GLP-1受容体作動薬の副作用シリーズの「その12」です。今回は脱毛です。
今回の研究では、GLP-1受容体作動薬のセマグルチドと日本では未承認の別の肥満薬Contrave(ブプロピオン・ナルトレキソン)使用患者の脱毛の発生率を比較しました。(プレプリントなので注意が必要です。)
患者1,600万例から無作為に抽出した、セマグルチド使用者1,926人とブプロピオン・ナルトレキソン使用者1,348人を比較しています。
セマグルチド使用者とブプロピオン・ナルトレキソン使用者の脱毛症発症率は、それぞれ26.5/1,000人年と11.8/1,000人年でした。セマグルチド使用している全患者および男性の脱毛症のリスクは有意ではありませんでしたが、女性だけだと2.08倍でした。
他国の添付文書上に掲載されているセマグルチドの臨床試験結果でも、下の図のようにプラセボと比較して2倍以上の脱毛の有害事象が認められています。(図はここより)
肥満薬としての臨床試験での脱毛の発生率はセマグルチド投与群3.3%もあるのです。しかし、日本の添付文書には脱毛の副作用については書かれていません。人種による差がある可能性もありますが、よくわかりません。
さらに上の添付文書には、体重が20%以上減少した患者は、体重が20%未満減少した患者よりも脱毛症を報告する割合が高く、5.3%対2.5%となっています。
急激な体重減少によって身体に生理的ストレスがかかり、毛の周期が乱れて脱毛につながるためである可能性が指摘されています。またGLP-1薬は食欲抑制作用があるので、栄養が髪の毛まで回らないのかもしれません。
GLP-1受容体作動薬は他の糖尿病薬と比較しても、脱毛の報告が多く、特にセマグルチドが最も多く報告されています。(ここ参照)
現在の段階では、この脱毛が治療をやめれば回復するのか、永続的な脱毛につながるのかは不明です。
あなたは自分の髪の毛を犠牲にしてまで、この薬を使いますか?
「Risk of Hair Loss with Semaglutide for Weight Loss」
「減量のためのセマグルチドによる脱毛のリスク」(原文はここ)
医療もその人なりの優先順位に従って、
選択するのでしょうが、
副作用の情報が恣意的に提供されて
いないとしたら、詐欺的ですね。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
もちろんすべての副作用について話をできるわけではありませんが、
確かに恣意的に隠されている副作用もあるでしょうね。