糖質制限とカロリー制限をされている方からコメントをいただきました。様々なトライをしていて非常に興味深いです。
糖質制限+カロリー制限の結果
9月より糖質制限に加えてカロリーも制限する実験中です。
これまで、3年弱の糖質制限で標準体重まで減量しましたが、私は元々痩せ型なので、標準体重は私にとっては多すぎるのではないかと言う考えから20歳代のころの体重に戻すと何か変化があるのかを知りたくなり実験しています。
カロリー制限開始直後の検査(9/5)→2か月後の検査(11/7)→さらに2か月後の検査(1/16)を比べてみると
空腹時血糖値、HbA1cともに下がっています。
しかし、カロリーを下げるために朝食を比較的コレステロールの多いイカを多く含むシーフードミックスに変更したことにより、LDL-Cが高くなりました。一旦下がった中性脂肪も高くなっています。
私はLDL-Cが食品由来のコレステロールに左右され、それだけならまだ良いのですが、LDL-Cが高くなると(正常値の範囲ではありますが)中性脂肪も高くなってしまいます。
■カロリー制限食の内容について
カロリー調整のために朝食の豚ロース100gをシーフードミックス150gに置き換えました(豚ロース以前は玉子3個でした)。
蛋白質を確保しつつ、低カロリーにするための変更です。
■コレステロールについて
朝食での摂取コレステロール量は
玉子3個>シーフドミックス150g>豚ロース100g
ですが、一般的には食品由来のコレステロールは、検査値には影響しないと言われていますが、私は、LDL-Cの検査値もコレステロール摂取量に連動して上下します。
肝臓でのコレステロール産生の調節ができないようですが、何が原因なのでしょうか。
■中性脂肪について
LDL-Cが高値でも中性脂肪が十分に低値であればよいのですが、私の場合はLDL-Cと連動して中性脂肪も上がってしまいます。
LDL-Cと中性脂肪には関連があるのでしょうか。
■血糖値、HbA1cについて
カロリー制限中の摂取糖質量は42.2→51.4と増加していますが、逆に空腹時血糖値もHbA1cも低下しました。
カロリー制限も血糖値を改善するかもしれません(ただし、糖質制限併用の場合)。
★検査値の変化
9/5→11/7 →1/16
LDL-C 149 → 161 → 177
HDL-C 77 → 77 → 84
TG 59 → 49 → 82
AST 19 → 19 → 20
ALT 18 → 16 → 19
γGT 16 → 16 → 18
血糖値 104 → 95 → 85
HbA1c 5.8 → 5.8 → 5.7
体重 56.1 →54.8 →54.6
★摂取カロリーと糖質量の日平均
8月 → 9月 →10月 →11月 →12月
摂取糖質量 42.4→47.7→47.0→49.0→51.4
摂取カロリー 1800→1690→1630→1693→1723
★食材とコレステロール、中性脂肪の変化
朝食の主材を玉子→豚ロース→シーフドミックスに数か月ごとに変更した時のコレステロールと中性脂肪の変化
検査日:2019/2/16
半年ほど朝食に玉子3個
コレステロール720
LDL-C 198
TG 97
検査日:2019/7/27
前回検査日より朝食に豚ロース100g
コレステロール 61
LDL-C 132
TG 86
検査日:2021/1/16
前回検査日より朝食にシーフドミックス(イカ、エビ、アサリ)150g
コレステロール244
LDL-C 177
TG 82
カロリー制限開始直後の検査(9/5) 朝食に豚ロース100g
LDLコレステロール149、HDLコレステロール77、中性脂肪59、血糖値104、HbA1c5.8
2か月後の検査(11/7) 朝食に豚ロース100g
LDLコレステロール161、HDLコレステロール77、中性脂肪49、血糖値95、HbA1c5.8
さらに2か月後の検査(1/16) 朝食にシーフドミックス(イカ、エビ、アサリ)150g
LDLコレステロール177、HDLコレステロール84、中性脂肪82、血糖値85、HbA1c5.7
ということになっています。LDLコレステロールと中性脂肪値が連動しているのではないかと考えているようですが、結構なばらつきがありこれだけのデータでは相関しているとは言えません。例えば、7/27ではLDLコレステロール132ですが、中性脂肪は86です。1/16ではLDLコレステロール177、中性脂肪82なので、他の要素が関係していると思われます。
検査の前日に禁酒していたかどうかがわからないのですが、もし検査前日に飲酒している場合、それが影響して中性脂肪値が上がることがあります。以前の記事「糖質制限をしても中性脂肪値が低下しない原因の一つはアルコールである」で書いたように、飲酒14時間後でも影響を受けることもあります。もし正確なデータを得たいのであれば前日は完全に禁酒すべきでしょう。
さらに、朝食について大まかに栄養素を見てみると、下のようです。
シーフードミックス(イカ、エビ、アサリ50gずつ)150g
エネルギー 108kcal
タンパク質 22.85g (91.4kcal)
脂質 1.05g (9.45kcal)
炭水化物 0.3g (1.2kcal)
脂肪酸 飽和 0.13g
脂肪酸 一価不飽和 0.07g
脂肪酸 多価不飽和 0.23g
コレステロール244mg
豚肉ロース100g
エネルギー 263kcal
タンパク質 19.3g (77.2kcal)
脂質 19.2g (172.8kcal)
炭水化物 0.2g (0.8kcal)
脂肪酸 飽和 7.84g
脂肪酸 一価不飽和 7.68g
脂肪酸 多価不飽和 2.21g
コレステロール61mg
タンパク質量はほとんど同じでもエネルギー量、脂質量が大きく異なっています。しかし、10月の摂取エネルギー量は1630kcal、12月は1723kcalですので、10月では朝食以外の食事で1367kcal、12月では1615kcalとなります。糖質のエネルギーを引いても10月は1179kcal、12月は1409kcalを朝食以外に摂っているのです。タンパク質を1日に100g摂っていたとして、朝食で約20gなので、朝食以外では80g程度でしょう。その分を引くと朝食以外で、10月で859kcal(95g)、12月で1089kcal(121g)脂質を摂っていたことになります。
朝食以外の食事の要素が大きすぎて、朝食の変更だけで何かを言うことは難しいかもしれません。また、摂取エネルギーはあくまで摂取した量であり、食事などによって吸収が異なる可能性があります。食事の変化は胆汁の再吸収に影響があるのかもしれません。
他にも、「糖質制限ではどうしてHDLコレステロール値が増加し、中性脂肪値が低下するのか? その2」で書いたように、インスリンはSREBP-1の転写を促進し、脂肪酸の合成を促進し、中性脂肪を増加させます。1回のタンパク質量はわかりませんが、タンパク質によってインスリン分泌が大きく増加した可能性はあるかもしれません。脂肪酸の合成とコレステロールの合成は同じアセチルCoAを原料とするので、SREBP-1とSREBP-2の活性化のバランスによってコレステロールや脂肪酸の合成量は変化するでしょう。コレステロールをたくさん摂取するとSREBP-2は抑制されて、SREBP-1の方に傾いているのかもしれません。
以前の記事「食習慣とLDLコレステロール」で書いたように、何らかの食品に対してのLDLのレスポンダーは存在していると思います。その中で魚レスポンダーがいることも書きましたが、もしかしたら魚だけでなくシーフードのレスポンダーもいるのかもしれません。シーフードに共通した何らかの成分が影響してLDLコレステロール値が上昇する可能性は否定できません。
ある研究では1日20g以下、または摂取エネルギーの5%以下の糖質制限を3週間したときに、ほとんど人がLDLコレステロール値が増加していました。(図は原文より)
上の図は糖質制限後のそれぞれの変化です。LDLコレステロールは5%~107%の増加まで個人間で大きく異なりました。平均44%増加でした。ただし、これは短期的な変化であり、長期的なことはここには表れていません。しかし、長期的にもLDLコレステロールが増加したままの人も多いでしょう。
いつも書いていますが、LDLコレステロールが高いことは決してそのものが悪いことではないと思っています。LDLの質が重要ですし、実際にはどうしてLDLが高くなったり低くなったりするのかは不明なことも多いと思います。そこのところを次回以降の記事で少し考えてみたいと思います。
「Effect of low carbohydrate high fat diet on LDL cholesterol and gene expression in normal-weight, young adults: A randomized controlled study」
「正常体重の若年成人におけるLDLコレステロールと遺伝子発現に対する低炭水化物高脂肪食の影響:ランダム化比較試験」(原文はここ)