2型糖尿病の標準的な治療の成績は悲惨

以前の記事「2型糖尿病に対する糖質制限の長期的効果 2年間でも圧倒的! その2」で書いたように、糖質制限をすると2型糖尿病を逆転できる可能性がぐんと高まり、寛解に持っていけることも十分あります。その記事の中で出てきた通常の治療での寛解率は2.4%でした。

この寛解率は、この研究だけのものであり、実際にはもっと高いのでは?と思う方もいるかもしれません。そこで、2つの研究を見てみましょう。

122,781人の成人の2型糖尿病の寛解率を分析しました。部分寛解を薬物療法なしで糖尿病以下の血糖値で、少なくとも1年HbA1c5.7~6.4であること、完全寛解は、薬物療法なしで少なくとも1年間の正常血糖、HbA1c5.7未満。そして長期寛解は少なくとも5年間は完全寛解を持続する、と定義されています。その結果は次のようです。(表は原文より改変)

寛解発生率

 7年間の累積発生率(95%CI)1,000人年当たりの発生率(95%CI)
任意の寛解  
 すべて1.60%(1.53〜1.68)3.00(2.86〜3.14)
 診断から2年未満の期間4.55%(4.25〜4.88)8.77(8.15-9.39)
 診断から2〜3年後の期間2.54%(2.31〜2.79)4.74(4.29 – 5.19)
 診断から4〜5年後の期間1.67%(1.46-1.89)3.03(2.63〜3.42)
 診断からの経過時間6〜9年0.82%(0.70〜0.96)1.49(1.25〜1.72)
 診断からの経過年数≥ 10年0.37%(0.30〜0.45)0.67(0.53 – 0.80)
部分寛解1.47%(1.40〜1.54)2.75(2.62 – 2.88)
完全寛解0.14%(0.12〜0.16)0.24(0.20 – 0.28)
長期寛解0.007%(0.003〜0.02)0.035(0.007〜0.063)

部分寛解、完全寛解、または長期寛解の発生率は(1,000人年当たり)、それぞれ2.8、0.24、および0.04でした。部分寛解、完全寛解、または長期寛解の7年間の累積発生率は、それぞれ1.47%、0.14%、および0.007%でした。7年間の寛解達成の累積発生率は、すべて合わせて1.60%、新たに発症した糖尿病を有するサブグループで4.6%(診断から2年以内)でした。

2型糖尿病の寛解は非常にまれです。この研究の結果は以前の記事の2.4%よりも低い値です。悲惨です。長期寛解なんて夢物語のようです。しかし、これが標準的な治療の現状です。

当然、すい臓のβ細胞が十分残っている段階の方が寛解は得られやすくはなります。年数が進めば進むほど、寛解は難しいでしょう。それはβ細胞がどんどん壊れていくからです。前回の記事の平均の糖尿病歴は8年でした。この研究の表で当てはめると、診断から6~9年のところで、寛解率は0.82%です。それが糖質制限群では17.6%でした。圧倒的です。もっとしっかり糖質制限をすればもっと寛解率は高くなると考えられます。もちろん前回の研究とは機関の違いはありますが。

「Incidence of Remission in Adults With Type 2 Diabetes: The Diabetes & Aging Study」

「2型糖尿病の成人における寛解の発生率:糖尿病と加齢研究」(原文はここ

もう一つの研究は、生活習慣に強力に介入したら、寛解率はどうなるかを見ています。一つのグループは最初の6ヶ月間、週1回のグループカウンセリングと個々のカウンセリング、その後6か月は月3回のセッション、月に2回のコンタクト、2~4年は定期的なリフレッシュグループとキャンペーンという集中的な強力な介入を受けたのです。もう一方のグループは食事、身体活動、および社会的支援に関する年3回のグループセッションを受けました。こちらは通常の糖尿病への介入ということでしょう。その結果は次のようです。(図は原文より)

上の図は部分または完全寛解率です。グレーのバーが集中的強力な介入群、黒いバーが通常群です。通常群では2%程度でずっと同じです。集中的介入群では1年目が11.5%ですが年を追うごとに低下し、4年で7.3%まで低下しています。

寛解を得た人の約3分の1が毎年、糖尿病に戻ってしまっています。通常群も毎年約半数は寛解後に糖尿病に戻ってしまっています。

上の図は寛解を得ている年数です。集中的介入群では2年以上続いたのが9.2%ですが、4年となると3.5%まで低下します。通常群は4年では1%以下です。

つまりこの差は何を示しているのかというと、集中的に生活習慣に介入することにより、大きく寛解率が上昇するということです。それは薬の治療が効果を示しているのではないことを暗に示しています。薬で寛解に持っていけるのではなく、生活習慣、特に食習慣を改善することが寛解に繋がるのです。

ただ、集中的に強力に介入すると言っても、食事療法は恐らく糖質制限ではないカロリー制限の介入であるので、持続的効果は認められません。段々と寛解率は低下してしまっています。また、通常の介入は全く意味をなしていないこともわかります。

この2つの研究でわかることは、如何に標準的な治療の効果がないかということです。このようなデータを信じれば、「糖尿病は一生」の病気です。薬をやめられることなんて非常にまれなことであり、進行していきます。糖尿病を逆転できるなんて考えられません。糖尿病は治らない病気として洗脳されてしまいます。

しかし、一方で糖質制限の結果は非常に有効性を認めています。少なくとも通常の治療よりは圧倒的に有効です。以前の記事「食事を変えれば糖尿病を逆転できる」で書いたように、医療が寛解を糖尿病の逆転を妨げていると考えられます。

糖尿病が発覚したら、すぐに糖質制限を始めれば、恐らくは逆転可能です。標準治療という回り道をしなければ…。もちろん、その前から糖質制限をして、糖尿病にならないことの方が大事ですが。

「Association of an intensive lifestyle intervention with remission of type 2 diabetes」

「集中的なライフスタイル介入と2型糖尿病の寛解との関連」(原文はここ

12 thoughts on “2型糖尿病の標準的な治療の成績は悲惨

  1. こんにちは。お世話になります。
    早速質問ですが、2型糖尿病の寛解とはどういう状態でしょうか。
    糖尿病の診断基準を満たさない状態になったということでしょうか。それには75gブドウ糖負荷試験も含まれるのでしょうか。

    1. 西村典彦さん、コメントありがとうございます。

      記事の最初の方に「部分寛解を薬物療法なしで糖尿病以下の血糖値で、少なくとも1年HbA1c5.7~6.4であること、
      完全寛解は、薬物療法なしで少なくとも1年間の正常血糖、HbA1c5.7未満。
      そして長期寛解は少なくとも5年間は完全寛解を持続する、と定義されています。」と書かれています。
      血糖値は空腹時血糖値で、糖尿病以下とはいわゆる境界域100-125mg/dLです。正常血糖は空腹時血糖100未満です。
      長期寛解は「治癒」という表現もされています。OGTTなどを含んではいません。

      説明が中途半端で申し訳ありませんでした。

  2. 再度、質問させてください。
    糖質を摂取しなければ数値が改善するのは糖質セイゲ二ストなら常識ですが、それを持って寛解とするのはどうもしっくりきません。。治癒とは言っていないのであくまでも寛解なのだと思いますが、現在の標準治療を続けるかぎり寛解などはほぼないわけで、単純にそれとの比較で寛解と言っているだけのように思えます。
    OGTTで数値が改善して糖尿病の診断基準を満たさなくなったと言うのであれば寛解というのも納得できます。素人目には寛解と言う言葉はほぼ治癒したと同じ感覚ですが、その時点では高糖質の物を摂取しても血糖値が上がらなくなった、糖尿病でない方と同じものを食べても大丈夫と言う事ではないですよね。寛解なら再発の可能性はあれど、その時点では糖尿病ではなくなった、すなわち、高糖質の物を食べても血糖値が健常者と同じくらいしか変動しなくなったと言うのであれば良いのですが。

    1. 西村典彦さん

      私は糖尿病は糖質を過剰に摂取することにより起こると考えています。
      原因となるものを取り除いた後、体が改善して、もう一度原因となるものを摂取するというのはいかがなものかと思いますが。
      毒を食べて具合が悪くなった人が、体調が戻って治癒した後、もう一度その毒を食べても体調を崩さないようにしなければ
      本当の治癒ではないのでしょうか?糖質はマイルドな毒です。

      糖質制限でインスリン抵抗性が改善したりβ細胞が回復すれば、一時的に糖質で血糖値が健康な人と同じになる人もいると思います。
      しかし、そのまま糖質過剰摂取を続けていればまた、逆戻りになってしまうのは当然です。

      おっしゃることはわかりますが、糖質摂取に体が適応していない人が無理な摂取で病気になるのですから、
      糖質摂取を一生制限するのが得策だと思います。
      糖質摂取が人体に必要なものだと思い込んでいる人には、考え方が変わらない限り難しいと思います。

  3. 前回の質問について考え直してみました。
    糖質は食べなくても良い、過剰摂取は体に害があると言う認識はありましたが、過剰摂取の量についての認識が甘かったため、前回の質問に至ったと思います。
    要するにいわゆる「バランスの良い食事」に含まれる糖質量は糖尿病患者にとっては過剰な糖質量だが、健康な人にとっては過剰ではないと言う思いがどこかにあり、寛解なら少なくともその時点では健康な人と同じ「バランスの良い食事」ができるはずだと考えたわけです。糖質制限食はあくまでも治療食であるとどこかで思っていたように思います。
    しかし、「バランスの良い食事」自体が健康な人にとっても糖質過剰であると考えれば、食べなければ数値が改善しているので寛解であると言う事がしっくりきました。
    アルコールで肝機能障害を起こした人がアルコールをやめれば数値が改善して治癒するのと同じ事であり、「バランスの良い食事」で糖尿病になる人、ならない人がいるのは、アルコールに強い人、弱い人がいるように糖に強い人も弱い人もいると言う事ですね。ありがとうございました。

  4. はじめまして。
    いつも楽しく拝見させていただいております。

    6/13のNHK「クローズアップ現代」にて、最近になって第6の味覚として「脂肪味」が発見され、脂肪を継続的に摂取するとこの味覚が衰えて、肥満や脳卒中、心臓病、糖尿病などに罹るリスクが増加する可能性があると紹介されていました。

    https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4293/index.html

    2年ほど前に健康診断でやや危険と診断され、それ以来糖質制限中で脂質の摂取量はおそらく多めなのですが、味を意識したことはあまりありませんでした。
    (ココナッツオイルはオリーブオイルに比べて甘いかな?となんとなく感じていた程度です)

    これらの内容について、糖尿病治療・予防の観点からどのように判断すれば良いでしょうか。
    (個人的には現在の糖質制限生活を続けられればと思っています)

    1. unnuhoさん、コメントありがとうございます。

      「“脂肪味”に鈍感な人は、脂肪をとり過ぎてしまう危険がある。肥満や、それに関連した脳卒中、心臓病、糖尿病などの病気につながる可能性がある。」
      との記述が最初の方にあります。典型的な脂質悪玉説に則った考えだと思います。糖質制限をすればもちろん脂質たっぷりです。
      糖質制限を続け、良質の脂質とタンパク質をたっぷり食べるのが良いと思います。

  5. 私は69歳のガチガチのセイゲ二ストです。
    卵は日に4個食べることもありますし、ラードやオリーブオイル、ココナッツオイルも
    多用しています。豚の脂身や、鶏肉の脂身も気にせず食べていますが、体調はすこぶる
    良好です。炭水化物を取っていた時より体重は10Kg減しリバウンドはありません。
    狭心症、片頭痛、切痔もなくなり毎日気分爽快です。従ってほとんど医療費はかかりません。
    脂肪悪玉説は、自分の体でためしてみて到底信用できません。

    1. Crazy Japaneseさん、コメントありがとうございます。

      糖質制限で体調が良く、何よりだと思います。
      脂肪悪玉説はお金も絡むので、当分は無くならないでしょう。

  6. NHKテレビ番組「きょうの健康」で8月は糖尿病特集をやってましたね。京都大学の糖尿病専門医が出演していましたが、案の定、マッチポンプの「標準治療」の話でした。

    財源の確保が法律上保証されているNHKは、スポンサーの干渉や行政府の容喙からは無縁なはずですから、「糖質制限の真実」から目をそらさないでほしいと思いました。国民のためになる正しい健康情報をしっかりと提供することがNHKの存在理由なんですから。

    1. やまもと りんたさん、コメントありがとうございます。

      NHKは国営ではありませんが、いろいろと国との絡みはありそうですよね?
      ただ、「正しい」というのは非常に難しい言葉です。一般的な医療では標準治療は「正しい」治療です。
      しかし、そのもととなる医学が「正しい」かというとそうとは言えないのです。
      そこまで追求する気がなければ、自ずと標準治療を放送することになるでしょう。
      NHKが革新的な内容の番組を放送するとは思えません。できるとすればネットの番組ではないでしょうか?

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