虫垂炎と胃食道逆流症と糖尿病

虫垂は不必要な残骸ではなく、現在では腸内細菌の「安全な家」と考えられています。急性虫垂炎(いわゆる盲腸)は急激な虫垂の強い炎症です。腸内細菌のフソバクテリアの存在は、虫垂炎の重症度と正の相関しているという報告があります。(ここ参照)健康の人ではこのフソバクテリアはほとんど認めないようです。

つまり、虫垂炎を起こす人では腸内細菌のバランスが崩れ、虫垂炎を起こしうる細菌が増加している可能性があります。

PPIによって胃酸が低下すると、腸内細菌叢のバランスが変化する可能性が高くなります。以前の記事「PPI(プロトンポンプ阻害薬)とアルコール摂取」の論文でもPPIによって多くの人でフソバクテリアが増加していました。(論文はここ

そうすると、PPIを長期に飲んでいる胃食道逆流症(GERD)、逆流性食道炎の人では虫垂炎のリスクが高くなるのでしょうか?

今回の研究では、胃食道逆流症と虫垂炎の関連を調べています。

その結果、虫垂炎になった人では胃食道逆流症であった可能性が、コントロールと比較して2.05倍でした。年齢別では18〜39歳で1.96倍、40〜59歳で2.36倍、60歳以上で1.71倍でした。虫垂炎の患者は、年齢に関係なく、虫垂炎のない人よりも胃食道逆流症であった可能性が高かったのです。これがPPIによるものである可能性がありますが、そこまで書いてありません。

しかし、別の研究では、PPIの有無で違いを分析しています。その研究では虫垂切除した人では胃食道逆流症であった可能性は1.37倍で、PPI処方でも1.31倍で有意な差はありませんでした。(ここ参照)PPIとの関連はないかもしれませんし、メカニズムを考えるとあるのかもしれません。胃食道逆流症を発症するような食事をしている時点で、腸内細菌叢が変化して、フソバクテリアが増加しているので、PPIを飲んでも飲まなくても、その腸内細菌の変化は起きているので、PPIの有無での有意差がないのかもしれません。

そうすると、胃食道逆流症、逆流性食道炎の原因とも考えられる糖質過剰摂取ではどうでしょう?糖質過剰摂取だけでは虫垂炎との関連を示す研究は見つからないので、糖尿病との関連はどうでしょうか?

そうすると2型糖尿病では、虫垂炎と強く関連する腸内細菌のフソバクテリアが増加していました。(ここ参照)

さらに、急性虫垂炎で抗生物質治療を受けた人の1年間の追跡では、糖尿病のない虫垂炎患者よりも糖尿病のある虫垂炎患者の場合、虫垂切除術のリスク比が1.75倍になっていました。

また、穿孔(穴が開いてうんこが腹腔内に漏れる)して腹腔内膿瘍を合併してるような急性虫垂炎が起こる可能性は糖尿病で3.57倍でした。(ここ参照)他の研究でも糖尿病があると虫垂炎で穿孔が起きる可能性が1.35倍でした。(ここ参照)

つまり、糖尿病では腸内細菌が変化し、虫垂炎を起こしやすくなり、しかも手術で虫垂切除を必要としたり、穴が開いてしまう重症の虫垂炎のリスクが高くなるようです。

ただ、虫垂切除後に2型糖尿病を発症しやすくなるという研究もあります。(表はこの論文より)
虫垂切除後の経過年数リスク比
(95%CI)
<32.017(1.07、3.802)
3〜71.764(1.052、2.957)
<71.705(1.146、2.538)
7〜101.232(0.659、2.303)
> = 101.442(0.8、2.599)

上の表は30歳未満で虫垂切除を行った人の、その後の2型糖尿病の発生のリスク比です。30歳未満の虫垂切除術患者では2型糖尿病は発生が1.347倍であり、虫垂切除後のフォローアップから3年以内では、2型糖尿病を発症するリスクは虫垂切除をしていない人の2.017倍でした。

虫垂切除により、腸内細菌の「安全な家」が無くなり、腸内細菌叢のバランスが崩れ、2型糖尿病を発症しやすくなったとも考えられますが、2型糖尿病を発症するような糖質過剰摂取の人が虫垂炎を起こしやすく、糖尿病発症前に虫垂切除を受けて、その後糖尿病を発症したとも考えられます。

糖尿病、胃食道逆流症は糖質過剰症候群です。そこの関連を考えると、虫垂炎または穿孔するほどの重症な虫垂炎は糖質過剰摂取による腸内細菌叢の変化が大きな原因である可能性があります。

腸内細菌叢は食事で変化します。糖質過剰摂取が虫垂炎の原因の一つとなっていても全く不思議ではありません。

「Association Between Gastroesophageal Reflux Disease and Appendicitis: A Population-Based Case-Control Study」

「胃食道逆流症と虫垂炎の関連:集団ベースの症例対照研究」(原文はここ

「Increased Risk of Appendectomy in Patients With Gastroesophageal Reflux Disease」

「胃食道逆流症患者における虫垂切除のリスクの増加」(原文はここ

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