家族性高コレステロール血症(FH)では、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を減らすことが推奨されています。
「家族性高コレステロール血症診療ガイドライン 2017」でも次のように書かれています。
FH に対しても食事療法は実践すべきであり、その方法は他の脂質異常症に準ずる。すなわち、日本動脈硬化学会により高コレステロール血症患者が食事療法で注意する点として挙げられた①飽和脂肪酸4.5%以上 7 %未満、②トランス脂肪酸の摂取を減らす、③コレステロール200 mg/ 日以下を指導する。
しかし、FHのLDLコレステロール値の数値目標さえ明確なエビデンスがあるわけではなく、まして食事療法に関して臨床研究など行っているわけではないでしょう。つまり、根拠もなく食事療法を推奨しているのです。このことはバランスの良い食事が健康的だ、という根拠のない推奨と同じです。
糖質制限を行っている人がすでに知っているように、低脂肪の食事は、高炭水化物、高糖質の食事になってしまう可能性が高くなります。低脂肪を意識しなくても通常の食事は高糖質です。さらに以前の記事「コレステロールを恐れ過ぎてはいけない LDLコレステロール値が低いほど死亡率が上がる!」で書いたように、高コレステロールの人の方が低コレステロールの人よりも長生きであるという研究もあります。
FHの人は本当にLDLコレステロールが高いことが有害なのでしょうか?(図は原文より)
上の図は左側がFHの中性脂肪値の違いを示してます。青いバーのFHは空腹時の中性脂肪値が低く、赤いバーのFHは中性脂肪が高い人です。LDLコレステロールに違いはありません。そこで、右側の図を見ると、赤いバーが青いバーの約3倍の値を示しています。これは心筋梗塞を発症した人の割合です。つまり、FHではLDLコレステロールではなく中性脂肪が高いと心筋梗塞のリスクが非常に高いのです。(もちろんFHだけではありませんが)
上の図は青いバーが冠動脈疾患のないFH、赤いバーが冠動脈疾患のあるFHです。冠動脈疾患の有無にかかわらずLDLコレステロールの差はありません。しかし、Lp(a)(リポタンパク(a))を見てみると冠動脈疾患のあるFHでは、冠動脈疾患のないFHの約3倍です。ここでもLDLコレステロールは関連していません。Lp(a)と糖質制限の関係ははっきりしていませんが、私の知っている糖質制限を行っているFHの方のLp(a)は12前後です。もちろんその方は心血管疾患は合併していません。
糖質制限(結果としてカロリー制限にもなっていましたが)により、76%の人でLp(a)が11%以上も大幅に減少したという研究はあります。(この論文参照)
糖質制限を行うと、小さな危険なsdLDLは低下、HDLは増加、中性脂肪は低下します。これらは全て心血管疾患に有利なことばかりです。FHでも中性脂肪を低下させることが大きな利益をもたらすはずです。LDLコレステロールは関連していません。
FHでもそうでなくても、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を減らす必要はありません。
さらに次回以降ではインスリンとの関連も見てみます。つづく…
「Dietary Recommendations for Familial Hypercholesterolaemia: an Evidence-Free Zone」
「家族性高コレステロール血症のための食事の推奨事項:エビデンスフリーゾーン」(原文はここ)