GLP-1受容体作動薬は心臓の筋肉を減少させるかもしれない 恐ろしい…

以前の記事「GLP-1受容体作動薬によるサルコペニアと骨粗鬆症」で書いたように、GLP-1受容体作動薬を使用すると確かに体重は減るかもしれませんが、人間にとって非常に重要な筋肉と骨が減少してしまいます。そして、もしかしたらさらに恐ろしいことが起きるリスクがあるかもしれません。

今回の研究では、GLP-1受容体作動薬のセマグルチドを痩せたマウスと肥満のマウスに投与しました。(図は原文より)

肥満マウスにセマグルチド 120 μg/kg/日を 21 日間投与しました。上の図( ii)(iii)に示すように、予想どおり、セマグルチド投与マウスは対照のマウスと比較して、体重が約30%および脂肪量が約65%減少しました。心エコー検査による評価では、収縮機能(駆出率 [EF])(iv)および拡張機能(v)に変化や違いは認められませんでした。しかし、セマグルチドでは、左心室後壁厚や心室中隔厚に変化がなかったにもかかわらず、心エコー図による左心室重量(vi)、心臓全体重量(vii) 、および組織学的評価による心筋細胞面積(viii および ix)の有意な減少を引き起こしました。

さらに、人間の細胞、培養ヒト心筋細胞(AC16 細胞)をセマグルチド(10 nmol/L、24 時間)で処理したところ、心筋細胞面積の減少(xi)が認められました。

セマグルチドを投与された痩せたマウスでは体重に明らかな変化は見られなかったものの、セマグルチド投与は3週間で骨格筋量を8.2%減少させました。肥満マウスへのセマグルチド投与と同様に、セマグルチド投与を受けた痩せマウスでは収縮機能(EF)に変化は見られませんでしたが、左心室重量および心臓全体重量の減少、ならびに心筋細胞面積の減少が見られました。

つまり、セマグルチドによる心臓サイズの縮小は体重減少とは無関係に起こることが示唆されます。

心筋細胞は再生しないと言われています。GLP-1薬で減少した心筋が、薬を中止した後に戻る可能性は低いのではないでしょうか?長期的にはより大きな影響が出る可能性があります。また、ある種の心臓ストレスが安静時には見られなかった有害な影響を及ぼす可能性もあるでしょう。

糖尿病も肥満も心不全リスクを高めます。体重を減らし、血糖値を低下させても、心臓まで筋肉が減少してしまえば、逆に将来の心不全などの心疾患リスクが高くなる可能性もあるでしょう。なぜ多くの人は、糖質制限をして糖尿病や肥満を解消しないのでしょうか?

「Semaglutide Reduces Cardiomyocyte Size and Cardiac Mass in Lean and Obese Mice」

「セマグルチドは痩せたマウスと肥満のマウスの心筋細胞の大きさと心臓重量を減少させる」(原文はここ

One thought on “GLP-1受容体作動薬は心臓の筋肉を減少させるかもしれない 恐ろしい…

  1. 「なぜ多くの人は、糖質制限をして糖尿病や肥満を解消しないのでしょうか?」
    同意見でございます。
    確かに心筋始め、筋肉は内臓にとっても重要ですね。

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