脂肪肝って多くの人は、ちょっと太っちゃったから、肝臓にも脂肪がついちゃった、くらいにしか思っていないでしょう。脂肪肝を指摘されると、多くの人は恥ずかしそうに苦笑します。
でも、脂肪肝は馬鹿にはできません。
今回の研究では、脂肪肝が2年ごとの健康診断でどのように変化したかということと、肝臓がんのリスクを分析しています。2009~2010年と2011~2012年の2年ごとの健康診断を2回連続で受けた、飲酒が週に1回未満の5,080,410人(平均年齢51.7歳)が対象です。
脂肪肝は、以前非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と言っていましたが、名前が変わって、代謝機能不全関連脂肪性肝疾患(MASLD)になっています。(「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の病名が変わるけど…」「過体重および肥満の代謝機能不全関連脂肪性肝疾患(MASLD)に対する糖質制限の影響」参照)
以下の4つのグループに分けました。
1.両健康診断期間でMASLDなし(持続的な非MASLD;MASLDなしからMASLDなし)
2.初回健康診断でMASLDあり、2回目の健康診断でMASLDなし(解消されたMASLD;MASLDからMASLD なし)
3.初回健康診断でMASLDなし、2回目の健康診断でMASLDあり(新規MASLD;MASLDなしからMASLD)
4.両健康診断期間でMASLDあり(持続的なMASLD;MASLDからMASLD)
2020年まで追跡して、4,801人が肝臓がんを発症しました。
肝臓がんの発症率は下の図のように、MASLDがない持続的な非MASLDと比較して、解消されたMASLDで2.2倍、新規MASLDで2.3倍、持続的なMASLDで4.7倍高くなりました。(図は原文より)
様々な因子で調整すると肝臓がんの発症リスクは、持続性の非MASLDと比較して、持続性MASLDでは2.94倍、、新規MASLDで1.85倍、解消したMASLDで1.33倍でした。
上の図はMASLD状態の変化に応じた肝臓がんの累積発生率です。持続性のMASLDが最も高く、持続性の非MASLDが最も低く、新規と解消MASLDがその真ん中です。
解消MASLDと新規MASLDを有する肥満の人では、持続性の非MASLDと比較して肝臓がんの可能性リスクが有意に増加しませんでした。つまり、体重だけが問題ではないということです。
痩せた人、正常体重の人でも脂肪肝になる人は大勢います。太っていない脂肪肝の方が危険なこともあります。(「太っていない脂肪肝の方が危険!」参照)
脂肪肝は脂質の摂り過ぎでなるのではありません。糖質、特に猛毒の果糖の摂り過ぎでなるのです。(「果糖はその他の糖質よりも肝臓の脂肪を短期間で増加させる」「果物を食べ過ぎると脂肪肝が悪化する」など参照)
脂肪肝は肝臓がんだけでなく、他のがんのリスクも増加させます。原因が糖質過剰摂取だから当然でしょう。(「脂肪肝は肝臓がんへ進行する可能性がある」「脂肪肝と肝臓以外のがん」参照)脂肪肝を予防するために糖質制限をしましょう。
脂肪肝指数を知りたければ、以前の記事「脂肪肝はただの肥満の症状ではない」で計算してみてください。
「Evolutionary changes in metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease and risk of hepatocellular carcinoma: A nationwide cohort study」
「代謝機能障害に関連する脂肪肝疾患と肝細胞癌のリスクの進化的変化:全国コホート研究」(原文はここ)