肥満であると糖尿病予備軍でも腎臓に負担がかかっている

糖尿病の合併症では網膜症、腎症、神経障害という3大合併症が有名ですが、合併症という言葉は糖尿病が原因でこのようなことが起こる、または糖尿病だからこのような疾患を併発することを想起させます。しかし、実際には糖尿病だから起こるわけではなく、高血糖やインスリン抵抗性で起きる、つまり糖質過剰摂取による糖質過剰症候群だと考えられます。慢性腎臓病(CKD)の原因疾患としては糖尿病性腎症がダントツですが、拙著「肥満・糖尿病の人はなぜ新型コロナに弱いのか 「糖質過剰」症候群II」で書いたように、糖尿病だけでなくそれ以外の原因もほとんどが糖質過剰摂取で起きています。つまり、慢性腎臓病は糖質過剰症候群です。

企業などの毎年の健康診断、人間ドックの普及、そして医療の進歩にもかかわらず、どんどん慢性腎臓病は増加しています。何かおかしいと思いませんか?検査で見ているものが的外れであり、治療の標的が間違っている以外に説明が付くでしょうか?

糖尿病を発症するというのは突然起きるわけではなく、前糖尿病、その前段階と連続性のものであり、糖尿病は勝手に線引きをして、これ以上は糖尿病だよ、と決めただけです。だから糖尿病になっていなくても糖質過剰摂取を続けていればリスクは当然上がるでしょう。

今回の研究では、合併症や既往歴、内服歴のない54名の腎移植ドナーを対象として研究が行われました。BMI、インスリン抵抗性、糸球体内圧、アルブミン尿の関連性を分析しました。アルブミン尿は腎障害の指標となります。

54人のうち、33人は空腹時高血糖(IFG)または耐糖能障害(IGT)を示し、31人は正常な耐糖能(NGT)を示しました。糸球体内圧(Pglo)およびアルブミン尿(UAE)は、肥満のIFGまたはIGTの人で有意に高くなりました。(図はこのプレスリリースより)

そうすると、BMIとインスリン抵抗性は糸球体内圧と関連しており、BMIが高いほど、またインスリン抵抗性が高いほど糸球体内圧が高まることがわかりました。

 

上の図はBMI、インスリン抵抗性、糸球体内圧とアルブミン尿の関連を示しています。BMIが高いほど、糸球体内圧が高いほど、インスリン抵抗性が高いほどアルブミン尿が多くなります。

前糖尿病であっても肥満である人は糸球体内圧が高く、腎症の判断基準となるアルブミン尿が多いことが明らかになりました。

そして糖尿病性腎症の原因である糸球体内圧とインスリン抵抗性が関連しており、糸球体内圧の上昇がアルブミン尿の増加と関連していたのです。アルブミン尿が一般的にいわれている正常範囲内であっても糸球体内圧と関連していると明らかになりました。恐らくその延長線上に糖尿病性腎症があるのでしょう。

つまり、糖尿病という病気が腎症を起こしているわけではなく、最初に書いたように、高血糖、インスリン抵抗性により腎臓の負担が増加していいると考えられます。肥満との関連も、肥満はインスリン抵抗性、糖質過剰症候群ですから、当然ですね。

多くの人が、インスリン抵抗性の検査もしていませんし、食後血糖値も知りません。しかし、インスリン抵抗性の検査の代用は可能で、中性脂肪値とHDLコレステロールで推測可能です。肥満や過体重はもちろんですが、中性脂肪値が高く、HDLコレステロール値が低い方はすぐに糖質制限をすべきです。腎機能が低下してからでは遅いかもしれません。

 

「Association of Albuminuria With Intraglomerular Hydrostatic Pressure and Insulin Resistance in Subjects With Impaired Fasting Glucose and/or Impaired Glucose Tolerance」

「空腹時血糖障害および/または耐糖能障害のある被験者におけるアルブミン尿と糸球体内静水圧およびインスリン抵抗性との関連」(原文はここ

2 thoughts on “肥満であると糖尿病予備軍でも腎臓に負担がかかっている

  1. 慢性腎臓病(CKD)を始め、心臓弁膜症やロコモ等々、「こんな症状は早めの受診を」勧める
    日本医師会のCMがありますが、早めに受診して医療機関が潤うことは確かでしょうが、
    患者に確かな利益があるのか、疑問です。

    本気で国民の健康を憂慮されているのなら(根拠の確かな)予防の啓蒙
    が必要と思いますが、スポンサーつかなそうですね。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      確かに早めの受診が患者の利益になっていないことも多いでしょうね。
      早めに受診して、診断を受けても、慢性疾患にさせられることも多いですからね。

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