今回の研究の内容は、欧州糖尿病学会第57回EASD年次総会での発表の抄録なので、論文となっているものではないので、注意が必要ですが、興味深い内容です。
通常、時間制限のある食事(プチ断食)はインスリン分泌の頻度、量を減らし、脂肪を使ってエネルギーにする時間が増加し、代謝的な健康の改善をもたらすと考えられますが、絶食時には肝臓のグリコーゲンも使って糖を作ります。
しかし、非アルコール性脂肪肝の人では肝臓のグリコーゲンさえ上手く利用できないかもしれません。
今回の研究では、太りすぎまたは肥満の非アルコール性脂肪肝の男性8人(平均BMI 30.1、平均年齢62歳)が対象で、9.5時間または16時間の絶食をしました。
上の図のAは肝臓のグリコーゲンの変化です。黒いバーは9.5時間絶食、グレーのバーは16時間絶食です。9.5時間の絶食では肝臓のグリコーゲンは全く減少していません(+ 4.1±3.3%)。むしろちょっと増えてる?16時間の絶食でも(-2.4±4.7%)と減少していません。
Bは全身の脂肪の酸化(脂肪の燃焼)です。9.5時間を16時間に延長しても全身の脂肪の酸化は増加していません。だいたい1分間に2kJ=0.48kcalなので、1時間で29kcalしか脂肪をエネルギーにできていません。
恐らく非アルコール性脂肪肝の人ではインスリン抵抗性が高く、常にインスリン値が高いため、グリコーゲンや全身の脂肪を上手く使えないのでしょう。
通常の食事をしながらプチ断食をしても、すでにインスリン抵抗性が高い場合には、なかなか改善せず、痩せないかもしれません。まずは糖質制限でインスリン抵抗性を低下させることが必要かもしれません。
「Hepatic glycogen and whole-body fat oxidation are not modulated by one night of prolonged fasting in people with non-alcoholic fatty liver」
「非アルコール性脂肪肝の人では、肝臓のグリコーゲンと全身の脂肪の酸化は、一晩の長期の絶食によって調節されません。」(抄録はここの87)
早めに糖質制限に取り組まないと、
「高血糖の記憶」同様、取り返しがつかなくなりますね。
治療より予防のほうが、簡単だと思います。