一般的には塩分の過剰摂取は血圧上昇、いわゆる食塩感受性高血圧と関連していると考えられています。しかし、塩分に対する反応は個人差があります。多くの人は変化なく、みんながみんな血圧が上昇するわけではありません。
逆に塩分過剰摂取で血圧が低下し、強い塩分制限で血圧が上昇する人もいます。Inverse salt sensitivity(逆食塩感受性)と呼ばれています。(図は原文より)
上の図はナトリウム摂取量による血圧の上昇のタイプの示す模式図です。ナトリウムの量は食塩に換算すると下の表のようです。
ナトリウム(mmol) | ナトリウム(mg) | 食塩(g) |
---|---|---|
10 | 230 | 0.585 |
140 | 3220 | 8.2 |
300 | 6897 | 17.55 |
食塩として17.55gの塩分過剰摂取で血圧が上昇する人もいれば、変化のない人、低下する人などがいるのです。実際の研究のデータで見てみましょう。
上の図は平均血圧で低ナトリウム摂取と高ナトリウム摂取での差が7mmHg以上上昇または低下についてのものです。7mmHg以上上昇が食塩感受性、7mmHg以上低下が逆食塩感受性です。上の3つの研究の図ではそれぞれの研究によってその割合はまちまちですが、食塩感受性は8.3%~50%、逆食塩感受性は4%~16%です。一番下の研究を除けば、70%以上は食塩に非感受性だということになります。
別の研究ではBMIとの関連を調べています。
対象は非肥満の一応健康と考えられている正常血圧の84人で平均年齢は37歳、ベースラインの平均血圧は89mmHgです。7日間低ナトリウム食(20mmolナトリウム/日、食塩として1.17g)および高ナトリウム食 (300mmolナトリウム/日、食塩として17.55g)を摂取しました。上の研究とは定義がちょっと違い、平均血圧5mmHg以上増加は食塩感受性、5mmHg以上低下は逆食塩感受性としています。もう一つ食塩感受性指数(平均血圧の変化/尿中ナトリウム排泄量の変化)でも分類しています。(食塩感受性指数がどの範囲で感受性の有無があるのかは不明)
その結果、平均血圧の増減で見ると10.7%が逆食塩感受性、76.2%が食塩非感受性、13.1%が食塩感受性でした。興味深いことにBMIが25以上に人の中で逆食塩感受性は0%で、正常BMIの15.8%が逆食塩感受性でした。BMIの上昇は逆食塩感受性になりにくいと考えられます。食塩感受性の人では非感受性や逆食塩感受性よりもBMIが高くなっていました。
食塩感受性指数を使用した分類では21.4%が逆食塩感受性、48.8%が食塩非感受性、29.8%が食塩感受性と分類されました。
つまり、意外(?)と逆食塩感受性の人は多い可能性があります。そしてそれはBMIと関連している可能性があります。ということは食塩感受性は糖質過剰摂取と関係がありそうですね。それについては次回以降で。
「Inverse Salt Sensitivity of Blood Pressure: Mechanisms and Potential Relevance for Prevention of Cardiovascular Disease」
「血圧の逆食塩感受性:メカニズムと心血管疾患の予防との潜在的な関連性」(原文はここ)
「Inverse salt sensitivity in normotensive adults: role of demographic factors」
「正常血圧成人における逆食塩感受性:人口統計的要因の役割」(原文はここ)
また「パラドックス」と放置
されそうです。
清水先生、こんばんは。
私は、食塩摂取が多いと、血液中の Naなどの濃度が高くなり細胞内などから水を引っ張ってくるため血液量がわずかながらでも多くなるためと思っていました。
こんな単純なものではないのですね。
じょんさん、コメントありがとうございます。
ナトリウムは非常に狭い範囲にコントロールされています。大量の塩分摂取で急性的には変動するかもしれませんが、
すぐに余分なナトリウムは処理されるでしょうから、高血圧の塩分犯人説はウソだと思います。