空腹時ではない随時血糖値と様々な疾患のリスク

糖尿病は心血管疾患のリスクが非常に高いですが、糖尿病ではない人において、高血糖はどれほど糖尿病で良く起きうる合併症を起こすでしょうか?

今回の研究では、メンデルランダム化解析(最近メンデルランダム化の論文がやたら多い気がします。)という手法を使って、高血糖がどれほど網膜症、神経障害、腎症、慢性腎臓病、末梢動脈疾患、心筋梗塞の原因となるかを分析しています。メンデルランダム化解析は観察試験に交絡因子を除外し、因果関係を明らかにするツールと考えられています。(ここなどを参照)(図は原文より)

上の図はベースラインで糖尿病と診断されていない人の随時血糖値(空腹時ではない、食事時間とは無関係に測定した血糖値)のカテゴリーごとの様々な合併症の予想されるリスクを示しています。随時血糖200mg/dL以上が糖尿病と診断される条件の1つです。図の左上から順に、随時血糖値、網膜症、末梢神経障害、糖尿病性腎症、末梢動脈疾患、心筋梗塞です。随時血糖値のカテゴリーは一番下が200mg/dL以上ですが、その他はその基準を下回った随時血糖値です。

血糖値が144~199ではそれぞれのリスクは、網膜症12.73倍、末梢神経障害2.48倍、糖尿病性腎症11.57倍、末梢動脈疾患1.33倍、心筋梗塞1.4倍です。

網膜症と腎症では血糖値が117~143の人でさえ約5倍、99~116の人でさえ1.9倍のリスクがあります。

上の図は1mmol/L(18mg/dL)高い血糖値のリスク比です。随時血糖値が18mg/dL高くなると、因果関係の強さを表す、因果リスク比は網膜症2.93、末梢神経障害1.87、糖尿病性腎症1.58、心筋梗塞1.34でした。

糖尿病の診断基準を下回る随時血糖値でさえ様々な心血管疾患のリスクの原因となりうると考えられます。空腹時だけでなく、いつのときでも血糖値の上昇が微小血管および大血管にダメージを与えているのです。そうすると、食後であってもできる限り血糖値を上げない食事が重要になるということです。

そのような食事は糖質制限以外には考えられません。様々な血糖値の上昇を穏やかにする方法が提案されていますが、やはり一番は上げないことです。血糖値の上昇が穏やかになると言って、180が160になったとしても、全く不十分だと思われます。

当然、白米を玄米にしたくらいでは大きな効果が得られるとは思えません。

糖質過剰症候群

「Impact of Glucose Level on Micro- and Macrovascular Disease in the General Population: A Mendelian Randomization Study」

「一般集団における微小血管および大血管疾患に対するグルコースレベルの影響:メンデルランダム化研究」(原文はここ

3 thoughts on “空腹時ではない随時血糖値と様々な疾患のリスク

  1. 腎臓や網膜の血管はそれだけ繊細、障害を受けやすのでしょうか。
    透析治療や失明にはなりたくないものですが。 

    自己測定器で測ると、空腹時が80前後。                          空腹でもランニングなどの運動後は90台に上がります。

    不要不急な血糖値変動予防の為にも、糖質制限継続します。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      このような研究は治療に全く反映されないだけでなく、
      逆にしっかり薬でコントロールするべきであるという方向に結びつけられてしまいそうです。
      糖質制限で解決するのに。

  2. ご返信ありがとうございます。
    日々ブログの理解度で自分の認知能力も測らせて頂いております。

    「しっかり薬でコントロールするべきである」というのが医学教育が目指す「標準治療」
    というものなのでしょうか。

    どんな仕事でも最善を目指して日々取り組めているわけではありませんが、、、

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