頻尿、過活動性膀胱の人が増えているようです。日本における下部尿路症状の全体的な有病率は、20歳以上の対象者では77.9%、40歳以上の対象者では82.5%です。ほとんどの下部尿路症状で加齢とともに有意に有病率が増加する傾向が見られます。また、過活動膀胱(OAB)の有病率は、20歳以上の対象者では11.9%、40歳以上の対象者では13.8%だそうです。(ここ参照)
日本泌尿器科学会のホームページには、次のように書かれています。
頻尿の原因
頻尿の原因は様々ですが、過活動膀胱、残尿(排尿後にも膀胱の中に尿が残ること)、多尿(尿量が多いこと)、尿路感染・炎症、腫瘍、心因性に分けることができます。
・過活動膀胱
膀胱に尿が十分に溜まっていないのに、膀胱が自分の意思とは関係なく勝手に収縮するという病気で、急に尿がしたくなって我慢ができず(尿意切迫感)、トイレに何回も行くようになります。過活動膀胱は日本で1000万人以上の男女が罹患する頻度の多い病気です。脳卒中、パーキンソン病などの脳や脊髄の病気のために、膀胱のコントロールが効かなくなる、前立腺肥大症による排尿障害のために膀胱が過敏になる、などの原因で発生しますが、加齢による老化現象として起こったり、原因が不明(明らかな基礎疾患がない)であったりすることも少なくありません。また、尿が間に合わずにもれてしまうこともあります(切迫性尿失禁)。1回の排尿量は少なく、何回もトイレに行くようになります。
過活動性膀胱の原因は疾患によるもの以外では、老化現象とか原因不明とか書かれています。でも様々な研究で、メタボリックシンドロームやインスリン抵抗性との関連を認めています。なぜ、そこに言及しないのか不思議でなりません。そして、学会的にはその治療法は薬物治療がメインでしょう。食事で治ってもらっては困るのでしょうね。また、原因不明と言っておけば対症療法しかない、と思わせるのが狙いかもしれません。
今回の研究では、女性におけるインスリン抵抗性と過活動膀胱の関連性を調べています。泌尿器科を受診した30~76歳の女性で、過活動膀胱患者122人と過活動膀胱のない年齢を合わせた対照62人が対象です。(図は原文より)
上の図は過活動膀胱患者とそうではない患者の検査値の特徴です。過活動性膀胱のある人では、インスリン値が高く、インスリン抵抗性を表すHOAM-IRが高く、血糖値が高く、HDLコレステロール値が低くなっています。完全に糖質過剰症候群の状態ですね。
別の18歳以上の2型糖尿病の女性366人を対象にした研究(ここ参照)でも、インスリン抵抗性と尿失禁の関係が示されました。尿失禁の可能性はHOMA-IR ≤ 1.76と比較して、2.81 ≤ HOMA-IR ≤ 4.27で2.197倍、HOMA-IR ≥ 4.28だと5.699倍にもなっていました。
糖質過剰摂取、インスリン抵抗性により、炎症と酸化ストレスの増加が起こります。当然血管の内皮機能障害や一酸化窒素(NO)の低下も起こるでしょう。そうすると膀胱や尿道などは虚血になり、線維化したり、排尿筋過活動を起こすのかもしれません。NOは膀胱平滑筋細胞の成長を阻害することが動物実験では示されており、慢性のNO欠乏は膀胱壁肥厚に寄与する平滑筋細胞の増殖をもたらす可能性があります。さらに、糖質過剰摂取による高血糖やインスリン抵抗性はインスリン様成長因子 1 (IGF-1) レベルの上昇と関連しています。それにより膀胱の平滑筋がより肥大するのでしょう。
肥大して、線維化により硬化した膀胱の機能は低下し、弾力性を失うでしょう。
以前の記事「頻尿、過活動膀胱は糖質過剰症候群である」「内臓脂肪は過活動性膀胱のリスクを増加させる」「尿失禁には糖質制限」「尿漏れする前に糖質制限」などで書いたように、過活動性膀胱を防ぐには糖質制限が必要です。膀胱機能が低下する前に、糖質制限を始めましょう。
「Association of Insulin Resistance with Overactive Bladder in Female Patients」
「女性患者におけるインスリン抵抗性と過活動膀胱の関連性」(原文はここ)