85歳以上の日本人、高血圧は死亡リスクに影響する?しない?

高齢者はいっぱい不必要と思われる薬を飲んでいます。スタチンやPPIだけでなく、高血圧の薬も何種類も飲んでいることもあります。複数の高血圧の薬により、低すぎるのではないかと思う人もたくさんいます。

今回の研究では、2006年4月から2008年3月の間に岡山市で健康診断を受けた65歳以上(平均年齢75.5歳)の高齢者54,85​​1人を対象としました。血圧により6つのグループに分けています。そして最大129か月(111か月)追跡しました。

最低血圧(C1)は収縮期血圧(sBP)120未満、C2は120≤ sBP <130、C3は130 ≤ sBP < 140、C4は140 ≤ sBP < 160、C5は160 ≤ sBP < 180、最高血圧C6は180以上です。参加者全体では、全原因死亡リスクはC3、つまり130~140mmHgの血圧の人と比較すると、C5で1.11倍、C6で1.23倍でした。C1でも1.15倍でした。収縮期血圧が160以上の人と120未満の人では同程度のリスク増加があるということになります。

心血管疾患死亡リスクはC4で1.11倍、C5で1.19倍、C6で1.36倍でした。(図は原文より)

上の図は年齢ごとの血圧と全原因死亡率の関連を示しています。横軸が収縮期血圧、縦軸は死亡リスクです。どの年代もリスクの最低点は約140mmHg です。比較的若い65~74歳では、C3と比較して、C4で1.14倍、C5で1.26倍、C6で1.75倍でした。75~84歳では、C3と比較して、C4で1.06倍、C5で1.16倍、C6では1.19倍でしたが、C1でも1.15倍でした。

85歳以上では、C3と比較すると、C4とC5では全く有意差がなく、C6でも1.22倍でしたが有意差はありませんでした。逆にC1では1.28倍と有意に死亡リスクが増加しました。つまり、85歳以上では収縮期血圧が180以上あるよりも120未満の方が危険なのです。

ちなみに85歳以上では心血管疾患死亡はどの血圧でも有意差がありませんでした。つまり、血圧が高いからと言って心血管疾患で死亡しやすくなるわけではないのです。

高齢者の多くは動脈硬化が進行しています。よく高血圧があると、それにより腎臓などの臓器障害が起きるとも考えられていますが、これは逆で腎臓などの障害が起きるような代謝異常があると、高血圧になるのです。

動脈硬化が進んだ体では、ある程度血圧が高くないと臓器血流が保てません。高齢者は血圧の調節もうまくできなくなってくるので、高血圧の薬などで血圧を下げ過ぎると、起立性低血圧で意識が低下したり、ふらついたりして、転倒、骨折などのリスクも上がるでしょう。さらに、血圧が低い方が認知症リスクが高いことは様々な研究で指摘されています。

例えばある研究では、収縮期血圧が140~179 mmHgの人では正常血圧の人よりもアルツハイマー病のリスクが0.55倍と低下と関連していました。さらに拡張期血圧が70以下だと認知症リスクが1.64倍でした。

80歳を超えたら自然に任せても良いと思いますが…

「Impact of high blood pressure on the risk of mortality among Japanese people aged 65 years and older」

「高血圧が65歳以上の日本人の死亡リスクに与える影響」(原文はここ

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