糖質制限反対派は反対する前にもう少し糖質制限を知った方が良い

少し前に東洋経済オンラインに糖質制限反対派の記事が出ていました。東洋経済は江部先生の糖質制限の記事もありますし、反対派も載せていますね。どっちつかずの立場です。

今回の記事もつっこみどころ満載です。正直、糖質制限に対する知識が非常に乏しく、イメージや昭和の知識で記事を書いていて、話になりませんが逆に面白いです。

糖尿病なのに「糖質制限に挑戦した男」の大失敗(記事はここ
最悪の場合「心筋梗塞」「脳梗塞」に陥るリスクも

まずは記事の題名から変です。「糖尿病なのに」?糖尿病だからこそ糖質制限をするはずですが?

最悪の場合?どんな人でも心筋梗塞にや脳梗塞に絶対にならないという保障はありません。逆に糖質制限をしていない人では心筋梗塞や脳梗塞がものすごいいるのです。糖質制限をしたらこれらの疾患になりやすいというエビデンスは存在するのでしょうか?

なぜ太った欧米人は糖尿病にならないのか?

なりますけど…?

欧米人にはアジア人ではあまりお目にかかれない、超肥満な人が存在します。たとえば、元大関の小錦さんのような体型の人。小錦さんはあれだけ太っていても糖尿病ではないといいます。

糖尿病は糖質過剰症候群の一つの症状、疾患です。たまたま小錦さんは糖尿病の診断基準に当てはまらなかっただけで、自分の体重を支えられないぐらいの病的な肥満になってしまっています。蜂窩織炎や痛風も発症していますし。

日本人に肥満が増えた大きな理由は、食事の欧米化といわれます。

「欧米化」というわかったようで全く中身のわからない、「バランス」と同様にごまかすときの魔法のワードです。欧米化は何を指しているのでしょうか?

日本糖尿病学会も見解を出していますが、長期間、糖質制限をしたときに、体への影響に対するエビデンス(科学的根拠)が確立されていないことです。

現在最もエビデンスがあるのは糖質制限です。それはアメリカの糖尿病学会が認めていますが、日本の糖尿病学会はまだまだです。通常のいわゆるバランスの良い食事で多くの人が様々な疾患に苦しんでします。長期的に現在の食事は体に悪影響であると考えられます。

糖質ダイエットが話題になってまだ10〜20年ほどでしょう。

20年は経っていないでしょう?話題になってからはまだ10年も経っていないのではないでしょうか?

生命維持に欠かせない三大栄養素の一つである糖質を極端に制限した食生活を長期間続けた場合、体にどんな影響が出るか、あるいは糖質制限をやめたあとの反動がどうなるのか、基本的な問題が解決できていないのです。

生命維持に欠かせない糖質?もちろん体内のブドウ糖は欠かせないかもしれませんが、体内で作ることができるので問題ありませんが?

長期間というのは漠然としていますが、10年続けている多くの方は体調がすこぶる良いのではないでしょうか?私自身は体調がものすごく良いです。

糖質制限をやめなければ反動は来ません。やめる前提のダイエットの食事ではなく、一生の食事です。

どれくらい糖質をカットし、たんぱく質や脂質の摂取量や割合はどれくらいにするといいのか、エビデンスに基づいたノウハウがありません。個々人が自分の感覚や経験則で行っているケースが多いのが実態でしょう。

現在の厚労省や様々な学会が推奨する食事のPFCバランスにもエビデンスがないことをご存じないようです。

糖質制限を提唱する医療者によっても、糖質は50%以下に抑えたほうがいい、という人もいれば、なかには30%以下にすべき、という人もいて、信頼できる基準値がありません。

糖質制限を提唱する医師の中で、50%以下という人も30%以下という人も皆無でしょう。それはどちらも多すぎです。われわれ糖質制限を行っている人がどれくらい糖質を摂っているのかという知識もないのに、この記事は書かれています。批判をするなら、もう少し勉強してほしいですね。

ケトン体は糖質の供給が減少した際に、糖に代わってエネルギー源とすべく脂肪(脂肪酸)から産生される化合物で、飢餓状態や高熱・嘔吐、激しい運動などをしたときに、体の緊急対応措置として作られるものです。

恥ずかしくないのでしょうか?ケトン体は緊急対応処置?この方は当然糖質過剰摂取でしょうけど、自分にも少ないながらケトン体が作られていることを知らないのでしょう。普通の食事でも夜の空腹時はケトン体が出ています。赤ちゃんもケトン体いっぱいですが、赤ちゃんは緊急対応処置でケトン体を作っているのでしょうか?

ケトン体が出ている状態は正常ではありません。ケトン体は体が発するSOS、生体防御反応なのです。

人類の進化を過程を考えれば、ケトン体が出ていることが正常です。ケトン体がSOSなら、糖尿病にSGLT2阻害薬は使えないですね?本当の「SOS」は高血糖、高インスリン血症です。インスリン過剰分泌の方が生体防御反応なのです。不必要な糖質過剰摂取による高血糖を何とかするためにすい臓が頑張っているのです。

したがって交感神経の働きの低下、基礎代謝が落ちるなどの事象が起きます。

交感神経の働きが低下する、基礎代謝が落ちるというエビデンスありましたっけ?逆に糖質過剰摂取していると交感神経が過剰に優位になっているので、相対的には低下かもしれませんが。

糖尿病の患者さんがよく服用している薬に、余分な糖を尿と一緒に強制的に体外に排出して血糖値を下げるSGLT2阻害薬があります。この薬を内服中の患者さんが自己判断で糖質制限をしたために「正常血糖ケトアシドーシス」を引き起こして、救急搬送されてくるのです。

薬を使っている場合は、糖質制限に理解のある医師に相談した方が良いでしょうね。理解の無い専門医が多すぎて、患者さんが仕方なく自己判断で糖質制限をしてしまっているのでしょう。

長期的に糖質制限を続ければ、体になんらかの影響が出るのは、十分に予想されます。

はい、十分に予想されます。とても良い影響です。血糖値は落ち着くし、体重は減少するし、エネルギーに満ちてくるし、睡眠は良くなるし、食後の変な眠気は無くなるし、頭が冴えてくるし、様々な不調が改善するし、薬がどんどん必要なくなるし、いろいろ予想されますね。

ケトン体は、体の緊急措置であるため、一時的に出ても、継続して出続けることは考えにくいというのが、私の見解です。

えっ?ケトン体って出続けることは考えにくい?つまりいつかケトン体が出なくなるのですか?インスリンのようにたくさん出過ぎると枯渇したり、疲弊したりするのでしょうか?初めて聞く見解ですね?生理学的に正しいですか?ご自身の感想?妄想?

糖質を制限することで、相対的にたんぱく質の摂取が増えます。たんぱく質の増加は腎臓に負荷をかけます。

タンパク質増やして腎臓に本当に負荷をかけます?アメリカの糖尿病学会ではタンパク質制限は否定的だったような?(いつか糖質制限とタンパク質摂取については記事にします)

肉や乳製品など動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸(一般的に肉や乳製品に含まれる、常温では固形の脂肪分)のとり過ぎは動脈硬化、循環器系疾患の増加につながります。

脂質悪玉説からなかなか抜け出れないようです。以前の記事「飽和脂肪酸は心血管疾患を増加させるか?」で書いたように、飽和脂肪酸が心血管疾患を増加させるとは考えられません。

一つの栄養素を極端に控えるということは残りの栄養素の摂取割合を高めることになります。結果的にバランスが崩れ、残りの栄養素のとり過ぎにつながります。それがさまざまな体の不調を引き起こし、血糖コントロールをかえって悪くすることにもつながります。

糖質(炭水化物)を他の栄養素の3倍も4倍も摂ることは極端ではないのでしょうか?バランスがそんなに大切?エビデンスもないのに?糖質以外に何を摂り過ぎたら血糖コントロールを悪くさせるのでしょうか?

実際に、それを象徴するケースがありました。中国に単身赴任していた2型糖尿病の患者さんで、血糖降下薬を服用していた方がいました。中国では経口血糖降下薬が処方箋なしで薬局で購入できるため、10年ほど前から病院に通わず、自分で血糖値を測定しながら対処していたといいます。

しかし、あるときから血糖降下薬では血糖値が下がらなくなり、自己判断で内服薬を中止し、炭水化物をいっさいとらない糖質制限食に切り替えたというのです。具体的な食事は、野菜類と目玉焼き(朝食3個、昼食1個、夕食1個)を毎日食べる、という内容です。

それでしばらくは血糖値が安定していたようですが、2020年春頃から視力障害が出始め、同年9月に帰国した頃には口の渇きも強くなり、慈恵医科大学病院を受診しました。

すぐに検査をしたところ、高血糖に加え、悪玉コレステロール値は305(基準値60〜119mg/dl)、中性脂肪は271mg/dl(基準値30〜149)と高い値で、即入院となってしまったのです。

この例は、実際には何を食べていたのかわかりません。「野菜類と目玉焼き(朝食3個、昼食1個、夕食1個)を毎日食べる」だけでは当然ないでしょう。詳しい食事内容もわからない例を挙げても意味がありません。中性脂肪から考えると相当糖質を摂っているはずです。

そもそも糖質制限をしたのに、なぜ高血糖状態になってしまったのでしょうか。これは、たんぱく質と脂質のみをエネルギー源としたことで、血中の脂肪酸(遊離脂肪酸)濃度が高くなり、脂肪毒性を介してインスリン分泌能が低下したためと思われます。

糖質制限でインスリン分泌は低下します。必要ありませんから。しかし、インスリン分泌能は低下するとは思えません。脂肪毒性?内臓脂肪細胞に多量の中性脂肪が蓄積し遊離脂肪酸放出能が亢進しているか、脂肪膵になっている状態と勘違いしているのでしょうか?

そのため、少量の糖質しかとっていなくても(どんな食品でも、たいていはわずかながらでも糖質は含まれています)、血糖値が上昇してしまったということです。

肉などの食品はほとんど糖質ゼロですが?わずかな糖質では血糖値は上がらんでしょう?

炭水化物には食物繊維を含むものが多いため、炭水化物を制限すると食物繊維不足となり、血糖コントロールをはじめ、腸の健康を 阻害するなど、全身の健康にも影響が出ます。

炭水化物と糖質は意味が違います。あくまで糖質制限は糖質の制限です。食物繊維を制限してはいません。米などの穀物を摂らなくても、食物繊維は十分に摂れます。

さらに腸内環境でいえば、糖質制限下では積極的に食べてよいとされる肉、とくに赤身肉(牛肉・豚肉・羊肉)は、食べ過ぎると腸内環境が悪化するばかりか、大腸がんのリスクも高まるので注意が必要です。

肉は本当に腸内環境が悪化するのでしょうか?糖質制限をしている人で肉によって腸内細菌がどうなるかというエビデンスはほとんどないと思います。逆に糖質により腸内細菌が乱れるという研究はあります。

赤肉と大腸がんの関係は非常に怪しいです。以前の記事「赤肉には発がん性があるのか? その1」「結構久しぶりの糖質制限否定の記事だけど その2 肉と大腸がん」などを参照してください。

糖質制限を否定したり、反対したりするのであれば、少しは糖質制限の知識を得てから行ってほしいですね。非常に残念です。これでは医師ではなく、当然専門医でもなく、一般の糖質制限を知らない人がテレビで得た知識とほとんど変わりません。

どうやら下のような本を出しているようです。すごく興味があります。読んでみたいけどもったいないからやめます。もっとツッコミどころがいっぱいあるんでしょうね?他の糖質制限反対派の人と同様にネズミさんの研究や、ガイドラインと同様に、本当は糖質制限となっていないような研究や食事アンケートによる研究もいっぱい引用されていそうですね。

私の本とは真逆のことが書かれていそうです。まあ、どちらを信じるかはそれぞれの方が決めていただければいいです。どちらが正しいかはいずれわかるでしょう。

9 thoughts on “糖質制限反対派は反対する前にもう少し糖質制限を知った方が良い

  1. 真偽不明の健康情報をもっともらしく並べた、よく見る糖質制限批判ですね。
    記事の目的も意味不明です(糖質で潤う企業を宣伝のためなら納得ですが)。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      東洋経済は糖質制限肯定派、反対派両方の記事を載せたいのでしょう。
      どちらが正しいかは読者が決めてくださいということでしょう。

  2. 昔、ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン(Jean Anthelme Brillat-Savarin)というフランス人がいました。彼は1825年に『Physiologie Du Gout』(直訳するなら『味覚の生理学』)という著書を出しており、この中にいろいろと興味深い記述を残しています。

    La seconde des principales causes de l’obésité est dans les farines et fécules dont l’homme fait la base de sa nourriture journalière. Nous l’avons déjà dit, tous les animaux qui vivent de farineux s’engraissent de gré ou de force ; l’homme suit la loi commune. La fécule produit plus vite et plus sûrement son effet quand elle est unie au sucre :

    (肥満をもたらす重要な原因の2つ目は、ヒトが日々の食事の基本としている小麦粉やデンプンにある。すでに述べたように、デンプンを食べている動物の身体には、有無を言わさず、強制的に脂肪が増えていく。デンプンは、砂糖と組み合わせることにより、より迅速に、より確実にその効果が発揮される)

    Or, le régime antiobésique est indiqué par la cause la plus commune et la plus active de l’obésité, et puisqu’il est démontré que ce n’est qu’à force de farines et de fécules que les congestions graisseuses se forment, tant chez l’homme que chez les animaux ; puisque, à l’égard de ces derniers, cet effet se produit chaque jour sous nos yeux, et donne lieu au commerce des animaux engraissés, on peut en déduire, comme conséquence exacte, qu’une abstinence plus ou moins rigide de tout ce qui est farineux ou féculent conduit à la diminution de l’embonpoint.

    (肥満を防ぐ食事と呼べるものは、肥満が起こるとき、誰もがよく知っている特徴的な原因に基づいたものだ。ヒトにおいても、動物においても、脂肪の蓄積はデンプンを食べるから起こる、というのは証明済みである。動物においては、我々が毎日目撃している現象である。肥った動物の肉の取引が商売として成り立っているぐらいなのであるから。明確な結論として、小麦粉やデンプン質が多いものを多少なりとも厳しく制限することで体重減少につながる、と推論できるであろう)

    この手の陋劣な記事を書いている人たちは、歴史を知らず、「私たちは先人たちの言葉も知りませんよ~」と、平気で無知を晒しているのです(カロリー信者の大半もそうです)。
    自身の無知ぶりを曝け出すのは、恥ずかしくないのでしょうか?

    ブリア=サヴァランはインスリンの名前こそ知らなかったようですが、「動物を肥らせたくば、穀物を食べさせよ」と喝破しているのが慧眼です。

    なんにせよ、先人たちのほうがこういう事実を知っていたわけです。

    1. クリードンさん、コメントありがとうございます。

      全て先人たちが正しいわけではないので、何とも言えませんが、
      生理学的に正しいかどうかは重要ですね。

  3. 清水先生、いつもありがとうございます。

    糖質制限批判の記事を読む度に、思うのですが、大学教授の方々がなんでこの位の事しか言えないのか不思議でなりません。
    心筋梗塞を起こすまでは、健康の事など何一つ考えてなかった者としては傲岸不遜ですが。

    糖尿病で糖質制限者として思うのですが、患者側にも問題があると思います。「糖尿病は治らない」が独り歩きしていますし、直ぐに死なないと云う側面もあるでしょうが、ただ、私の回りの糖尿病の人達は何年も前から糖尿病なのに、血糖値の意味さえ理解していない人がいます。
    HbA1cも理解していませんし、「医者は7まではいいと言っている」とか、「俺は7.3だったけど、医者がこの位大丈夫って言っていた」など驚きです。思わず「そんな事言っていたら糖尿病と云う病気は無いじゃないか」と感情的になりましたが。
    何十年と続けて来た食事で糖尿病になったのに、1ヶ月か2ヶ月に一回受診し薬を処方して貰い、それで何とかなるなど、フテー了見だと思います(言葉が乱暴ですが)。
    糖質制限者としては、日本糖尿病学会がいつ糖質制限の文言をそろ~と入れるのかが楽しみです。

    「糖質過剰」症候群Ⅱは非常に分かりやすかったです。新型コロナ渦にあっても、清水先生の御著書は私の精神安定剤です。
    これからも何度も読み返す事になると思います。

    1. 太田さん、コメントありがとうございます。

      拙著ご購入ありがとうございます。

      仰る通り、患者側にも大いに問題があります。
      自分の体なのに、医師に任せっきり、自分で調べもしない人もいっぱいいますからね。

  4. 健康番組で1-2分間、この先生の食事を紹介してました。白米大盛やパン2-3枚食べてるのかと思いきや、納豆+オリーブオイルのみでした。悪質ですよね。某理事長のように学会では反対しながら、自分の病院や個人の食事でこっそり糖質制限してましたというのに比べれば許容範囲かもしれませんが。

    1. 通りすがりさん、コメントありがとうございます。

      ははは(笑)、誰しも自分の体は一番大事ですからね。

Dr.Shimizu へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です