セマグルチド(商品名オゼンピック、リベルサス、ウゴービ)やリラグルチド(商品名ビクトーザ)というGLP-1受容体作動薬は体重減少効果があります。では1年間でどれほどの減量が期待できるでしょうか?
今秋の研究では、肥満(BMI30以上)患者3389人(平均年齢 50.4歳)が対象です。このうち、1,341人の患者が2型糖尿病に対してセマグルチドを、1,444人が2型糖尿病に対してリラグルチドを、227人が肥満に対してリラグルチドを、377人が肥満に対してセマグルチドを投与されました。全体では10人中4人(1381人 [40.7%])が1年時点で薬物治療を継続しており、そのうち786人(45.8%)がセマグルチドを投与され、595人(35.6%)がリラグルチドを投与されていました。1年未満の使用期間では、90~275日が37%、90日未満が22.2%でした。(図は原文より)
上の図は追跡期間中の薬剤使用開始からの薬剤別平均体重減少率です。全体的に見れば、非常に結果はショボいです。リラグルチドでは−2.2%、セマグルチドでは−5.1%でした。最初の3~4か月の低下率は非常に大きいのですが、その後はかなり低下スピードは落ち、横ばいに近くなっています。
上の図は、参加者全体における薬剤および適応症別の1年後のカテゴリー別体重減少率の分布です。横軸が体重減少率でそれぞれのグラフのバーは左から肥満に対してのリラグルチド、2型糖尿病に対してのリラグルチド、肥満に対してのセマグルチド、2型糖尿病に対してのセマグルチドです。
10% 以上の体重減少を達成したのは、肥満のためにセマグルチドを投与された患者のうち141人 (37.4%)、2型糖尿病にセマグルチドを投与された患者では223人 (16.6%)、肥満のためにリラグルチドを投与された患者では33人 (14.5%)、2型糖尿病にリラグルチドを投与された患者では134人 (9.3%) でした。薬剤間と適応間において違いがありました。
1年目に薬物治療を継続していた患者だけで診てみましょう。
上の図のように、1年間薬物治療を継続していた患者では、少なくとも10%の体重減少を達成した患者の割合は、肥満症に対するセマグルチドでは141人中86人 (61.0%)、2型糖尿病に対するセマグルチドでは645人中149人 (23.1%)、肥満症に対するリラグルチドでは42人中12人 (28.6%)、2型糖尿病に対するリラグルチドでは553人中68人 (12.3%) でした。肥満症に対するセマグルチドが他よりも割合が非常に高くなっていました。
上の図は、GLP-1製剤、適応症、投与量、および1年後の継続使用と1年後の10% 以上の体重減少との関連を示しています。
1年後の10% 以上の体重減少の可能性は、セマグルチドはリラグルチドと比較して2.19倍、治療適応症としての肥満は2型糖尿病と比較して2.46倍、1年間の継続的治療は90日未満の治療と比較して3.36倍、90~275日の治療と比較して1.50倍、投薬量が多い場合は少ない場合と比較して1.58倍、女性は男性と比較して1.57倍でした。ベースラインのBMIが1単位増加すると、1年で10%以上の体重減少を達成する可能性が2%高くなりました。
このGLP-1製剤で、10人中4人しか1年間継続使用していなったのは、自己負担額の高さ、保険適用関連の問題、薬剤供給不足、思ったよりも体重が減少しないなどがあると思われますが、一番はやはり副作用がその理由である可能性が高いのではないでしょうか?
ある報告では、リラグルチド投与患者のうち67.2 %に有害事象が認められ、主な有害事象として、悪心・食欲不振、便秘、下痢、嘔吐などの胃腸症状が占めていました。(ここ参照)悪心・食欲不振だけでもおよそ40%です。薬の効果よりも、副作用の食欲不振で体重が減少しているのでは?とも思ったりします。
また、費用面ではダイエット目的だと、自由診療で恐らく1か月2~3万円程度かかるのではないでしょうか?
いずれにしても、リスクのない薬はありませんし、以前の記事「効果を維持するためにはやめることができないGLP-1受容体作動薬」「効果を維持するためにはやっぱりやめることができないGIP/GLP-1受容体作動薬」で書いたように、止めたらまた体重は戻ります。
さらに「糖尿病においてGLP-1受容体作動薬やSGLT-2阻害薬で起こる筋肉量の減少」で書いたように、1年間でセマグルチドで体重減少が5.7kgあったうちの総脂肪量減少は3.41kgで、内臓脂肪量はほとんど減少しておらず、筋肉量が2.26kg、体重減少の約40%も筋肉減少で起きていたのです。
GLP-1製剤体重は確かに減少させるかもしれませんが、同時に重要な筋肉も大きく減少させて、インスリン感受性を低下させて、薬の投与をやめたときに体重のリバウンドや糖尿病の悪化を起こしやすくさせる設計なのかもしれません。
医療側の目論見はずっと治療し続けてくれることです。患者を本当の意味で健康にはさせず、患者を患者のままでいさせる薬で大儲けでしょう。
肥満も糖尿病も糖質過剰症候群です。薬は必要ありません。糖質制限をすればいいのです。
「One-Year Weight Reduction With Semaglutide or Liraglutide in Clinical Practice」
「臨床現場でのセマグルチドまたはリラグルチドによる 1 年間の減量」(原文はここ)
食欲減退目的でGLP1を使用しているケースはよくある印象があります…
質問なのですが、SGLT2阻害薬に糖質制限食で代替できない作用はあるのでしょうか?主治医に勧められたのですが「出す分糖質摂取減らす!」と言い張り断っています。
IgA腎症患者さん、コメントありがとうございます。
SGLT2阻害薬に糖質制限食で代替できない作用はないと思います。
というよりも、糖質制限食の代替がSGLT2薬ですね。
所詮SGLT2薬による1日のブドウ糖の排泄量は60g~100gです。
糖質過剰摂取では1日300も400gも糖質を摂取します。もっと多い人も多いでしょう。
膀胱がんのリスクを負ってまで、糖質過剰摂取してSGLT2阻害薬を飲みますか?