5日間の高脂肪高エネルギー食負荷試験(人体実験) その2 リポタンパク質(a)Lp(a) あなたは何者?①

前回「5日間の高脂肪高エネルギー食負荷試験(人体実験) その1」の続きです。

突然ですが、リポタンパク質(a) Lp (a)は、心血管疾患の独立した危険因子と考えられています。あまり普段の検査でLp(a)を測定した経験はないと思います。Lp(a)は、LDLとほとんど同じですが、アポリポタンパク質のB100に加えて、プラスミノーゲンと非常に似た構造のアポリポタンパク質(a) apo(a)も含んでいます。このプラスミノーゲンと似た構造を持つことで、競合的にプラスミン生成を阻害して、線溶系の低下を起こし、血栓形成を促進すると考えられ、アテロームの発生に強く寄与していると考えられています。

しかし、ほとんどLp(a)に関心は寄せられてきませんでした。これまでLp(a)を下げるための特定の薬が無かったからだと思われます。実はLP(a)は遺伝的に決定されていると考えられています。そのため環境因子などに左右されないとされています。本当でしょうか?

今回ランセットに掲載された研究では、これまで行われたプラセボ対照のスタチン試験においてLP(a)を測定している人を対象にして、心血管イベントとの関連が検討されました。その結果は、スタチンの投与でLDLコレステロールは39%低下しましたが、LP(a)は変化しなかったのです。(図は原文より)

上の図は心血管イベントの発生のリスクを示しています。横軸はLp(a)の値を示しています。上の2つはベースライン時、下の二つはスタチンでの治療時です。左右のグラフの違いは調整の違いです。どの図を見ても、右肩上がりであり、Lp(a)が増加するにしたがってリスクが増加しているように見えます。

遺伝子でかなりLp(a)の値が決定しているのであれば、どうしようもないように思えます。しかし、Lp(a)を低下させることができればもしかしたら非常に心血管疾患のリスクの低下が得られる可能性があります。

人体実験の記事のはずなのに、最初からLp(a)の話が始まり、なんで?と思っているかもしれません。次の図は今回の人体実験の結果です。

私のLp(a)はベースライン時では24.5あったのですが、高脂肪食を食べ始めてどんどん低下し、5日後には9.2まで低下しました。ということは、高脂肪食は心血管疾患のリスクを低下させる可能性があるということになります。逆に考えれば、これまでの低脂肪食の推奨は、もしかしたらLp(a)の増加をもたらし、心血管疾患のリスクを高めていた可能性もあります。

たがしゅう先生の5日間断食のときのLp(a)も37→45→51と増加しています。脂質摂取量が少ないともしかするとLp(a)は増加する可能性があります。たがしゅう先生の断食ではLDLコレステロールも160→198→225と増加しているので、今回の私の実験と合わせて考えると、もしかしたらLp(a)はLDLと同じ動きをするのかもしれません。Lp(a)はLDLとほとんど同じなので、LDLが減ればLp(a)も減るのかもしれません。

また、別の研究でも、Lp(a)が低いほど冠動脈疾患や脳卒中が少ないという研究があります。(図はこの論文より)

上の図はLp(a)値による冠動脈心疾患、虚血性脳卒中、または非血管死のリスク比を示しています。AとBは調整の違いです。左から順に非致死性心筋梗塞と冠動脈疾患による死亡、虚血性脳卒中、非血管死です。非血管性の疾患での死亡には全く関連していませんが、冠動脈心疾患、虚血性脳卒中とは関連を認めています。

また、この研究では関連性があまりにも弱いので、非常に微妙な結果ですが、総コレステロールおよび非HDLコレステロール、アポB100とは弱い関連がありました。つまり、LDLが増加すればLp(a)も増加すると思われます。

「冠動脈疾患の管理において、LDLコレステロール低下の増強だけでなく、Lp(a)の低下も含めた治療が冠動脈疾患のリスク抑制の進歩につながる」と考えている専門家もいます。Lp(a)は「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」では、その他の考慮すべき危険因子・マーカーとして位置付けられているそうです。Lp(a)が低下することが良いことであれば、私の場合、高脂肪食は良い食事であると考えられます。動脈硬化性疾患予防ガイドラインでの食事療法とは恐らく正反対だと思います。

やはり、Lp(a)の低下は心血管疾患のリスクを低下させるのでしょうか?

しかし、話はそう簡単ではありません。この続きは次回で…

「Baseline and on-statin treatment lipoprotein(a) levels for prediction of cardiovascular events: individual patient-data meta-analysis of statin outcome trials」

「心血管イベントの予測のためのベースラインおよびスタチン治療のリポタンパク質(a)値:スタチンアウトカム試験の個々の患者データメタ分析」(原文はここ