Lp(a)の値は繰り返し測定で変動するのか?

以前の記事「医療によるLDLコレステロール攻撃の次の標的はLp(a)」で書いたように、LDLコレステロールの次のターゲットは、リポタンパク質(a)、Lp(a)です。Lp(a)は間もなく、多くの医療機関で測定が始まる可能性があります。それは、薬が発売される予定だからです。

Lp(a)の値は遺伝的素因で90%決まっており、環境要因の影響は少ないので、成人後は生涯を通じほぼ一定であると考えられています。そして、できる限り多くの人のLp(a)を測定し、Lp(a)が高いと脅しが入ります。Lp(a)はLDLコレステロールよりももっと悪玉である、と説明し、このままでは近い将来血管が詰まる!、死んでしまう!と。そして、良い薬が発売された。これを飲めばLp(a)は爆下がりしますよ。良かったですね!と高い薬を処方するでしょう。そして、薬の効果を確認するために、その後も何度もLp(a)の測定が行われるでしょう。測定コストを下げるためにも、また測定する企業が儲けるためにも、何度も繰り返し測定が必要です。

今回の研究では、Lp(a)濃度の生物学的変動を経時的に評価しました。つまり、本当にLp(a)はほぼ一定であるのか?というのを調べたのです。715人の高齢者を対象に、3.2年の間隔をあけて、技術的変動を最小限に抑えつつ2回の採血を行いました。(図は原文より)

上の図は、横軸がベースライン時のLp(a)、縦軸が追跡期間でのLp(a)です。ベースラインのLp(a)測定値を30mg/dL未満、30~50mg/dL未満、50~70mg/dL未満、70mg/dL以上のリスクカテゴリーに分類したところ、ベースラインと追跡期間において、715人のうち655人(91.6%)がリスクカテゴリーを維持し、33人(4.6%)がリスクカテゴリーが上昇、27人(3.8%)がリスクカテゴリーが低下しました。ほとんどの人は変動が少なく、Lp(a)はほぼ一定であると言いたいようです。

上の図の赤い線はベースラインのLp(a)、灰色の縦線は各個人のLp(a)絶対値変化を示しています。Lp(a) が 10 mg/dL 以上変化する頻度は、ベースラインのリスクカテゴリーが高くなるにつれて増加し、図のAのように、ベースラインの Lp(a) が 30 mg/dL 未満の人ではわずか 2.1 % に発生しました。しかし、ベースライン レベルが 30 ~ 50 mg/dL 未満、50 ~ 70 mg/dL 未満、70 mg/dL 以上の人ではそれぞれ 21.4 %、32.6 %、38.7 % に増加しました。リスクカテゴリーは勝手に決めたものであり、Lp(a) が 10 mg/dLの人がフォローアップで20mg/dLになっても、カテゴリーは変化しませんが、変動は100%増加です。数10%の変動は珍しくないように見えます。誤差範囲がどの程度の検査なのかはわかりません。でも、やっぱり一定とは言えないでしょう。

上の図は、総コレステロール200 mg/dL、LDLコレステロール130 mg/dL、HDLコレステロール45 mg/dL、収縮期血圧130 mmHg、身長184 cm、体重80 kg、糖尿病なし、喫煙歴なし、心臓発作または脳卒中の家族歴ありの 40 歳男性が 80 歳までに心臓発作または脳卒中を発症するリスクの計算を示しています。赤い線が真のLp(a) 濃度を示していて、その値は 60 mg/dL として、Lp(a) 濃度が グレーの線のように15 mg/dL 過小評価されていると仮定すると、リスクは 3 % 低く過小評価されてしまいます。ちなみに青い線は一般の人のLp(a) 平均値(7mg/dL)のリスクを示しています。Lp(a)測定値が5 mg/dL過小評価されると、CVDリスクが約1%過小評価されることになると考えられます。

この研究が言いたいことは、参加者のうち、Lp(a)値に基づいて心血管リスクカテゴリーが変化したのはわずか8.4%であり、この生物学的変動性が心血管疾患の生涯リスクに与える影響は低いと計算されたのですが、技術的な測定問題によって大きな測定誤差が生じ、リスクの誤分類につながると、影響は大幅に増大する可能性がある、と言いたいようです。

つまり、Lp(a)値の臨床的に意義のある変化は、腎疾患や肝疾患といったLp(a)変化の二次的原因が除外されれば、稀にしか発生しないのだから、大きな変動は技術的な問題であろう、と言いたいのでしょう。しかし、実際には非遺伝的因子により、Lp(a)は変動します。

1回でも測定を行い、そこで高いLp(a)値が出れば、強い脅しができます。遺伝的に決まった運命なので、薬を飲みましょう!なんてことを言われてしまうでしょう。

次回以降では、Lp(a)の非遺伝的変動について書きたいと思います。

「Repeated measurement of lipoprotein(a): technical versus biological variability」

「リポタンパク質(a)の繰り返し測定:技術的変動と生物学的変動」(原文はここ

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