血糖値が上がりにくいというパラチノースはどうなんだろう? その3

パラチノースシリーズのその3になります。(「その1」「その2」参照)今回は、「スローカロリーラボ」の「スポーツに関する研究」についてです。

パラチノースを飲んだ人は血糖値がゆるやかに維持され、低血糖を防ぐ、と書かれています。また、血中の脂肪酸の濃度が増加する(脂肪が燃焼する際に、血中脂肪酸の濃度が増える。)とも書かれています。その研究を見てみましょう。(ここ参照、図もこの論文より)男性10人 が、水だけ、砂糖またはパラチノース(8.5%で600mL)が入ったドリンクを飲み、59% VO2maxで150分間のサイクリングを行いました。

上の図は、上から血糖値、インスリン値、血中の遊離脂肪酸、それぞれの推移を示しています。○は水、■は砂糖入りドリンク、●はパラチノース入りドリンクです。確かに、砂糖入りドリンクでは15分後に一度血糖値が大きく(と言っても20~25mg/dLくらい)上昇し、それに伴いインスリンが分泌されてしまっているので、60分後にベースラインよりも低下してしまっています。しかし、85mg/dL以上はありそうなので、低血糖と呼べるのかどうかは微妙です。しかし、75分後から後は砂糖もパラチノースも違いがありません。

遊離脂肪酸は確かに全体的にパラチノースの方が多いですね。しかし、水の方がもっと多いです。

パラチノースによりどこまで持久力が上がったかはよくわかりません。ちなみにこの研究はカーギルという食品に関連する企業がスポンサーなので話半分ですね。

次にピークパワーと平均パワーはいずれもパラチノース飲料において有意に高値を示した、という日本の研究を見てみましょう。(ここ参照、図もこの論文より)この論文の著者にも三井製糖の人が含まれていますので、話半分以下ですね。

若い男性アスリート13人(平均年齢21.5歳、BMI20.9)が対象で、彼らは大学または社会人スポーツクラブから募集され、陸上競技選手6人(有酸素能力が高い)、トライアスロン選手5人(有酸素能力と無酸素能力が高い)、バレーボール選手2人(無酸素能力が高い)です。運動の60分前にパラチノース(ISO)または砂糖(SUC)75gを含むドリンク500mlを摂取し、エネルギー補給なしでVO2max60%強で90分間トレッドミルランニングを行います。

上の図は6回のトレッドミル走行運動期間(Ex15、Ex30、Ex45、Ex60、Ex75、およびEx90)中のaが心拍数、bがエネルギー消費量、cは炭水化物と脂肪の酸化率です。最初の研究からすれば、今回もパラチノースで脂肪の燃焼が増加して、脂肪の酸化率が砂糖よりも増加すると思われましたが、一目瞭然で砂糖とパラチノース群で違いは全くありません。2つの研究で結果が違います。都合の良い結果だけをホームページでは取り上げていますね。私を含めてみなさんチェリーが大好きなようです。

上の図は運動前休息および運動中の9つの時間帯における炭水化物(CHO)由来のエネルギー消費の割合および脂肪(fat)由来の割合を示しています。炭水化物由来は、砂糖群とパラチノース群両方で、ドリンク摂取後すぐに増加し、その後の休息および運動期間中徐々に減少しました。摂取後すぐの30分では、砂糖群の方が炭水化物由来のエネルギーが増加しましたが、60分後ではパラチノース群と同じになっています。その後も両群でほとんど違いはありません。

上の図はホームページ上にあった図です。90分の持久力運動の後にウィンゲートテストという30秒間全力で自転車を漕ぐという無酸素運動を行ったときのパフォーマンスついてです。パラチノース群のピークパワー(a)と平均パワー(b)の値は砂糖群よりも有意に大きくなりました。しかし、ピークパワーまでの時間(c)と疲労指数(d)は両群に有意差はありませんでした。持久力運動後でもパラチノースは無酸素運動のパワーが残っているということを言いたいのでしょうね。

では、ホームページでは紹介されていない別の研究を2つ見てみましょう。

まずは、レクリエーションとして持久力トレーニングを行う男性ランナー21人(平均年齢26.2歳)が対象の研究です。(ここ参照、図もこの論文より)パラチノース、マルトデキストリン、またはブドウ糖のいずれか50gを含む400mlのドリンクを摂取した後、最大走行速度 (Vmax ) の70%で70分間の定常負荷試験を実施し、Vmaxの85%で疲労困憊までの時間テスト(TTE)を実施しました。

上の図は、VO2(A)とRER(B)と脂肪酸化量(C)と炭水化物酸化量(D)です。パラチノースは▲と実線、マルトデキストリンは●と点線、ブドウ糖は■と破線です。残念ながらどの糖質を摂取しても違いはありませんでした。

 

上の図はドリンク摂取後の血糖値の推移(A)と血糖値の最大の変動率(B)です。ベースラインの血糖値は、パラチノースでマルトデキストリンと比較して – 16.7%低く、ブドウ糖と比較して – 11.5%低くなりました。運動を始めると、どの糖質も違いがありませんでした。血糖値の最大の変動率はパラチノースで他の糖質よりも有意に小さくなりました。

Aに示すように、ベースラインのドリンク摂取後インスリンは、パラチノース摂取後、マルトデキストリンと比較して−40.3%、ブドウ糖と比較して−32.6%低下しました。70分の運動後やTTEでは違いはありませんでした。

Bにあるように、ベースラインのドリンク後GIP濃度は、パラチノース摂取後にマルトデキストリンと比較して−69.1%、ブドウ糖と比較して−55.8%減少しました。マルトデキストリンとブドウ糖の両方の条件において、GIP濃度は定常負荷テストおよびTTEを通して減少しましたが、パラチノースでは変化しませんでした。

上の図は胃腸の不快感の主観的感覚です。どの糖質も違いはありませんでした。

結局、この研究では、違いはドリンク摂取後の血糖値とインスリン、GIP濃度くらいなもので、脂肪の酸化率や血糖値変動に違いはありませんでした。

もう一つ研究を見てみましょう。(ここ参照、図もこの論文より)男性サイクリスト9人(平均年齢38.0歳)が対象です。ノンカロリーのプラセボドリンク(PL)、7%のパラチノース(ISO)または果糖とマルトデキストリンを0.8:1で配合されたドリンク(F:M)を400ml飲んで、ピーク有酸素出⼒(Wmax)の60%で2時間後運動を行います。運動始めた後15分ごとにそれぞれのドリンク200mlを摂取しました。1時間当たり63gの糖質です。

その後は16kmの自転車のタイムトライアルテスト(TT)を行いました。定常運動の2時間目でパラチノース群ではプラセボよりも有意に心拍数が上昇しました。定常運動の酸化された炭水化物の総量は、パラチノースを摂取した場合の方が 果糖/マルトデキストリンドリンクを摂取した場合よりも大幅に少なくなりました。さらに、パラチノースを摂取した場合、果糖/マルトデキストリンドリンクと比較して、脂肪酸化率、酸化される脂肪酸の総量が多くなりました。プラセボとパラチノースの間に違いはありませんでした。

上の図は血糖値(A)、乳酸(B)、インスリン(C)、血中の遊離脂肪酸(D)の推移です。予想通り、プラセボは血糖値やインスリン値の変動はほとんどありませんね。しかし、血糖値はパラチノースと果糖/マルトデキストリンでどちらも60分後で上昇し、120分間まで両群とも違いがありません。そして、タイムトライアル後30分後ではパラチノースだけもっと上昇しました。これまでの研究とはちょっと違いますね。乳酸値はパラチノースだけ90分と120分で高いです。遊離脂肪酸はプラセボとパラチノースで大きく増加しています。

上の図は2時間の定常運動中の自覚的運動強度の比較です。30分ではプラセボと比較して、パラチノースも果糖/マルトデキストリンも低いと感じていましたが、その後パラチノースだけ右肩上がりになり、120分後には果糖/マルトデキストリンよりも高くなりました。数値が高くなる方がより運動強度が強いと感じるので、同じ運動でも、パラチノースは段々と辛さが増している可能性があります。

上の図は副作用です。2時間の定常運動中および16kmタイムトライアル後の30分間の回復後の胃腸の不快感です。喉の渇き、膨満感、胃けいれん、吐き気の順です。喉の渇きは違いが無かったのですが、腹部膨満感はパラチノースが右肩上がりでTTの後は強い膨満感になっています。胃けいれんもパラチノースだけ右肩上がり。吐き気はTTの後でパラチノースのみ少し感じています。

16kmのTTの平均時間は、プラセボ28分39秒、パラチノース29分39秒、果糖/マルトデキストリン28分27秒で、果糖/マルトデキストリンと比較するとパラチノースは1.5分くらい(5%)遅くなりました。プラセボよりも1分(4%)遅いです。あらら。

つまり、この研究の結果はパラチノースを摂取するメリットはほとんどなく、逆にパフォーマンスを低下させたり、胃腸の不快感が増加したりするというものです。一般的に推奨される炭水化物補充量を満たすためにイソマルトロースを継続的に高頻度で摂取すると、長時間または高強度の運動中に重度の胃腸症状を引き起こし、運動パフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。

パラチノースの運動への効果も微妙ですね。パラチノースはやっぱり糖質なのでしょう。

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