アメリカ糖尿病学会のコンセンサスレポート その2 糖質はどれだけ摂るべきか?

以前の記事「アメリカ糖尿病学会が出した歴史的なコンセンサスレポート 糖質制限を推進!」で書いたように、アメリカの糖尿病学会は糖質制限の方向へ大きく舵を切ったように見えます。ただ、それはこれまで徐々に進めてきた動きです。2008年から糖質制限の有益性を1年間としていました。2011年からは2年間に延長されました。2013年には正式に栄養療法の一つとなっています。

しかし、日本糖尿病学会はこれまでカロリー制限が唯一の栄養療法でした。根拠もない状態でずっとカロリー制限を行ってきて、糖質制限は認めてきませんでした。アメリカの糖尿病学会のこの流れに合わせるのかどうかはまだわかりません。しかし、今回のアメリカの糖尿病学会のコンセンサスレポートのような内容をいきなり導入するのも違和感たっぷりです。つまり、手の平返しです。もし手の平を返したら、「今までは何だったの?」という感じです。アメリカの糖尿病学会は少しずつ段階を踏んできました。ヨーロッパでも同様です。しかし、日本は違います。今年の日本糖尿病学会はどのような態度を示すのでしょうか?

今回のコンセンサスレポートの「糖尿病患者の炭水化物の必要量は、一般の人々と比べて異なりますか? 」のところで、こう書かれています。

・人間の健康に最適な糖質量(炭水化物量)はわかっていない。

・糖尿病のない成人(19歳以上)の炭水化物の推奨される食事許容量は130 g /日であり、一部は脳のグルコース要求量によって決定されるが、このエネルギー要求量は、グリコーゲン分解、糖新生(脂肪のグリセロール成分またはタンパク質中の糖源性アミノ酸の代謝による)、および/または非常に低い食事性炭水化物摂取の設定におけるケトン体産生、を含む代謝プロセスによって満たすことができる。

つまり、最適な糖質摂取量は現在のところわかっていないと素直に認めたところで、1日130gが必要であろう、としています。1日130gというのは、アメリカでも2007年までは130g以下は推奨できないとしていました。しかし、現在の記述では、この130gという量は、食事から摂取することが必要なわけではなく、このエネルギー量はグリコーゲンの分解や糖新生、そして糖質制限による「ケトン体産生」から得られるのである、と書かれています。

まだ日本の一部の医師や栄養士はケトン体が「危険」と言っているのとは大違いです。

そして、日本の医師や栄養士の中には、この130gにこだわり、「1日1回は白米などで糖質を摂らないとエネルギー切れを起こし、脳にエネルギーが回らないから危険だ!」というようなことを未だに言っている人もいるようです。このような方たちは1日に1回糖質を摂れば、それがブドウ糖に変わり、1日かかって体中をめぐり、エネルギーを届けてくれる、と思っているのかもしれません。空腹時でさえ、その前に摂取した糖質がずっとエネルギーになっているとでも思っているのでしょう。このような発言をしている自称専門家の言っていることを信じる必要はありません。

2020年の日本人の食事摂取基準(「日本人の食事摂取基準(2020版)(案)を読んでがっかり その2 炭水化物(糖質)」参照)では、脳は「ぶどう糖しかエネルギー源として利用できない」とはっきり書かれています。「ケトン体」は相変わらず出てきません。そして、「糖質の最低必要量はおよそ 100 g/日と推定される。しかし、肝臓は必要に応じて筋肉から放出された乳酸やアミノ酸、脂肪組織から放出されたグリセロールを利用して糖新生を行い、血中にぶどう糖を供給する。したがって、これは真に必要な最低量を意味するものではない。」という内容であり、今回のコンセンサスレポートの内容と同様に、1日100gは必要と推定されるけれども、糖新生などで供給されるので、そこまでは実際には必要ないというように書かれています。

そうであるにも関わらず、炭水化物の摂取量はエネルギー摂取量の60%程度を推奨しているのです。100gであればエネルギー摂取量の20%程度のはずです。非常に矛盾しています。

いつかは日本も糖質制限を容認または推奨する日が来るでしょう。しかし、2020年の日本人の食事摂取基準案の作成委員に日本糖尿病学会の理事も含まれているので、もしかしたら欧米に10年遅れる可能性はあるでしょう。

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