前回の記事「5日間の高脂肪高エネルギー食負荷試験(人体実験) その2 リポタンパク質(a)Lp(a) あなたは何者?①」では、Lp(a)の低下は心血管疾患のリスクを低下させるかもしれないことを書きましたが、しっくりきません。
次のような研究もあります。
10,494人の日本人を対象にした研究です。追跡期間10.7年間でLp(a)と脳出血との関連を調べました。Lp(a)値によって3分位に分けました。男性はLp(a)が9mg/dL未満、9~19mg/dL、20mg/dL以上の3群、女性はLp(a)が10mg/dL未満、10~22mg/dL、23mg/dL以上の3群です。
そうすると、Lp(a)が最も低い群と比較してハザード比が男性では、中程度の群で0.55、最も高い群で0.69、女性では中程度の群で0.85、最も高い群で0.76となっていたのです。
さらに、脳出血の多変量調整後のハザード比は男性の中程度の群で0.26、最も高い群で0.34であり、女性の中程度の群で0.48、最も高い群で0.44であったのです。つまり、Lp(a)が高いほど脳出血のリスクが低下したのです。どこかで聞いたよな話ですね…
(図はこの論文より)脳出血とコレステロールの関係は上の図のようになっているという研究があります。つまり、コレステロール値が最も低い群3.36mmol/L(129.7mg/dL)と比較すると、コレステロール値が高いほど脳出血のリスクは低下し、最も高い群6.98mmol/L(269.5mg/dL)以上でややリスクが上昇するというものです。つまりU字を描いています。
上の図の上のグラフは高血圧なし、下は高血圧ありの脳出血のリスクを表していますが、高血圧ありの群でコレステロール値が上昇するにつれリスクが低下しています。
これと同じようなことがLp(a)にも起きているのではと思います。だとすると、Lp(a)をわざわざ測定する意味はあまりなさそうな気がします。
もしかすると、LDLコレステロールの二の舞で、心血管疾患のリスク因子と考えられていたのに、実は何も関連していない可能性もあります。Lp(a)はLDLと同じものにアポ(a)がくっ付いたものなのですから、ただ単に、LDLコレステロールの一部を見ているに過ぎないのではないでしょうか?
Lp(a)を標的にする薬が出てきたら要注意ですね。
「Inverse association between serum lipoprotein(a) and cerebral hemorrhage in the Japanese population」
「日本人集団における血清リポ蛋白(a)と脳出血の逆相関」(原文はここ)