LDLコレステロール値は心血管疾患のリスク因子とまだ考えている人がいると思います。しかし、研究によっては関連しているという結果になり、他の研究では関連性が認められないとなります。どちらが正しいかは答えは出ていません。しかし、私は以前の記事「LDLコレステロール値は役に立たない」などでも書いたように、LDLコレステロール値は関係なしだと思っています。
レムナントコレステロールの増加は心血管疾患のリスクを増加させると考えられています。(「レムナントは酸化LDLとほとんど同じ?」「レムナントコレステロールは心臓に悪い! だったら、糖質制限でしょ!」など参照)
レムナントコレステロール自体が原因ではありませんが。
虚血性心疾患5414例の患者のリポタンパク質を調べた研究があります。この研究ではレムナントコレステロールに注目しています。(図は原文より)
レムナントコレステロールは計算値と直接測定値の両方を調べています。しかし、測定されたレムナントコレステロールは非空腹時中性脂肪値が89mg/dL未満の場合、計算値の9%でしかありませんでした。中性脂肪値が443mg/dL以上では計算値の43%に留まりました。レムナントコレステロールの計算値は、非空腹時総コレステロールから測定したHDLコレステロールと測定したLDLコレステロールを引いたものとして計算しました。
ちなみに私の計算レムナントコレステロールは空腹時で、31mg/dLであり、測定レムナントコレステロールは2.9mg/dLです。ほぼ9%です。つまり、計算した値と測定した値は大きく異なります。
上の図は血中のそれぞれの脂質の値を3つのグループに分けて、もっとも低いグループを1として、それ以外のグループでの全原因死亡のリスクを表しています。上から計算レムナントコレステロール、測定レムナントコレステロール、測定LDLコレステロール、測定sdLDLコレステロール、測定HDLコレステロール、測定HDL3コレステロール、計算HDL2コレステロール、測定アポリポタンパクA1、測定アポリポタンパクB、測定総コレステロール、測定中性脂肪です。単位がmmol/Lになっているので、日本の単位にする場合は、コレステロールでは39をかけて、中性脂肪では89をかけると大体日本の単位となります。
そうすると、レムナントコレステロールでは最も低いグループと比較して、最も高いグループは計算では1.3倍、測定では1.1倍です。LDLコレステロールでは中間のグループが、0.8倍と逆にリスク低下です。リスク増加には関連していません。sdLDLコレステロールもリスク増加に関連していません。HDLコレステロールやHDLのアポリポタンパクであるA1は、値が大きい方がリスク低下を示しています。LDLのアポリポタンパクであるアポリポタンパクBはリスクに関連していません。総コレステロールも関連していません。中性脂肪は最も多いグループが1.2倍です。
上の図は横軸が中性脂肪値で縦軸がコレステロール値です。赤い斜めの縞模様のバーが測定レムナントコレステロールであり、それを合わせて赤いバー全体が計算レムナントコレステロールです。オレンジがLDLコレステロール、緑がHDLコレステロールです。中性脂肪値が増加すると、全体のコレステロールは増加しますが、その多くがレムナントコレステロールです。測定レムナントコレステロールも増加します。HDLはどんどん減少します。
上の図は細かいことは書きませんが、計算レムナントコレステロール、測定レムナントコレステロール、LDLコレステロールを低い方から順に並べて、そのリスクを比較しています。そうすると、やはりレムナントコレステロールは値が大きくなるとリスクは高くなっていきます。しかしLDLコレステロールは高くなってもリスクとは関連していません。
上の図は全原因死亡のリスクをグラフにしたものです。上から計算レムナントコレステロール、測定レムナントコレステロール、LDLコレステロールです。同様にレムナントコレステロールはは増加するとリスク上昇、LDLコレステロールは変化なしです。
上の図は横軸が年齢です。縦軸は虚血性心疾患の患者の生存率です。上のグラフが計算レムナントコレステロール、下のグラフはLDLコレステロールです。レムナントコレステロールは1mmol/L(39mg/dL)、LDLコレステロールは3mmol/L(116mg/dL) 前後で比較しています。レムナントは値が高い方が生存率が低くなっているのですが、LDLコレステロールは値に関連していません。
つまり、LDLコレステロール高くても低くても虚血性心疾患患者の全原因死亡のリスクとは関連していないのです。しかし、レムナントコレステロールは関連が認められ、特に計算で求めたレムナントコレステロールはリスク増加と関連しているようです。しかも、レムナントコレステロールの値は中性脂肪値と関連しています。中性脂肪値が増加すれば、レムナントコレステロールも増加するのです。レムナントコレステロールを測定できない場合、計算で求めたレムナントコレステロールの方がリスクを反映しています。そして、中性脂肪値を見てもリスクがわかります。
計算レムナントコレステロールは33mg/dLは超えない方が良いかもしれません。中性脂肪値はやはり100未満を目指すべきでしょう。LDLコレステロールは気にする必要はありません。
「Increased Remnant Cholesterol Explains Part of Residual Risk of All-Cause Mortality in 5414 Patients with Ischemic Heart Disease」
「レムナントコレステロール増加は虚血性心疾患5414例の患者における全原因死亡率の残存リスクの一部を説明する」(原文はここ)