いくつかの薬には自殺のリスクがあると言われています。人間本来のメカニズムの一部だけを薬で無理やりに活性化したり、ブロックしたりするのですから、何が起きても不思議ではありません。
今回の研究では、血圧の薬で最も使われているアンギオテンシン受容体阻害薬(ARB)と自殺の関連を分析しています。
自殺とARBへの曝露との関連性を、アンジオテンシン変換酵素阻害薬 (ACEI)と比較検討しました。症例とは、ACEIまたはARBの処方箋を受け取ってから100日以内に自殺した患者と定義しています。18年間の研究期間にわたり、自殺が記録された日の前100日以内に ACEIまたはARBに曝露した964人の症例と3856件の対照が分析の対象です。8割近くは男性で、年齢の中央値は76歳でした。予想どおり、症例では併存疾患と向精神薬の使用がより一般的でした。たとえば、症例は対照よりも、アルコール乱用や不安障害または睡眠障害などが多く、抗うつ薬、抗精神病薬、ベンゾジアゼピン、気分安定薬を使用する傾向が高くなっていました。
分析をすると、ACEIと比較して、ARB曝露は自殺リスクは1.63倍になっていました。自傷行為の履歴のある人を除外しても自殺の可能性は1.60倍でした。もちろん、併存疾患や薬剤が関連していた可能性はあります。
もう一つ研究を見てみましょう。デンマークで、1991年から1998年の間に特定された自殺既遂者743人と、年齢と性別を一致させた対照群14,860人を対象に、薬で自殺の可能性がどうなるかを分析しました。様々な血圧の薬の中で、有意に自殺の可能性が高くなったのでは現在使用のARBだけで、3.52倍になっていました。(ここ参照)
もちろん、このような結果を否定する研究もあるでしょう。最近では、GLP-1受容体作動薬の自殺リスク増加(「糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その2 自殺リスク」「GLP-1受容体作動薬の自殺念慮のリスク」参照)の懸念が示されると、それを否定する論文がいくつも出ました。製薬会社は都合の悪いことがわかってしまわないように、必死なのでしょうね。利益相反なんてお構いなしです。
ARBが自殺の原因になるかどうかは、現在のところ不明です。しかし、必要がないのであれば、薬なんて飲み続けない方が良いでしょう。
血圧が高くなってくるようであれば、それは食事が間違っています。糖質制限をして、そしてたっぷりのマグネシウムを摂取しましょう。
「Association Between Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors, Angiotensin Receptor Blockers, and Suicide」
「アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬と自殺との関連性」(原文はここ)
「人間本来のメカニズムの一部だけを薬で無理やりに活性化したり、ブロックしたりするのですから、何が起きても不思議ではありません。」
薬ってこういう物だと私も感じます。
薬剤師さんのご意見伺いたいものです。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
薬剤師さんに聞いても、ほとんどの医師とあまり変わらない意見だと思います。
薬好き、薬の効果を信じている薬剤師さんも多いのではないでしょうか?