新型コロナウイルスの死者数増加とアビガン

最近新型コロナウイルスの陽性者、重症者、死亡者の数が増加していきました。GoToトラベルから外されてしまった夜の札幌は街が死んでしまいそうです。昼間でも平日より人が少ない感じです。街が死ねば人は死にます。

北海道は今月27日までを集中的な対策期間としてススキノを中心に営業の時間短縮要請などをしてきました。この期間頑張ればその後楽しいことが待っている?案の定対策期間は延長です。すでにススキノは閑散としており、PCR検査陽性者はススキノではほとんどいないでしょう。

大阪は重症者が100人を超えて全国一です。知事さんがイソジンうがいを強く推奨し、重症者予防になるような、ウソのようなホント(?)の話をしていましたが、もしかしたらイソジンで正常な口腔内細菌叢が破壊されて、余計に新型コロナウイルスの侵入を促進してしまったのでしょうか?大阪府民は知事を信用して、一生懸命イソジンうがいをしたのかどうかはわかりませんが、重症者が急増している今だからこそ、イソジンうがいの効果のデータを出してほしいですね。

全国的にも我慢の3週間なのか、勝負の3週間なのかは知りませんが、その後忘年会ができるような素晴らしい未来が待っているのでしょうか?冬の本番はこれからです。

令和2年11月20日の人口動態統計速報(下の図)では今年の9月までの日本全体の死亡数(赤い線)の推移はここ2年間(青い線)と比較しても変化はありません。

上の図からわかるように、夏場の死者数は少なく、10月ころから増加し始め、冬場が最も多く、6月と1月では4万人程度の違いがあります。つまり秋から冬にかけて死亡数が増加するのは通常のことです。その冬場の死者数の増加の大きな要因の一つは感染症でしょう。インフルエンザをはじめ、肺炎等はやはり冬場が多いと考えられます。それが今年は新型コロナにとって代わっただけです。

例えば、昨日の北海道の新型コロナウイルス感染に関連する死亡者数は4名でしたが、その内訳は100代女性1人、80代女性1人、70代女性1人、非公表1名でした。一昨日の死亡者数は9名と多かったのですが、その内訳は、90代男性2名、80代男性3名、80代女性1名、70代男性1名、70代女性1名、非公表1名です。

これまでの毎年の通常の状況と何が違うのでしょうか?高齢者が何らかの感染症で亡くなることは異常な状況ではありません。しかも、現在はPCR陽性であればこの新型コロナウイルス関連の死亡に含まれてしまいます。死因が本当に新型コロナかどうかは疑問です。

高齢者は重症化しやすいのは当然のことでしょう。高齢者の感染者の数が増えれば、重症者は増加するでしょう。高齢者の重症者が増えれば死者数は増加するでしょう。しかし、これまでの肺炎等に行われていた医療レベルと、今回の新型コロナウイルス感染に対する医療レベルは同じなのでしょうか?昨年まで冬の数か月の間にインフルエンザで亡くなったおよそ3,000人はほとんど全員が集中治療、人工呼吸という道筋を通っていたでしょうか?これまでの肺炎等で高齢者に対してはたして濃厚な集中治療や人工呼吸まで行っていたでしょうか?これについては集中治療室に昨年入った人の年齢や原因疾患と、今年の状況を比較しないとわかりません。

さて、世界的にはワクチン開発が進み、各社有効性の喧伝に必死に見えます。安全性が担保されていないワクチンは打ちたいと思いませんが、期待している人もいるでしょう。

治療薬に関してはWHOがレムデシビルについて、入院患者への投与は勧められないとの指針を公表しました。(ここ参照)

最近話題に出てこない「アビガン」はどうなっているでしょうか?まだ、有効性や安全性がはっきりしない状態で、承認もされていないのに富士フィルムは140億も貴重な税金から儲けています。使えるかどうかもわからないのに日本政府は備蓄しているのです。

富士フイルム取締役、アビガン「備蓄要請で売り上げ140億円寄与」

2020年11月10日 日本経済新聞より(記事はここ

富士フイルムホールディングス(4901)の岡田淳二取締役は10日、同日開いた2020年4~9月期の決算説明会で、新型コロナウイルス感染症の治療薬候補「アビガン」について「備蓄要請を受けているので140億円弱の売り上げ(寄与)になる」と述べた。さらに海外でもアビガンで「数十億円の売り上げ増を見込んでいる」とも説明した。

富士フイルム子会社の富士フイルム富山化学はインドの後発薬大手ドクター・レディーズ・ラボラトリーズとアラブ首長国連邦(UAE)の医療物資販売会社グローバル・レスポンス・エイド(GRA)に海外でのアビガンの製造・販売権を供与している。岡田取締役は「サポートするような形で、2社と協力しながら海外展開を図りたい」と語った。

 

また、日本では「アビガン」が10月16日に新型コロナに対する治療薬として承認申請が出されました。当初早期に承認され、11月中には承認されると一部では言われていましたが、安部さんの力が働かなくなったのでしょうか、11月中の承認はなさそうです。

さて、このアビガン、本当に安全でしょうか?

藤田保健衛生大学が「ファビピラビル観察研究」というのをやっていて、5月に中間報告を出しています。最終報告はまだ出ていません。もちろん、5月の状況と現在の状況では違いが大きいかもしれませんが、その中間報告を見直してみましょう。ファビピラビル投与開始時に、酸素投与を必要としていなかった患者を軽症、自発呼吸だが酸素投与を必要としていた患者を中等症、人工呼吸や ECMO を必要としていた患者を重症と定義しています。(2020年5月15日までのファビピラビル投与患者2,158例のデータ)

軽症のうち、なんと5.1%が死亡していますし、4.2%が症状が増悪しています。

ではCOVID-19に関するレジストリ研究の9月4日までの約6,000人のデータを見てみましょう。先ほどとは重症の定義が異なり、入院時に酸素投与、人工呼吸器管理、SpO2 94%以下、呼吸数24回/分以上 のいずれかに該当する場合に入院時重症と分類しています。(ここ参照)

ファビピラビル観察研究では薬投与時の状態で分類していて、入院時の分類とは異なるので、一概にこの2つのデータを比較することは難しいかもしれません。しかし、それでも6月5日以前のデータでは軽症と中等症の2.6%しか死亡していません。

7月7日までの約2,600人のデータは以下です。(ここ参照)

酸素が必要がなかった人が死亡した割合は0.4%でしかありません。アビガン(ファビピラビル)は酸素不要の人の57.5%に投与されていました。死亡した人の何%に実際に投与されていたのかは不明ですが単純に57.5%と考えたら4人に投与されています。そうすると、酸素不要な人でアビガンを投与されていない人の死亡率は0.17%と推測できます。

ファビピラビル観察研究では酸素が不要な人は軽症と分類され、その5.1%が死亡していました。非常に大きな差です。つまり、アビガンは酸素を必要としない軽症者を12倍~30倍死亡させる可能性があるのです。

 

上の図は再びファビピラビル観察研究のものです。年代別の転帰です。アビガン投与の40代で1.8%が死亡しています。50歳未満では合計して6人死亡しています。50代では2.4%、60代では10.7%で、70歳未満では53人の死亡です。上のCOVID-19に関するレジストリ研究の9月4日までの約6,000人のデータをもう一度見てみましょう。

50歳未満の中で軽症から重症者まで合計して6人しか死んでいません。偶然、アビガン投与の人数と一致しています。もしかしたら全員がアビガンを投与されているのかもしれません。50~69歳では55人の死亡です。ファビピラビル観察研究では53人が死亡です。もしかしたらほとんどがアビガン投与かもしれません。

データの時期が大きく違い、重症化率や死亡率が減少した現在のデータと比較するのは意味がないかもしれませんが、厚労省の重症者の割合のデータは次のようです。(ここ参照)

重症者でさえ40代では0.7%です。夏前まではもっと割合が多かったとして2倍にしても重症者は1.4%です。死亡率ではもっと低いでしょう。ファビピラビル観察研究では40代の死亡率は1.8%です。

これでもアビガンは安全な薬だと言えるでしょうか?税金を使って備蓄すべき薬でしょうか?アビガンの承認の審査は、透明性を持って、ちゃんと検証できる審査になっているのでしょうか?

2 thoughts on “新型コロナウイルスの死者数増加とアビガン

  1. 感染症の原因菌やウィルス間の生存競争もあるでしょうから、マスクや手洗いなどの感染症対策が徹底されてることで、従来の感染症が下火→新型コロナウィルス蔓延の好条件になっている、
    とうことなのでしょうか。
    (上記の今年の9月までの日本全体の死亡数のグラフを見て思いました。いつも貴重な情報ありがとうございます。)結局主役が変わっただけで、経済を犠牲にしてまで新型コロナウィルスを特別扱いしなくてもよい、のかもしれませんね。   

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      海外の旅行者がいない状態なので、そもそも流入してくるインフルエンザウイルスなど自体がほとんどないことが一番大きいのではないでしょうか?
      海外のロックダウンもそうですが、国や地方が対策をとるのはいつもピークを過ぎたあたりですので、対策したら何となく少し陽性者が落ち着いてしまいます。
      対策で落ち着いたのではなく、自然とピークを過ぎたから落ち着いただけの話だと思います。
      経済を止めて、補償なしという状況をいつまで続けるのでしょうかね?

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