赤血球の形状の変化と病気 その1

赤血球は下のような円盤型をしています。

走査型電子顕微鏡で見ると正常な健康な赤血球は下のように見えます。円盤型ですが、上の絵と同じように真ん中が凹んでいます。(図は原文より、表は原文より改変)

赤血球の最も重要な機能は酸素を体の細胞に運ぶことです。また、凝固や炎症においても役割を果たしています。その他の機能もあるようです。赤血球は血管系を通過するときにせん断力(物の内部にある面と平行方向に生じる、物をずらすような力のこと)にさらされるため、非常に変形可能で弾性に富んでいます。そしてこの機能は赤血球の膜の構造に依存しています。膜のタンパク質により、変形性、柔軟性、耐久性を保っていると考えられます。そして変形した後も円盤状の形状を回復します。不健康な赤血球はこのような変形性や柔軟性が乏しく、そしてそれを回復して円盤状を保つこともできなくなります。

下の図は健康な赤血球がフィブリン繊維(血液を凝固させる作用をもつたんぱく質で、出血したときに血中のフィブリノゲンにトロンビンが作用してできる不溶性の線維状のもの)に囲まれたものです。健康な赤血球ではフィブリン繊維の圧力では変形せず、円盤状を保っています。

(この図は「その2」の論文より)

では、糖尿病ではどうでしょうか?下の図を見てみましょう。

上の図のAとBはフィブリン繊維の周りに自然とねじれている赤血球を示しています。そして、膜の表面に何か突起物のようなものも伸びています。そして、円盤状というよりも少し細長い形状に見えます。Cはもはや円盤状といえないような形で、健康な赤血球では表面に認められる凹みもなく、なめらかな膜の表面です。実際に測定すると健康な赤血球と糖尿病の赤血球とではどのように違うのでしょうか?下の表を見てください。

健康および糖尿病の赤血球のマクロパラメータ測定結果

 コントロール糖尿病
直径


7.22μm±0.16μm


6.80μm±0.08μm


高さ


2.68μm±0.04μm


1.48μm±0.11μm


凹面の深さ358.2 nm±117.6 nm153.9 nm±58.6 nm

健康(コントロール)な赤血球と比較して糖尿病の赤血球は小さく、平ぺったく、凹みも浅い形状を示しています。

そして、赤血球の膜の表面の粗さ(roughness)も健康状態の指標と考えられています。何らかの病気になったり、細胞の老化によってもこの膜の粗さが減少するようです。

健康および糖尿病の赤血球の膜の表面の粗さ測定結果

 コントロール糖尿病
1面の粗さ


3.099 nm±0.499 nm


1.70 nm±0.13 nm


2面の粗さ


4.12 nm±0.51 nm


1.66 nm±0.24 nm


3面の粗さ1.72 nm±0.199 nm0.82 nm±0.11 nm

どの面の粗さも健康な赤血球の半分程度になっています。

糖尿病でのこのような赤血球の形状の変化の原因は、高血糖や酸化ストレスや炎症でしょう。

このように、健康な赤血球と糖尿病の赤血球ではその形状が明らかに違っているのです。このような病気による赤血球の変化が様々な合併症と関連しているとも考えられます。

糖質過剰摂取の赤血球は健康な形状を保てないと考えられます。

この続きは次回以降に。

「Changes in red blood cell membrane structure in type 2 diabetes: a scanning electron and atomic force microscopy study」

「2型糖尿病における赤血球膜構造の変化:走査型電子および原子間力顕微鏡研究」(原文はここ

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