以前の記事「運動誘発性アルブミン尿と糖質過剰摂取 その1」で書いたように、運動誘発性アルブミン尿上昇は腎機能障害および血管の内皮機能障害の早期かつ高感度なバイオマーカーである可能性が高いでしょう。つまり、運動誘発性アルブミン尿は、激しい⾝体活動の後に起こる⼀過性の良性の現象ではないと思われます。
今回はその1の続きです。今回の研究では、ベースラインの微量アルブミン尿がなく、明らかな心血管疾患のない1,900人(平均年齢44歳、BMI26)が対象です。運動負荷試験を行い、その前後で尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)の変化を分析しました。運動誘発性アルブミン尿は3mg/gを超える変化と定義しました。394人(20.7%)が運動誘発性アルブミン尿を示しました。運動誘発性アルブミン尿グループは、アルブミン尿増加が3.0 mg/g未満の人と比較して、BMI、メタボリックシンドローム有病率、収縮期血圧、中性脂肪、METS(代謝当量)、および血糖値が有意に上昇していました。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図は運動誘発性の平均の尿中のアルブミン濃度とメタボリックシンドローム因子の数の関係を示しています。メタボ因子が3個ではアルブミン濃度が増加傾向を示し、4個以上だと有意にアルブミン濃度が増加します。
オッズ比 | |
---|---|
糸球体濾過率 < 60 ml/分 | 3.3 |
メタボリックシンドローム | 2.2 |
代謝当量(METs) | 1.2 |
高感度CRP | 1.04 |
収縮期血圧 | 1.025 |
年齢 | 0.982 |
基礎心拍数 | 0.985 |
上の表は運動誘発性アルブミン尿の予測因子です。糸球体濾過率が低いと運動誘発性アルブミン尿の可能性は3.3倍、メタボリックシンドロームだと2.2倍でした。
上の図はメタボリックシンドロームの人と非メタボリックシンドロームの人における運動誘発性アルブミン値です。明らかにメタボの方がアルブミンがいっぱい尿に出ています。
やはり糖質過剰症候群のメタボリックシンドロームだと、運動誘発性アルブミン尿が大きく増加するようです。
もう一つ、今度は糖質過剰症候群の代表、高血圧との関連を見てみましょう。
対象は健康スクリーニングプログラムに参加した3,931人(平均年齢47.7歳、BMI26)です。全体で31.2%( 1228人)が高血圧と診断されていました。そのうち60.3%(741人)が慢性的な降圧治療を受けており、39.6%は血圧測定値に基づいて高血圧と定義されました。
高血圧の人は糸球体濾過率が低く、尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)として測定された安静時アルブミン排泄が高かったのですが、高血圧と非高血圧の両グループででeGFR >60 mL/分/1.73 m2およびACR <30 mg/gの割合、定期的なスポーツ活動への参加率は同程度でした。(図は原文より)
上の図は運動前後の尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)です。左が正常血圧、右が高血圧です。ACRは、高血圧のほうが正常血圧に比べて運動前、運動後ともに高く、正常血圧安静時で7.8、高血圧安静時で14.9、正常血圧運動後で19.5 ± 51.0、高血圧運動後で41.2 mg/gでした。
安静時には、正常血圧の人の4.3%が微量アルブミン尿に到達したのに対し、高血圧では7.7%でした。 運動後では、正常血圧の15.6%が微量アルブミン尿に到達したのに対し、高血圧では26.9%でした。
活動的なライフスタイルの効果を調査するために、各グループを非活動的な人(定期的なスポーツ活動なし)、あまり活動的ではない人(スポーツ活動< 2.5 時間/週)、および活動的なライフスタイル(≥ 2.5 時間/週)に分けました。
上の図は、活動レベル別に見た正常血圧(グレーのバー)と高血圧(黒いバー)の安静時(A)および運動後(B)ACRを示しています。安静時および運動後ACRの両方において、高血圧と正常血圧の間には有意差がありました。安静時ACRは、活動レベルに関係なく正常血圧の場合に違いがありませんでした。しかし、高血圧では安静時ACRは非活動的な人で有意に高くなりました。
運動後ACRも、正常血圧では、すべての活動レベルで違いはありません。しかし、高血圧のうち、活動的なライフスタイルの人は、あまり活動的ではない人および非活動的な人と比較して、運動後ACRが低くなりました。ただ活動的な人でも高血圧だと、運動後ACRは平均で35.3 mg/gと30を超えてしまっています。
上の図は、男性(右)と女性(左)、正常血圧(上)と高血圧(下)の運動後の ACR の変化を示しています。男女ともに高血圧のACR変化は活動的なライフスタイルでは、それ以外との活動性のグループと比較して低下していました。正常血圧では、ACR変化と関連していませんでした。
正常血圧では運動後のACR変化はBMIの上昇と糖尿病に関連していました。高血圧では、BMIと糖尿病に加えて加齢もACR変化の上昇に関連しており、活動的なライフスタイルとフィットネスはACR変化に有益でした。
つまり、高血圧は運動誘発性アルブミン尿をもたらすリスクが高いのですが、活動的になれば、少しは運動後のアルブミン尿の増加を減らすことができそうです。運動は健康のためです。
やはり、運動誘発性アルブミン尿は、内皮機能障害および心血管イベントの早期の高感度のマーカーである可能性が高いでしょう。糖尿病があると、トレッドミルで1kmのウォーキング程度の運動でさえ、運動後の尿中アルブミン/クレアチニン比が増加します。(ここ参照)
そして、糖尿病やメタボ、高血圧との関連を考えれば、運動誘発性アルブミン尿は糖質過剰摂取により非常に起こりやすくなり、その原因も糖質過剰摂取でしょう。
過度ではない運動によるアルブミン尿の増加がある人は、糖代謝異常、代謝機能障害なのです。
「Exercise-induced albuminuria is related to metabolic syndrome」
「運動誘発性アルブミン尿はメタボリックシンドロームに関連している」(原文はここ)
「Hypertension is associated with increased post-exercise albuminuria, which may be attenuated by an active lifestyle」
「高血圧は運動後のアルブミン尿の増加と関連しており、活動的なライフスタイルによって軽減される可能性がある」(原文はここ)
一般的な健康診断や、人間ドックの
精密検査でも、検査数値は検査数値
でしかなく、個々人のBMI、増してや
食事習慣等との相関関係までは、
ほぼ評価されていないのでは
ないでしょうか?
そこが(食事を始め生活習慣や
肥満度等の関連)大事だと思います。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
今の医療では、数値が良くなれば改善です。
根本原因は見ていません。