お酒を飲んでいないのにアルコール検出器に反応?

以前の記事「炭水化物をアルコールに変える腸内細菌」では、腸内細菌の働きで、炭水化物が腸の中で発酵しアルコールになってしまう、アルコールの内因性生産について書きました。

しかし、糖質制限や糖尿病治療薬によるアルコール検出器の偽陽性が起こることがあります。

糖質制限をしているとケトン体が増加します。そうすると呼気(息)の中にアセトンというケトン体の一つが出てきます。ご存じの方もいると思いますが、アルコール検出器の中にはこのアセトンに反応するものもあるようです。ブログを読んでいただいている方からの情報では、糖質制限でケトン体質になったためにアルコール検出器で「基準値の3倍」の数値が出たとのことでした。

アルコール検出器のメーカーの説明に次のようなものがありました。(ここ参照)

「計測を行う前は空腹を避けて」という注意書きさえあります。糖質制限をして朝食を食べない場合はかなり引っ掛かりそうですね。入れ歯安定剤や栄養ドリンク、マウスウォッシュも使ったばかりのときは注意が必要なようです。

さらに、糖尿病薬のSGLT-2阻害薬を飲んでいる人も同様に注意が必要です。

次のような報告があります。(ここ参照)

57歳男性、タクシー運転手。血糖コントロール不十分なため教育入院となる。入院時BMI33 、HbA1c9.1%、尿ケトン-、GAD抗体-。22 kcal/標準体重の食事療法および入院前から服用していたカナグリフロジンを継続し退院した。翌日より職場の呼気アルコール検知器で陽性反応が持続するため受診した。血糖113mg/dL、尿糖4+、尿ケトン2+、血中総ケトン体2350μmol/L、血中アルコールは感度未満であった。アシドーシスなく、正常血糖ケトーシスと診断した。カナグリフロジン中止したところ、3日後に検知器は陰性となり、その後外来で尿ケトン陰性を確認した。簡易アルコール検知器はケトン体により偽陽性となり得る。SGLT2阻害薬服用者のアルコール検知器反応陽性は、ケトーシスの早期発見のきっかけになる一方、乗務者には酒気帯び誤認トラブルになる可能性があり注意を要す。

アシドーシスの無い、正常血糖ケトーシスが病的意味があるのかどうかは疑問ですが、SGLT-2阻害薬もケトン体が上昇するので、糖質制限と同様にアルコール検出器には注意が必要でしょう。

職場や検問で引っ掛かった場合、「糖質制限をしています」で通じる人はどれほどいるでしょうか?毎回血中のアルコールを調べるわけにもいきませんし。悩ましいですね。

逆に息を吹き込むだけのアセトンを測定するケトンメーターなどの機器は、アルコールも検出してしまうのでしょうかね?

5 thoughts on “お酒を飲んでいないのにアルコール検出器に反応?

  1. 糖質制限をしていると、お酒を飲んでいないのに、アルコール検知器に反応する可能性があるとは、知りませんでした。大変面白いです。
    私自身、スーパー糖質制限、一日二食です。血中総ケトンを測ると、いつも約400~1000μmol/Lです。
    検問などでアルコールを測られたことはありませんが、検知器に反応するとなると厄介ですね。

    1. 三世 敏彦さん、コメントありがとうございます。

      自分のケトン体値を測定したデータを持ち歩くと良いのでしょうかね?
      どうすれば回避できるのか、ケトン体値がどれくらいだと反応するのか、よくわかりません。
      厄介ですね。

  2. 清水先生、いつもありがとうございます。

    東洋マーク製造株式会社の表の1部に誤りがあります。

    Βヒドロキシ酪酸とするべきところを「ヒドロキシ酢酸」にしておりますね。こんな物質はこの世にはないですね。

    こんな誤字のある表を表に出す位の会社ですから、機械のレベルも大した事は無いですね。

    こんな検知器を警察が使っているのならば、警察組織もたいした事は無いですね。まぁもっともこの国がたいした国じゃないので、当然と言えば当然かな?

    1. ジェームズ中野さん、コメントありがとうございます。

      日本の警察がどのメーカーのどの機種を使っているのか全く知りません。
      話が飛躍しすぎでは?

  3. 清水先生ありがとうございます。

    話が飛躍しておりましたか?
    しかしそもそも論でいいますとあたらずとも遠からずと言えるんではないんでしょうか?警察権力も国家権力も信用しすぎると良くないと思いますよ。少し離れた位置から俯瞰をするのが正しい思想につながっていくように思います。

    話は変わりまして、うんこ好きな先生にお勧めしたい書籍がございます。
    先日メルカリで購入いたしました中古本になりますが「排泄物と文明」ーフンコロガシから有機農業、香水の発明、パンデミックまでーと言うタイトルの書籍です。

    定価2400円ほどの書籍がたった600円。
    わざわざ新刊書を買う必要もなく、しばらく時間をおくと、メルカリでバナナの叩き売り状態になってます。

    貧乏暮らしのロハスな生活者にとってはこんなにありがたい事は無いですね。

    書籍はしばらく待って、中古本を買うに限ります。

    以上ご案内まで。失礼します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です