肝機能検査のALT(GPT)が少し上がったときの糖尿病リスク

肝機能検査の項目でALT(GPT)があります。これは一般的に逸脱酵素と言われていて、ALTは肝臓に最も多く分布しており、AST(GOT)と同様に肝臓に障害があると、血液中に漏れ出してきます。

今回の研究では、ALTの値によって糖尿病発症リスクがどうなるかを分析しています。対象は西スコットランド冠動脈予防研究(WOSCOPS)という研究に参加している5,974人の男性です。WOSCOPSは心筋梗塞の既往歴のない中等度高コレステロール血症の男性6,595人(LDL コレステロール174–232mg/dL、中性脂肪 <531 mg/dL)が無作為にプラバスタチン40mg を毎日投与される群とプラセボ群に分けられた研究です。平均年齢は約55歳です。

4.9年間の追跡調査で、139人の男性が新たに糖尿病を発症しました。糖尿病を発症した人の平均ALT値は18%高くなっていました。ALT値の上昇は、BMI、中性脂肪、空腹時血糖値、拡張期血圧と最も強く関連していましたが、ASTはこれらの変数とそれほど強く関連していませんでした。ALT値とAST値の上昇はどちらも過度のアルコール摂取と弱い関連がありました。(図は原文より)

ALT値は、メタボリックシンドロームの因子の異常数が増加するにつれて次第に増加し、異常のない人の20.9 U/Lから、4つ以上ある人の28.1U/Lまでの範囲でしたが、ASTには有意な変化がありませんでした。

ALTは糖尿病リスクと関連していて、ALTが5U/Lの増加すると1.25倍になりました。上の図は、ALTの値によって4つのグループに分けたときの糖尿病発症の割合です。最もALTの高いグループ(29U/L以上)は、最も低いグループ(17U/L未満)と比較して糖尿病リスクが3.38倍と有意に高くなりました。

多変量解析では、他の測定ベースラインパラメータ(BMI、中性脂肪、HDLコレステロール、血圧、血糖値、アルコール摂取量など)を調整した後でも、ALTが最も高いグループは糖尿病リスクが2.04倍高くなっていました。

個人差はあると思いますが、現在のALTの基準値の上限値は45と高すぎます。様々な肝機能に影響する因子を除いて考えると、もっと低くすべきだと考えます。私はALT20以下をお勧めします。(「肝機能検査のALT(GPT)がちょっと上がっていてもご注意を」「ALT(GPT)の上限値は現在の基準値よりももっと低くすべき」参照)

ALT29U/L以上で、糖尿病リスクが3倍以上です。もちろん、脂肪肝がすでに少し存在するかもしれませんが、肝細胞が壊れて、ALTが逸脱して漏れてきたのであれば、ASTももう少し増加してきそうなものです。今回の研究では、メタボ因子の数の増加とASTは全く関連していません。ものすごい脂肪肝があっても、ASTは正常値、ALTがちょっと上昇なんて人も珍しくありません。

じゃあ、ALTは本当に肝臓から漏れているのでしょうか?

それについては次回以降で。

「Elevated Alanine Aminotransferase Predicts New-Onset Type 2 Diabetes Independently of Classical Risk Factors, Metabolic Syndrome, and C-Reactive Protein in the West of Scotland Coronary Prevention Study」

「スコットランド西部冠動脈予防研究において、ALTの上昇は、古典的なリスク要因、メタボリックシンドローム、CRPとは独立して、新規発症2型糖尿病を予測する」(原文はここ

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