食事のコレステロール摂取量とLDLコレステロール値増加

食事のコレステロール摂取量が増加しても、LDLコレステロール値はほとんど変わらない、と言われています。しかし、これも個人差があるかもしれません。実際に卵をたくさん食べるとLDLコレステロール値が上昇したという方が散見されます。

今回の研究は食事でのコレステロール摂取とLDLコレステロール値の上昇がどれくらいであるかを分析しています。(図は原文より)

黒い丸が実際の値です。横軸がコレステロール摂取量の増加量です。縦軸がLDLコレステロール値の増加量です。3つの分析モデルが示されていますが、線形(真っすぐの点線)モデルよりも、MMモデルとHillモデルの方が全範囲のデータをより反映するものだと考えられます。

そうすると、どんなにコレステロール摂取量が増加しても、平均するとLDLコレステロール値の増加は10mg/dL前後で頭打ちです。だから、一般的には食事でコレステロールを増やしたところでLDLコレステロール値の大きな変化は起きません。しかし、図を見てわかる通り、ものすごくLDLコレステロール値が増加している人もいます。

日本人のデータでは、「佐久コホート」に於ける遺伝疫学解析(報告書はここ)を見ると、最初の部分に「東海大学、本間康彦氏らの実験では、毎日卵黄 3 個分のコレステロールを 2 週間摂取し続けた人の内、65%の人は LDL コレステロール値が変化しないかむしろ低下し、残りの 35%は上昇した」と書かれています。(その論文はここ)ただ、この原文は手に入れていないので、35%の人がどれほどLDLコレステロールが増加したのかなどの詳細は分かりません。

また、「卵類の摂取量とレプチン値、アディポネクチン値、また、卵類の摂取量と、体脂肪率、皮下脂肪面積がいずれも負の相関になり、卵成分の摂取が脂肪細胞の肥大化を抑制していると考えられ、卵を食べれば効果的に皮下脂肪を減らせる可能性が示唆された。また、HDL 値ときのこ類、海藻類、豆類、その他の野菜類の摂取量の間には正相関があり、食物繊維を多く摂取すれば HDL 値が改善できるかもしれない。」とも書かれています。

ただ、LDLコレステロールを下げる必要があるかどうかについては、私は中性脂肪が十分に低く、HDLコレステロールが高ければ、まったく気にする必要はないと思っています。(「糖質制限とLDLコレステロール上昇3 脂質をもっと食べるべき?」「糖質制限とLDLコレステロール上昇」「コレステロールを恐れ過ぎてはいけない LDLコレステロール値が低いほど死亡率が上がる!」など参照)

「Meta-regression analysis of the effects of dietary cholesterol intake on LDL and HDL cholesterol」

「LDLおよびHDLコレステロールに対する食事性コレステロール摂取の影響のメタ回帰分析」(原文はここ

2 thoughts on “食事のコレステロール摂取量とLDLコレステロール値増加

  1. LDL-Cの記事とは関係ない内容で申し訳ないですが、SGLT2阻害薬と微少栄養素の関係について日ごろ思っていることを書いてみたいと思います。

    まず、私は、糖尿病とは別件での血液検査で血糖値、HbA1cが高値である場合が多く、糖尿病と診断される前に自主的に糖質制限を始めました。
    糖質制限6か月後に現在の病院を受診した時には既に数値は改善し、空腹時血糖値、HbA1cでは糖尿病の診断基準を満たさない状態で、「異常なし」とされましたが、数値の改善は糖質制限(42g/日)を継続しているためであり、「異常あり」ですと申告し、75gブドウ糖負荷試験2時間後血糖値252mg/dLでやっと「糖尿病」と診断されました。糖質制限非推奨の医師でしたので、糖質制限の内容を説明すると全く主食を食べていない事に驚かれ、高たんぱく食では将来、腎症のリスクがあると脅されましたが、現在は、かなり理解を示していただいています。言う事を聞かないのであきらめたのかもしれませんが(笑)
    この「糖尿病」と診断されたことは私にとっては大事なことだったのです。すぐに「保険適用」でSGLT2阻害薬の処方を申し出てスーグラ25mg(少しして12.5mgに減量、先月より断薬)を処方してもらいました。

    前置きが長くなりましたが、なぜスーグラを処方してもらいたかったかと言いますと、インスリンに影響せず、摂取した糖質のみを排泄する機序が魅力的でした。決して糖質をたくさん食べようと思ったわけではありません。食べたかったのは糖質以外の栄養素です。
    1食15g以下の糖質制限をしていると選べる食材に限りがあり、どうしても食生活が偏ってきます。ある時から糖質制限前より体水分量は増加しているにもかかわらず、ふくらはぎの痙攣が頻発し、次第に強く痙攣するようになり、マグネシウムのサプリで劇的に改善したことから、3大栄養素に加え、微少栄養素の大切さも経験しました。
    それらの事より、少しでも多くの種類の食材を摂取することにより微少栄養素もできるだけ通常の食品から摂取できるようにしたいと思ったわけです。選択的に糖質だけを排泄してくれるSGLT2iなら、糖質以外の栄養素は少しでも多く摂取できると考えたのです。これまでSGLT2iをそのような観点から考察した文献を見たことがありません。もしご存じでしたらご教示頂ければ幸いです。

    なお、私は糖質制限の数値目標を食後ピーク血糖値140mg/dL以下とし、糖質制限1年6ヶ月で摂取可能糖質量は15g/食→20g/食(スーグラ12.5mg服用)まで改善しました。そこで先月よりスーグラの服用を中止、糖質量は一旦、15g/食に戻しました。
    現在HbA1c5.4(制限前6.9)ですので、スーグラ服用なしでこの数値の維持、糖質の摂取可能量の増加(耐糖能の改善)が今後の課題です。

    1. 西村 典彦さん

      1食15gの糖質でもほかの栄養素は十分に摂ることができると思います。例えばマグネシウムについてはあおさ3gにマグネシウム96㎎です。
      それ以外の魚介類、海の塩のぬちまーす、ナッツ類などを摂れば十分でしょう。
      わざわざ糖質を摂ってスーグラを飲む必要はないと思いますし、現在の糖質量でも様々な栄養素は不足しないと思います。

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