鉄とがんの関係 数年後に後悔しないために

これまで、鉄とがんの関係を何度か記事にしました。「鉄不足だからと言って鉄のサプリメントを飲めば良い、ってもんじゃない!」など。

今回の研究では、わざわざ血液を定期的に抜いて、フェリチン値をコントロールして、がんの発生率や死亡率を調査しています。

新たながんの発症の75%がフェリチン値57以上で起こっているという結果には驚きです。コントロール群のフェリチン値の平均が122ぐらいで、鉄減少群の平均が80ぐらいです。これぐらいの差でも有意にがんの発症と死亡率が違うのです。前回記事にした「鉄と乳がんの関係」でもフェリチン値50ぐらいというのが一つの境界のようなデータでした。フェリチン値の目標は50ぐらいなのかもしれません。

やはり、男性と比較して女性のがんの発症が少ないのは鉄、フェリチン値が低いことと関連がある可能性は十分ありますね。何も考えないで鉄のサプリメントを飲んで、数年後に後悔しないようにしてください。アスリートでもない限り、症状がなければ、食事に気を付けていれば十分です。

 

「Decreased Cancer Risk After Iron Reduction in Patients With Peripheral Arterial Disease: Results From a Randomized Trial 」

「末梢動脈疾患患者における鉄分除去後のがんリスクの低下:無作為化試験の結果」(原文はここ

要約

過剰鉄は、鉄触媒されたフリーラジカル媒介酸化ストレスの増加により癌リスクに関与している。

無作為化試験で、血液を抜くことによる鉄貯蔵を減少させることが末梢動脈疾患の患者の転帰に影響を及ぼすという仮説を試験した。過去5年間に内臓悪性腫瘍のない患者(n = 1277)を無作為にコントロール群(n = 641)または鉄減少群(n = 636)に割り当てた。新たな内臓悪性腫瘍の発生および原因別死亡率データを前向きに収集した。

結果
患者の平均追跡期間は4.5年であった。フェリチン値は、ベースラインで両群で同等であったが、6ヶ月ごと受診全ての期間で鉄減少群の方がフェリチン値は低かった。(鉄減少群:平均= 79.7ng / mL。コントロール群:平均=122.5ng / mL)
表1:コントロール群(n = 641)および鉄減少(n = 636)群のフォローアップ中の組織学的に確認された新たな癌診断の臓器部位
臓器 合計 コントロール 鉄減少 
肺 38 23 15 
結腸直腸 13 
前立腺 12 
上部消化器 
膀胱 
膵臓 
その他19 13 
合計 98 60 38 

新しい内臓悪性腫瘍のリスクは、コントロール群よりも鉄減少群の方が低かった。(38対60、危険率[HR] = 0.65)

 

 

 

新規のがんの診断:点線がコントロール群、実線が鉄減少群(以下同様)

(クリックで拡大、図は全て原文より)

 

累積発生率曲線としてデータを表示すると、鉄減少による有意ながんリスクの減少も見られた(危険率[HR] = 0.61)。鉄減少群でがんを発症した患者は、がんを発症しなかった同じ鉄減少群よりもフェリチン値が高く、コンプライアンス(遵守率、つまりちゃんと血液を抜いている割合)が良好であれば治療効果がさらに大きくなる可能性が示唆された。

 

がんの累積発症率

 

 

さらに、経過観察中にがんを発症した38人の鉄減少群の患者は、がんと診断された60人のコントロール群の患者よりも、がん死亡リスク(危険率[HR] = 0.39)および全死因死亡率(HR = 0.49)が有意に低かった。

 

 

 

がんでの死亡率

また、新たながんの75%が、約57ng / mLを超えるフェリチン値を有する患者の間で発生した。

結論

鉄分の減少は、がんリスクおよび死亡率の低下と関連していた。

6 thoughts on “鉄とがんの関係 数年後に後悔しないために

  1. ドクターシミズ
    大変失礼な質問ですが清水 健一郎 先生でしょうか。
    病気のため1年ほど糖質制限している者です。

  2. ドクターシミズ
    繰り返しの問い合わせにお答えいただきありがとうございました。
    学園都市線(札沼線)新川の近くでしたか。

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