先週ある学会に参加してきました。学会ではランチョンセミナーというものがあります。ランチョンという言葉からわかるかと思いますが、ランチをしながら、あるテーマの講演を聞くわけです。お弁当が配られ、講演の前の待ち時間の間にお弁当は食べ終わってしまいました。そして、講演が始まると、演者の先生が前置きをしました。「スライドを用意したけれども、直前に事情があり、スライドを削ったり、修正して、不本意な内容になった。」という主旨の話をしてから講演の内容を話し始めたのです。講演の途中、「スライドはないのですが」と言って、その方が本当に言いたい内容の話をしました。しかし、話し方はやや苦しそうです。
そして、肝心の治療法についての話になりました。そこでまた演者の先生は、「不本意な内容のスライドになってしまった」と溜息をついた後、スライドの内容を話しました。このときも苦しそうな話し方です。
実はランチョンセミナーというのは、企業が(特に製薬会社が多いのですが)お金を何十万も払ってセミナーが開催されます。当然演者にもお金が渡っているでしょう。そうすると、その企業に都合の悪い内容はそのセミナーでは話ができません。つまり、今回の様に演者の先生が本当に話したいことが、企業の利益につながらないのであれば修正、削除が加えられることとなります。まあ、どうせそんなこととわかっていて、いつもランチョンセミナーは話半分で聞いているのでいいのですが、学会中に行われる講演ですら、このように企業の金の力で情報が歪められています。もちろん企業の中には演者の先生の講演の内容に踏み込まない良心的な企業も存在すると思います。実際、これまでに何度も、その企業とはあまり関連しない話に終始したり、特段その企業の薬が良いというアピールが全くなかったりするランチョンセミナーもあります。しかし、今回は恐らく、演者の先生にとってあまりにも違った内容に修正しなければならなかったのでしょう。
そんなセミナーを聞いても正直勉強にありませんし、演者の先生もなぜそんな不本意な発表を断らなかったのかと疑問に思ってなりません。お小遣いが欲しかったのかな?
学会の場でさえ、このように企業の力によって情報が操作され、歪められているのですから、企業が直接行う薬の説明会の内容なんて本当に眉唾かもしれませんね。
また、莫大な費用を出す、テレビの番組や新聞・雑誌などスポンサーの思いのままに情報が歪められて当然でしょう。しかし、一般の方はそのようなテレビなどの内容を信じてしまっているんです。この洗脳は強烈でなかなか解けません。皆さんも情報はその後ろに何があるか(スポンサーはどこかなど)ちゃんと調べてから、情報の信頼性を吟味した方が良いかもしれません。