2型糖尿病の寛解率は5%以下?

2型糖尿病は糖質過剰症候群なので、糖質制限で大きく改善することが多いです。そして、寛解まで到達できることも珍しくありません。糖尿病の場合は「完治」とは言いません。寛解です。食事を戻せばまた、いずれ耐糖能が悪化するからです。

今回の研究では30歳以上のスコットランド2型糖尿病の人162,316人を対象に、寛解に関する要因を調べました。この研究の寛解の定義は1年以上継続的に糖尿病の薬を使用することなくHbA1cが6.5未満であること、としています。結果は7,710人(4.8%)が寛解でした。(図は原文より)

上の図は横軸が年齢のカテゴリー、縦軸が寛解率です。色のついたグラフは体重減少量です。体重が減少するほど寛解率が高いことがわかります。寛解した人は中央値で6.5kgの体重減少、寛解していない人は3.3kgでした。75歳以上の年齢層では15kg以上体重減少の寛解率は14.5%でした。恐らく肥満によるインスリン抵抗性の増加により糖尿病発症を招いている人もかなりいるために、体重減少が非常に重要な因子となってくるのでしょう。

 

上の図は様々なパラメータでの寛解の可能性を示しています。意外なのは高齢者の方が寛解の可能性が高いことです。食事量自体が減ってくるからでしょうか?高齢者は、若い人よりも低いBMIと低いHbA1cで糖尿病を発症します、わずかな体重増加後に糖尿病と診断された可能性があります。

寛解は診断時のHbA1c中央値と逆相関していました。診断時にHbA1cが6.5%〜6.9%の人と比較して、診断時にHbA1cが6.5%未満の人の寛解の可能性が高くなっていました。診断時のHbA1cが高いほど寛解の可能性は低くなっています。つまり早く見つかれば寛解の可能性が高くなると思われます。

糖尿病の薬を処方された人と比較すると、薬の処方をされていない人の方が大きく寛解の可能性が高く、14倍以上です。これも当然、薬が必要なほどではない状態で食事を改善したり、体重を落としたりすれば、そのままHbA1cは低下するでしょう。

体重変化については先ほどと同様です。減れば減るほど寛解の可能性が高くなります。

肥満手術の既往歴のある人は、既往歴のない人と比較して寛解の可能性が非常に高かくなりました。日本ではあまりメジャーではないですが、やはり高度の肥満が多い国では手術療法も一つの大きな選択肢なんでしょう。

結局は薬が必要ないほどの耐糖能障害を早く見つけて、食事などを改善し、体重を減らすことが重要となってくると思います。逆に考えればそうではない場合、症状が進んでしまった状態の場合、標準治療ではほとんど寛解に持っていけないということを意味します。糖質を摂りながら血糖値を下げるのは薬が無ければ難しいでしょう。ということはずっと寛解にはなりません。

今回の研究の結果は、寛解率が4.8%と標準治療としては非常に高い数値でした。他の研究ではもっと悲惨です。(「2型糖尿病の標準的な治療の成績は悲惨」、「厳しいカロリー制限で体重減少し糖尿病が寛解…でもその後は?」など参照)

しかし、糖質制限の寛解率は20%前後です。(「2型糖尿病に対する糖質制限の長期的効果 2年間でも圧倒的! その2」、「2型糖尿病に対する糖質制限の長期的効果 3.5年のエビデンス」など参照)さらに、もっと初期の段階で気付いて糖質制限を始めればほとんどの人が寛解すると思います。

ただ、空腹時血糖しか測定しない現在の健康診断等では早期に見つけることがなかなかできません。空腹時血糖が90を超えていたら、一度食後の血糖値を自分で測定してみた方が良いかもしれませんね。100を超えていたらすぐに糖質制限でしょう。

 

「Epidemiology of type 2 diabetes remission in Scotland in 2019: A cross-sectional population-based study」

「2019年のスコットランドにおける2型糖尿病寛解の疫学:横断的人口ベースの研究」(原文はここ

3 thoughts on “2型糖尿病の寛解率は5%以下?

  1. 「結局は薬が必要ないほどの耐糖能障害を早く見つけて、食事などを改善し、体重を減らすことが重要となってくると思います。逆に考えればそうではない場合、症状が進んでしまった状態の場合、標準治療ではほとんど寛解に持っていけないということを意味します。糖質を摂りながら血糖値を下げるのは薬が無ければ難しいでしょう。ということはずっと寛解にはなりません。」
    頑張れ! 糖尿病専門医!(糖尿病を寛解させてください!)

  2. >空腹時血糖が90を超えていたら、一度食後の血糖値を自分で測定してみた方が良いかもしれませんね。
    >100を超えていたらすぐに糖質制限でしょう。

    先生、私は41歳男、171cm/59kg、腹囲72cmで脂肪肝がないことはドックで確認済みです。
    運動強度13メッツのジョギングを週4~5回こなし、1日の糖質量80g前後で過ごしていますが、朝の血糖値は95~105の間です。
    糖質は意識して避けていますが、それでもタンパク質や脂質が豊富な食品にくっついてきますから、どうしても80g前後になってしまいます。
    スーパー糖質制限と呼ばれる1日の糖質量50g以下なんて何を食べたらできるんでしょうか?
    教えて下さい!

    1. 小島忠司さん、コメントありがとうございます。

      どんなものを食べているのかわかりませんが、肉や魚などの動物性のタンパク質、脂質はほとんど糖質はゼロです。
      大豆製品でも豆腐1丁食べても6g程度です。その他の野菜、調味料を含めても80gにはならないでしょう。
      市販の食品を摂っているのであれば、もちろん糖質は多くなってしまいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です