心血管リスクの高い人はオメガ3脂肪酸値を上げれば有害な心血管イベントを減少させられるか?

心血管疾患の予防目的で毎日オメガ3の薬を飲んでいる人もいるでしょう。しかし、本当に効果があるのでしょうか?

今回の研究では毎日高用量(4g)のオメガ3製剤を飲んでその後の心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中などの心血管イベントの発生率を比較しました。

対象は、動脈硬化性心血管疾患の既往があるか(二次予防)、糖尿病など心血管疾患のリスク因子がある人(一次予防)13,078人で、オメガ3のEPA/DHA製剤投与群とコーン油投与群(6539例、対照群)に分けました。

血清脂質の条件として、スタチンによりLDLコレステロールが100mg/dL未満、ないしは最大耐容量のスタチンが投与されていることに加え、中性脂肪180~500mg/dL、HDLコレステロール低値(男性42mg/dL未満、女性47mg/dL未満)にある場合としています。

投与後1年後のEPAの血中濃度に応じて3つのグループに分けられ、その後40か月以上追跡しています。

ベースラインでは年齢62.5歳、BMI 32.5、合併症は冠動脈疾患の既往44.6%、糖尿病70.2%、高血圧88.1%などでした。LDLコレステロール76mg/dL、中性脂肪240mg/dL、HDLコレステロール36mg/dL、CRPは0.21mg/dLでした。(図は原文より)

上の図は左は最も血中のEPAが高くなったグループとコーン油の対照群との心血管イベント発生の割合を示しています。右はDHAが最も高くなったグループとの比較です。

主要評価項目である複合心血管イベントの発生は、EPA/DHA群11.1%、対照群11.0%で、最も血中のEPAが高いグループでのハザード比は0.98。つまり、オメガ3製剤で全くリスクが減少していません。

血中のEPAおよびDHAの値にかかわらず、コーン油と全く違いは認められていません。

上の図は血中のEPAおよびDHAの変化量と心血管イベントリスク比ですが、これもコーン油と何ら違いがありません。

このSTRENGTH試験では、安全性に関しては消化器系の症状についてEPA/DHA群で多くなったのですが、それよりも絶対数は少ないですが、心房細動のリスクがEPA/DHA群で増加しました。

上の図の青い線がEPA/DHA群、オレンジの線がコーン油の対照群です。心房細動が69%増加しています。

これでは何のためにオメガ3製剤を内服しているのかわかりませんね。

 

 

このオメガ3製剤はアストラゼネカの製品ですが、この結果によりアストラゼネカは第3相試験を中止しました。(ここ参照)

他のオメガ3製剤ももう1回試験をやったら効果がないことがわかるかもしれませんね。もちろんオメガ3脂肪酸は人間にとって必要な栄養素です。しかしそれは薬やサプリという形で必要かどうかは疑問です。魚が一番ではないかと思います。恐らくオメガ3製剤が心臓を助けるという証拠はないでしょう。

 

「Association Between Achieved ω-3 Fatty Acid Levels and Major Adverse Cardiovascular Outcomes in Patients With High Cardiovascular Risk:A Secondary Analysis of the STRENGTH Trial」

「心血管リスクの高い患者における達成されたω-3脂肪酸レベルと主要な有害な心血管転帰との関連」(原文はここ

10 thoughts on “心血管リスクの高い人はオメガ3脂肪酸値を上げれば有害な心血管イベントを減少させられるか?

  1. 私は、ロトリガ、エパデールでEPA/AA比が0.7以上になっても、値的にどちらも大幅に基準値越え、特にAAの爆上げが気になっていました。
    同じような事は、鯖やイワシの缶詰や、高濃度に魚油が添加された魚肉ソーセージでも起きている可能性がありますし、そもそも海に面していないヨーロッパでは0.1もザラとか。
    基準値や比率自体疑わしいですし、何より魚油添加で肉類増やした訳ではないのにAAが上昇する点が、もしかすると良くない点かもしれませんね。

    1. プチプチさん、コメントありがとうございます。

      私はEPA/AA比は全く気にしていません。糖質制限では、比率も恐らく意味がないと思っています。
      基準値も糖質過剰摂取状態の人の基準値にすぎません。
      またアラキドン酸も悪玉ではないと思っています。

      1. ご返信ありがとうございます。では糖質制限下のRLPコレステロールはどうでしょう。中性脂肪が低く(40~80くらいまで)HDLが高ければ(70以上)はsdLDLはほぼないと言われていますが、私はRLPが基準値超えることがあります。

        1. プチプチさん、

          中性脂肪が低くHDLが高い場合、sdLDLはほぼないと言ってもゼロではないでしょう。私はある測定法ではコレステロールの4%ありました。
          測定法によっても結果は大きく違いますが。
          RLPコレステロールは12時間以上の絶食時間や前日の飲酒がないなどの条件でも基準値を超えていますか?
          LDLがすごく高ければもしかしたら基準値を超えることもあるかもしれません。レムナントもゼロにはならないでしょうから。

          1. 確かに、RLPが基準値超えした時、前日もガッツリ飲酒し、当日は空腹ではなく、カンムケコーヒー(脂質30~50g)後でした。てもここで一つの疑問が。12時間の絶食後が基準値内なら問題ないと言えるのでしょうか。確か食後のTG上昇によりsdLDLが増えるんでしたよね。となるとたとえ糖質制限食でも食事内容によっては、やはり食後TGスパイクが起きて、一時的にしろsdLDLとRLPの上昇にも繋がり、なんらかの影響があるように思います。空腹時の血糖値だけでは問題を見過ごしてしまうのと同様に。

          2. プチプチさん、コメントありがとうございます。

            TGスパイクもレムナントも糖質過剰摂取によるものだと考えています。
            糖質制限食でもアルコール摂取が多いことでレムナントは増加している可能性はあります。

  2. 清水先生、こんばんは。
    オメガ3により中性脂肪が低下し、もう少し効果があるのではないかと思ったのですが、ほとんど意味がないのですね。
    第三相試験を行なっているので、第二相では期待できる結果だったのかもしれないですね。でも、この結果では中止せざるを得ないですね。

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      オメガ3のEPAやDHA自体は重要なものだと思いますが、単独、つまり薬剤やサプリではほとんど効果がないのではないかと思っています。

  3. サプリメントも効能の信憑性に問題ありそうですが、最近のジェネリック医薬品の製造工程ずさん
    報道には驚きました。ジェネリック支持でしたので。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      ジェネリックもその企業により色々でしょう。
      サプリはもっと色々でしょう。

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