PPI(プロトンポンプ阻害薬)は腎臓にも良くない

以前の記事「PPI(プロトンポンプ阻害薬)は食道がんのリスクを高める」「PPI(プロトンポンプ阻害薬)は胃がんのリスクを高める」ではPPIの使用による胃や食道のがんの増加について書きました。今回は腎臓です。驚くべき数字です。

1000万人以上のFDA有害事象報告システム記録の患者記録から、PPIを服用し、他の薬を服用していない患者に焦点を当てた研究があります。42,537人のPPIのみの使用者と、PPIの対照群としてH2ブロッカーを使用した8,309人の間で報告された腎臓関連合併症の統計的な有意差を分析しました。

PPIのみを服用した人では、H2ブロッカーのみを服用した人の0.7%に対し、5.6%の頻度で腎臓関連の有害事象の報告があったのです。(図は原文より)

上の図のaは腎臓の有害事象の割合です。上からトータルの腎障害、慢性腎臓病、急性腎障害、末期の腎臓病、特定できない腎機能障害、腎臓結石です。どれも明らかにPPIの方が割合が高いです。bはH2ブロッカーと比較したPPIの腎臓の有害事象のオッズ比です。トータルで8.6、慢性腎臓病はなんと28.4、急性腎障害では4.2、末期の腎臓病はなんとなんと35.5、特定できないものが8.0、腎臓結石は2.8でした。

PPIの種類によって腎臓の有害事象の起こりやすさは異なるようです。上からラベプラゾール(先発品:パリエット)、ランソプラゾール(タケプロン)、パントプラゾール(日本では未発売?)、エソメプラゾール(ネキシウム)、オメプラゾール(オメプラール)です。腎臓結石はあまり違いはないようですが、急性腎障害、慢性腎臓病、末期の腎臓病はランソプラゾールが最も危険なようです。

果たして、どれだけの医師がPPIによってがんのリスク増加や腎機能障害などのリスク増加がかなりの割合で起こり得ることを患者さんに説明しているでしょうか?もちろん、実際にがんや腎障害が起きても、それはPPIによって起きたという因果関係を証明するのは困難です。だから医師が責任を負うことはないでしょう。だからって、本当にずっと処方し続けて良いの?

「Analysis of postmarketing safety data for proton-pump inhibitors reveals increased propensity for renal injury, electrolyte abnormalities, and nephrolithiasis」

「プロトンポンプ阻害薬の市販後安全性データの分析は腎障害、電解質異常、および腎結石症の傾向の増加を明らかにする」(原文はここ

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