運動により分泌が抑えられていたインスリンは運動終了直後に増加する

運動中はインスリン分泌が抑えられています。糖質をたっぷり含んだスポーツドリンクを飲んでも大きく血糖値が上昇することは少なく、インスリンが無くてもGLUT4が細胞の表面で出てきて、ブドウ糖を取り入れてくれます。

私が子供の頃はシャトルランというものはやった覚えがないのですが、今の子供のスポーツテストではシャトルランで持久力を測定しているようです。

今回の研究では、成人男性がシャトルランを行うのですが、スポーツテストのものとはちょっと違います。細かいことは省いて、高強度の運動を行い、その前と途中にスポーツドリンクを摂取しています。それによる血糖値の変動、インスリン分泌などを測定しています。(図は原文より)

上の図はこの研究のプロトコールです。簡単に説明すると、15分間高強度の運動を行い、3分休憩し、また15分間運動を繰り返します。合計75分間行った後、3分休憩し、今度は疲弊するまで高強度の運動を行い、疲労困憊になったら終了です。スポーツドリンクは最初の運動開始直前に5ml/kg、15分後の運動後に2ml/kgを飲みます。それを75分間まで繰り返します。最後の疲労困憊後は飲みません。

スポーツドリンクの糖質は6.9%です。参加者の男性は平均年齢24.8歳で、平均の体重が80.7kg、身長は180cmだったので、6.9%のスポーツドリンクを5ml/kgということは、約400mlで、糖質は約28gです。2ml/kgは約160mlで、糖質約11gです。

上の図は血糖値です。縦軸の血糖値の単位は日本のものではないので、18を掛ければ日本と同じになります。5と示された場合、それは血糖値90を意味します。実線はスポーツドリンク摂取群、点線はコントロールで人工甘味料で味付けをしたドリンクを飲みます。

そうすると、コントロール群では運動を始めるとやや血糖値は上昇傾向ですが、100を超えない程度までです。スポーツドリンク群は30分後にピークとなり、120ぐらいまで上昇をしています。恐らく運動直前のスポーツドリンクの効果でしょう。その後下降しますが、終了時に再度上昇しています。100ちょっとぐらいでとどまっていますが。

上の図はインスリン値です。スポーツドリンクをいっぱい飲んだにもかかわらず、運動中はほぼ一定です。しかし、運動終了後15分からスポーツドリンク群ではインスリン値が跳ね上がります。約2倍程度まで増加しています。終了時にはスポーツドリンクを飲んでいないにもかかわらず、終了後のインスリン上昇はそれ以前に飲んだスポーツドリンクの糖質による、血中のブドウ糖を取り入れるためだと考えられます。

ということは、GLUT4がインスリンが無くても運動により細胞表面に現れているのは、本当に運動中だけであり、運動を終了するとその直後から、そそくさとGLUT4は引っ込んでしまうのかもしれません。それでは血糖値が上昇してしまうので、あわててインスリンが分泌されるのではないでしょうか?

そうであると考えると、食事の直後に運動することは確かにインスリン分泌を刺激することなく血糖値上昇を抑えると思われますが、運動を終了すれば、その直後から血糖値は上昇し、インスリンがたっぷり出てしまう可能性はあります。食後30分の運動は、30分間血糖値上昇とインスリン分泌を遅らせるだけなのかもしれません。調べてみないと確かなことは言えませんが。

以前の記事「糖質制限と食後ウォーキングを組み合わせると…?」で書いたように、食事が重要であり、運動の効果は二の次であるかもしれません。「食事の前の運動により血糖値低下効果はあるのか?」で書いたように、長時間の運動後でも、糖質摂取ではインスリンは増加します。また、運動強度や個人差によっても違いはあると思われます。

いずれにしても、食後であっても血糖値スパイクを起こさない食事をすることが重要です。

「Influence of ingesting a carbohydrate-electrolyte solution on endurance capacity during intermittent, high-intensity shuttle running」

「断続的な高強度シャトルラン中の持久力に対する炭水化物 – 電解質溶液摂取の影響」(原文はここ

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