PPI(プロトンポンプ阻害薬)は様々な死亡率を上昇させるかもしれない

胃潰瘍や逆流性食道炎などで非常に良く処方される薬のPPI(プロトンポンプ阻害薬)は、様々な病気を引き起こすとも考えられています。(「PPI(プロトンポンプ阻害薬)の暗黒面 その2 PPIは多くの病気を引き起こす可能性がある」「PPI(プロトンポンプ阻害薬)は胃がんのリスクを高める」「PPI(プロトンポンプ阻害薬)は心筋梗塞のリスクを増加させるかもしれない」など参照)

このような様々な病気を引き起こせば当然それによる死亡も起きると思われます。PPI(プロトンポンプ阻害薬)が死亡率を上げるというのは以前にも記事にしました。(「PPI(プロトンポンプ阻害薬)と死亡リスク 本当ならアウト!」参照)今回は別の報告です。

PPIの超過死亡を計算しています。つまり、PPIを飲んだことで増加した死亡率を表していると考えられます。アメリカの退役軍人省のデータベースを用いた研究で、PPI(15万7,625例)またはH2ブロッカーという胃酸を抑える別の薬の新規服用者(5万6,842例)を分析しました。

そうすると、PPI服用1,000人当たりの超過死亡は45.20だったのです。4.5%です。

10年間の追跡調査中のプロトンポンプ阻害薬(PPI)使用に関連した死因は、循環器系疾患1,000人当たり17.47、、がんで12.94、感染症および寄生虫症で4.20、泌尿器生殖器系疾患で6.25となりました。

また、PPIを服用した累積期間別では次のようになりました。(表は原文より改変)

期間(日数)循環器系疾患がん泌尿器生殖器系疾患感染症および寄生虫症
0〜1201(参照)1(参照)1(参照)1(参照)1(参照)
121〜2401.23(1.12〜1.34)1.13(0.97〜1.31)1.09(0.93〜1.29)1.03(0.62〜1.71)0.90(0.57〜1.43)
241〜3601.47(1.34〜1.60)1.34(1.15〜1.55)1.19(1.01〜1.39)1.20(0.72〜1.99)0.94(0.59〜1.49)
361〜4801.63(1.49〜1.79)1.37(1.17〜1.59)1.25(1.06〜1.48)1.30(0.77〜2.18)0.96(0.60〜1.55)
481〜6001.71(1.56〜1.87)1.46(1.25〜1.70)1.25(1.06〜1.48)1.48(0.88〜2.48)0.90(0.56〜1.45)
トレンドのP値<0.001<0.0010.0020.0050.93

上の表のように感染症は別として、PPIの使用期間が長くなるほど死亡リスクは高くなるようです。

細かい死亡原因を見ると、心血管疾患で1,000人当たり15.48人、慢性腎臓病で4.19人でした。

そして、PPIの本来の適応がないと思われる人、つまり胃酸を抑制する薬を処方するための消化管適応の記録がな人だけを分析しました。心血管疾患で1,000人当たり22.91、慢性腎臓病で4.74、上部消化管がん3.12と、PPIによる超過死亡と関連することが示唆されました。

PPIの処方を受けるときに誰も死亡率が増加することなど説明されてはいないでしょう。「この薬を使うと10年間で4.5%死亡する確率が増加しますよ」なんて言われたら、誰も服用したがらないでしょう。

しかし、薬は安全なものではありません。以前の記事「薬の併用は新たな病気を作り出すかもしれない」で書いたように、現在では複数の薬を使用していることも非常に多いです。その併用による有害性も考えなければなりません。

以前の記事「糖質制限と逆流性食道炎の改善」で書いたように、逆流性食道炎の非常に多くの人は糖質制限で改善すると考えられます。わざわざ死亡率を増加させる必要はありません。PPIは短期使用にしましょう。

「Estimates of all cause mortality and cause specific mortality associated with proton pump inhibitors among US veterans: cohort study」

「米国の退役軍人におけるプロトンポンプ阻害薬に関連したすべての死亡原因および特異的死亡の推定:コホート研究」(原文はここ

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コメント

  1. keic より:

    清水先生、いつも興味深い記事をご投稿いただき、ありがとうございます。
    とても参考になり、お陰様でHbA1cの数値も改善され、大変感謝しております。
    私は2月よりスーパー糖質制限をしており、糖質制限による、逆流性食道炎の改善を期待していたのですが、担当医には、胃の形からの逆流性食道炎だから、糖質制限しても治りませんと言われております。
    確かに、相変わらず食後のげっぷが治りません。
    やはり胃の形からのものは改善は望めないのでしょうか。
    お忙しいところ大変恐縮ですが、ご教授いただければ幸いです。
    よろしくお願いいたします。

    • Dr.Shimizu より:

      keicさん、コメントありがとうございます。

      胃の形というのはよくわかりませんが、物理的に噴門部が逆流を起こしやすい場合には
      糖質制限だけでは改善は難しい可能性はあるでしょう。
      ただ、糖質過剰摂取の状態よりは良いとは思います。

  2. keic より:

    お忙しい中ご回答いただき、ありがとうございます。
    次回、担当医に胃のどの部分なのか聞いてみます。いずれにせよ、糖質制限をやっていれば間違いないということですね!
    これからもしっかり食事の管理をして行きたいと思います。

    末筆ながら、清水先生の益々のご活躍をお祈り申し上げます