日本人におけるアルコールとがんの関連

適度な飲酒は健康的だ、と言われます。しかし、アルコールはやはり毒性があるので、少量でもがんのリスクがあると考えられています。

今回の研究では、63,232人のがん患者と同人数のがんを発症していない対照者のデータを用いてアルコールとがんの関連を分析しています。標準化されたアルコール単位の1杯とは、23gのエタノールを含むものであり、日本酒では1合(180ml)、ビールでは500ml、ワインでは180ml、ウイスキーでは60mlに相当するものです。(図は原文より)

上の図は全くアルコールを飲まない人と比較した酒飲みのがんの可能性を示しています。口腔がん、喉頭がん、食道がん、胃がん、結腸直腸がん、肝臓がんのオッズが増加しました。食道がんで最も顕著でした。また、乳がんや前立腺がん、膀胱がんも増加していました。アルコールは代謝されてアセトアルデヒドになりそれが毒性を示すと考えられますが、なぜか消化器全体でがんのリスクが高いことを考えると、アルコールそのものの通り道は全て危険に晒されているように見えます。またアルコールを代謝する肝臓、代謝物を排泄するための経路である膀胱や前立腺も影響を受けるようです。

上の図は少量の飲酒者の1日の飲酒量×年数で見たものです。少量の飲酒量(1日1杯を10年、または1日2杯を5年)の人では、全体のがんのリスクが5%増加しました。アルコールを摂取した期間に関係なく、1日2杯以下では、がんのリスクが高くなりました。

上の図は少量の飲酒者の特定のがんになる可能性を示しています。最初の表と同様に消化器のがんが年数とともにがんの可能性が高くなっており、特に食道がんは非常に顕著です。軽度から中程度のアルコール摂取は皮膚がんと多発性骨髄腫のリスク低下となぜか関連していました。

乳がんと前立腺がんの場合、アルコール摂取によるホルモンレベル(エストロゲンやアンドロゲン)の上昇が原因になっている可能性があります。

WHOでは、飲酒は口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸と女性の乳房のがんの原因となるとされています。アルコールそのものに発がん性があり、少量の飲酒で赤くなる体質のアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い人では、アルコール代謝産物のアセトアルデヒドが食道がんの原因となるとも結論づけています。

私もすぐに赤くなってしまいます。この酵素の活性が弱い人が、2合以上の飲酒を続けると、肺がんになるリスクは約4倍になることも明らかになっているそうです。これは喫煙以上の肺がんリスク因子です。飲酒でなぜ肺がんなのでしょう?メカニズムは次のように考えられています。

「口から入ったアルコールは、まず、胃内でアセトアルデヒドに分解される。アルデヒド脱水素酵素活性が十分にあれば、アセトアルデヒドも胃で分解されるが、アルデヒド脱水素酵素活性が不十分な場合には、このアセトアルデヒドが小腸を経由して体内に吸収される。そして、肺で気化した後、呼気として出てくる。呼気中のアセトアルデヒドは、口腔内の唾液などに取り込まれ、再度、体内に入り、食道などに付着する。アセトアルデヒドは、気化しやすいが粘着性が高いという性質を持つため、肺、口腔内、食道に蓄積しやすく、それらの部位のがんの発生原因になるというのだ。また、アセトアルデヒドは、お酒のなかにも最初からある程度含まれている。そして、お酒の種類によってその濃度に差があるという。アセトアルデヒドの濃度が高いお酒としては、リンゴから作られるカルバドスという蒸留酒があり、この蒸留酒の産地であるフランス北部では、食道がんの発生率が高いというデータもある。」ここ参照)

つまり、アルコールそのものの発がん性、お酒に最初から含まれているアセトアルデヒド、代謝されて吸収されてできたアセトアルデヒドが様々ながんを引き起こしていると考えられます。

食道がんは日本人の食道がんで9割を占める扁平上皮がんと欧米で非常に多い腺がんがあります。この二つは全くリスク因子が異なります。(図はがん研有明病院のサイトより)

腺がんは肥満や糖尿病との関連も指摘されており、恐らく糖質過剰症候群です。しかし、扁平上皮がんはやはりアルコールとの関係が非常に強いでしょう。(近年日本人の腺がんも増加傾向です。)

いずれにしてもアルコールはできる限り飲まない方が良いのかもしれません。ただ、この研究も糖質過剰摂取+アルコール摂取のものです。糖質制限ではどうなるのかわかりません。我々に都合の良いように考えれば、糖質制限をしていれば炎症を抑え、アルコールの多少の摂取はがんのリスクを上げないのではないかと考えます。(全くこれはエビデンスはありませんが。)

だから、今日も明日も私はアルコールを飲んでしまうでしょう。

「Light to moderate amount of lifetime alcohol consumption and risk of cancer in Japan」

「日本における軽度から中程度の生涯アルコール消費量とがんのリスク」(原文はここ

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