妊娠前の肥満は危険 その1

太っていることはその人の課題であり、他の人は何もできるわけではありません。体重減少を薬に求めてもリスクを伴います。ジムのトレーナーに求めても、結果は思ったほどでもなく、お金がかかるだけでしょう。運動では痩せませんから。まあそれでもその人自身の課題なので、自分がどうするかは自分だけの問題です。

しかし、若い女性が太ったまま妊娠してしまうと、非常に危険を伴う場合があります。そして、それはその女性の課題だけでなく、生まれてくる子供の課題にもなってしまいます。そしてその他の家族も巻き込みます。妊娠してから痩せるわけにはなかなかいきません。そして、妊娠がわかった時点では、すでにお腹の胎児に何らかの影響を与えている可能性があります。

だから、日ごろから食事に気を付けて、太らないようにしなければなりません。太らないようにすることを考えると、多くの女性は変なダイエットにハマることがあります。甘いものを食べるために、他の必要な栄養を削ったりします。瘦せている人は痩せている人で、栄養不足になってしまいます。

人間にとって必要なタンパク質や脂質は十分に摂っても、不必要な糖質を摂らなければ太りません。

今回の研究は、日本人において、妊娠前のBMIが妊娠中や出産後にどのような影響を与えるかを分析しています。妊娠24週から42週の間に出産した633人の女性を対象としています。低体重はBMI<18.5 、正常が18.5~25.0、肥満は>25と定義しました。(図は原文より)

上の図は、妊娠BMIカテゴリー別の周産期転帰リスクです。肥満群では、正常群と比較して、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の可能性が8.13倍、妊娠糖尿病の可能性が7.94倍と有意に増加しました。帝王切開の可能性も2.42倍でした。低体重群では、低出生体重児の可能性が2.97倍、乳児入院の可能性が1.94倍でした。

妊娠中の体重増加に応じた周産期転帰のリスクについては、今回の研究では、妊娠中の不十分な体重増加も過剰な体重増加も、母親または乳児の周産期転帰の有意なリスク因子ではありませんでした。

日本産科婦人科学ホームページよると、妊娠高血圧症候群および妊娠糖尿病は次のようなリスクがあります。

妊娠高血圧症候群が重症になると、お母さんは、血圧上昇とタンパク尿に加えて、けいれん発作(子癇)、脳出血、肝臓や腎臓の機能障害、肝機能障害・溶血・血小板減少が同時に起こるHELLP症候群、肺に水が溜まり呼吸困難になる(肺水腫)といった、重い合併症を引き起こすことがあります。
一方、赤ちゃんも、発育が遅れたり(胎児発育不全)、状態が悪化して苦しくなったり(胎児機能不全)、胎盤が子宮からはがれたり(常位胎盤早期剥離)、ときには亡くなってしまう(胎児死亡)ことさえあります。
このように妊娠高血圧症候群は、お母さんと赤ちゃんの生命に関わる、とても危険な病気です。

お母さんの血糖値が高いと、おなかの赤ちゃんの血糖値も高くなり、母児ともにさまざまな合併症を引き起こします。

お母さん
妊娠高血圧症候群、羊水量の異常(過多・過少)、難産、糖尿病性の網膜症・腎症など

赤ちゃん
流産、巨大児、心臓の肥大、低血糖、多血症、電解質の異常、黄疸、胎児死亡など

つまり、肥満により起こる可能性が大きく高まる妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病は、自分自身だけでなく、赤ちゃんにも非常に大きな影響があるのです。

同じアジア人の台湾の研究でも同様の結果が出ています。(ここ参照、図もここより)この研究では、BMI24以上を肥満としています。

上の図のように、BMIが24以上だと標準体重と比較して、妊娠糖尿病の可能性が4.48倍、妊娠高血圧症候群は3.52倍、巨大児2.30倍、早産2.04倍、帝王切開1.83倍でした。

もちろん、BMIが25以上または24以上だと急激に妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高まるのではありません。体重増加と共に徐々に危険性は増すと考えられます。やはり、BMI22程度までに維持すべきだと思います。

患者さん(妊婦さんではありませんが)を診ていると、太っている人ほど、自己申告の体重がサバ読んでいることが多い印象です。10kg過少申告する人もいます。そして、現実を受け止めるのが怖いのか、体重計にすらあまり乗らない人もいます。

毎日体重測定をする必要はありませんが、体重は素直に現実を教えてくれます。定期的な体重測定をして、自分を見つめ直すことも重要だと思います。それは自分のためであり、将来の家族のためです。

そして、運動もしましょう。筋肉は非常に重要です。筋肉を維持してBMI22以下を目指して、食事を考えましょう。決して、甘いもののためにタンパク質や脂質を減らさないように。

さらに、日光を十分に浴びましょう。太陽の恵みは人間にも重要です。

将来母親となる若い女性の妊娠前の肥満の危険性はこれだけではありません。それについては次回以降で。

「Prepregnancy body mass index as an important predictor of perinatal outcomes in Japanese」

「妊娠前BMIは日本人における周産期転帰の重要な予測因子である」(原文はここ

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