということはウソです。

「Relationship between Research Outcomes and Risk of Bias, Study Sponsorship, and Author Financial Conflicts of Interest in Reviews of the Effects of Artificially Sweetened Beverages on Weight Outcomes: A Systematic Review of Reviews」

「人工甘味料入り飲料の体重への影響に関するレビューにおける研究結果とバイアスのリスク、研究スポンサーシップ、著者の金銭的利益相反の関係:レビューのシステマティックレビュー」(原文はここ

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