段々と日本だけでなく世界で新型コロナウイルスに対して、飽きてきたのか、慣れてきたのか、人々が外に出始めています。過去のパンデミックはどう終息したのかを見てみると、社会的な終息、つまり病気に対する恐怖心が薄れてきて終わることもあるようです。(この記事参照)マスコミもだんだんと新型コロナの話題が少なくなってきています。恐怖心だけ煽るマスコミが新型コロナについて全く取り上げなくなれば、もしかしたら日本では終息するのかもしれませんね。
ということで、今回の記事は新型コロナとは関係のない内容です。
以前の記事「糖尿病はグルカゴンの反乱なのか?」で書いたように、ちょっと前に話題になった「糖尿病はグルカゴンの反乱だった」という本では、糖尿病の原因はインスリンの欠乏よりもグルカゴンの過剰が原因だと言っています。
2型糖尿病の患者は、インスリン分泌が少なすぎる、またはインスリンが効きにくくなるだけでなく、グルカゴンも多すぎるため、血糖コントロールが低下します。では、グルカゴンが多くなるのはどうしてでしょう?
今回の研究では2型糖尿病の人と非糖尿病の人のすい臓の細胞を使って研究されました。グルカゴンはすい臓のα細胞から放出され、血糖値を上げます。その分泌は、インスリンとソマトスタチンを介したα細胞固有のグルコース感知とパラクリン(細胞間におけるシグナル伝達)制御によって調節されています。 (図は原文より)
上の図はグルカゴンを分泌するα細胞を分離して、血糖値が1mM(18mg/dL)、7mM(126mg/dL)、10mM(180mg/dL)でグルカゴン分泌がどうなるかを見ています。図のbで示すように、糖尿病があっても無くても、1mMの低血糖ではグルカゴン分泌は増加しますが、7mMではもっとも分泌が少なくなります。ただ、驚くことに糖尿病だけでなく非糖尿病でも10mMの高血糖でグルカゴンの分泌が増加していました。つまり7mMを最低値としたV字の変化をしているのです。つまり、α細胞の固有の分泌のメカニズムは血糖値の変化に対して、このようなV字だということです。
上の図はすい臓のα細胞だけでなく、全体の細胞での血糖値による変化です。左側が非糖尿病、右の赤いのが2型糖尿病です。横軸が血糖値です。縦軸がグルカゴン分泌です。非糖尿病では1mMでグルカゴン分泌が増加していますが、7mMでグルカゴン分泌が抑制され、10mMでも抑制されています。その横の水色と緑色のバーはα細胞のソマトスタチンまたはインスリンの受容体を阻害した場合のものです。どちらの受容体を阻害しても高血糖なのにグルカゴン分泌は増加してしまいました。右の糖尿病の場合は10mMでグルカゴン分泌が抑制されませんでした。
グルカゴン分泌は低血糖から正常血糖の範囲では、周囲のグルコース濃度によって調節されるというのがα細胞の固有のメカニズムであり、その分泌が調整されていますが、高血糖の範囲ではパラクリン制御が重要であり、その阻害がグルカゴン分泌増加の原因と考えられます。2型糖尿病において高血糖でグルカゴン分泌が増加しているのはインスリンやソマトスタチンに対するα細胞の感受性の低下、つまり、α細胞のインスリン抵抗性、ソマトスタチン抵抗性によるものだということを示唆しています。
また、驚くことに7mMでの最小分泌と1mMグルコースでの最大分泌との間のグルカゴン分泌の違いは、わずか2倍の違いしかありません。β細胞と比較してダイナミックレンジは非常に小さいです。グルカゴンはわずかな違いで大きな効果を生んでいるようです。
やはり、糖尿病の原因はインスリン欠乏ではなく、グルカゴンの反乱(過剰)だというのは違うと思われます。インスリン欠乏またはインスリン抵抗性がグルカゴンのα細胞に起こって、それによるグルカゴンの制御が失われたのが原因であり、インスリン抵抗性の原因は糖質過剰摂取による頻回の高血糖です。
糖尿病にはやはり糖質制限でしょう。
糖質過剰症候群
「Paracrine control of α-cell glucagon exocytosis is compromised in human type-2 diabetes」
「α細胞グルカゴンエキソサイトーシスのパラクリン制御は、ヒト2型糖尿病で損なわれる」(原文はここ)