胎児のミトコンドリア

胎児のミトコンドリアはすべて母親から受け継ぎます。最終的には卵子になる、卵巣にある卵母細胞の生存および将来の受精卵から胎児そして赤ちゃんになるには、卵母細胞ミトコンドリアからの十分なエネルギー供給が重要です。卵母細胞は、人の中の最大の細胞で、他の体細胞よりも平均して300倍大きいのです。そして大量のミトコンドリアを含み、成熟した卵母細胞では10万個に及ぶと言われ、これは卵質の少なくとも23%に相当します。

ミトコンドリアとミトコンドリアDNAの両方の量が、卵母細胞の受精およびその後の胎内での成長の成功に寄与すると考えられます。

ミトコンドリアの活性は、受精および着床が達成され、細胞が爆発的に分裂し成長していくためのエネルギーを提供するために、妊娠に不可欠です。ひとつの卵子と精子が一緒になって、それが胎児そして赤ちゃんとして生まれてくるまでに(さらには生まれた後の成長にも)莫大なエネルギー供給を必要とします。それを担っているのがミトコンドリアなのです。さらにミトコンドリアは、胎内でのこの重要な段階でアポトーシスの進行を制御して、さらなる成長のためにどの細胞または組織を排除する必要があるかを決定することに大きく関与します。その結果、ミトコンドリアが妊娠中に毒性物質などに曝露されると、胎児の状態が変化し、新生児の周産期の転帰や健康状態に重要な影響を及ぼすことがあるのです。

ミトコンドリアの機能不全は、早産、死産、子宮内胎児発育遅延(IUGR)、突然の乳児死亡率の増加と関連していると言われています。

すでに卵子の時点でしっかりとしたミトコンドリアが存在し、それを母親から10万個も受け継いでいます。それがどんどん分裂、増殖するのです。そして、信じられないほどのスピードで分裂する細胞、成長していく組織、胎児に必要なエネルギーを供給するのはミトコンドリアです。ミトコンドリアはフル回転していると思われます。そうでなければ地球上には人間をはじめ多くの生物は存在せず、細菌などもっと下等な生物しかいないままです。元細菌のミトコンドリアが細胞の中に同居してくれたからこそ、現在の様々な生物が存在するのです。

妊娠中に何らかの原因でミトコンドリアが上手く働かなければ、恐らく胎児は死んでしまうか、非常に深刻な病気や障害を抱えて生まれてくることになると考えられているのです。

様々な薬だけでなく、身近なところではタバコやアルコールにもミトコンドリア毒性があると考えられています。妊娠を考えている女性はアルコールの摂取をやめるべきです。妊娠してからではなく、妊娠しようとしている時点でやめた方が良いでしょう。妊娠がわかった時にはもうすでに何週間か経ってしまっているのですから。

妊娠を考えている女性だけでなく、その周りの家族もタバコを止めなければなりません。しかし、医療関係者でも妊娠しているときであってもタバコを吸っていることを堂々と自慢げに話している人もいました。

少しでも自分の赤ちゃんに良い状態で生まれてきてもらうように最善の努力をすることは、親の使命だと思うのですが…。胎児は日に日に様々な重要な臓器などが成長していきます。そのどの時点であっても問題が起きることは、生まれてからその子供が問題を背負うことになってしまいます。

 

「Mitochondrial toxicity in human pregnancy: an update on clinical and experimental approaches in the last 10 years」

「ヒトの妊娠におけるミトコンドリア毒性:過去10年間の臨床的および実験的アプローチに関する最新情報」(原文はここ

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