高脂肪食は太らないどころか体重が減少する

いまだに脂質(脂肪)を摂ると太ると思っている人がいます。およそ摂取エネルギーの30%を摂るのと、その2倍の60%摂るのではどれくらい体重が変化するでしょう?みなさんはもう答えがわかりますね。

今回の研究では、2型糖尿病の71人、平均年齢56歳くらいの人を対象に、2つのグループに分けました。1つは最大20%の炭水化物、50〜60%の脂質、25〜30%のタンパク質の食事の低炭水化物高脂質群、もう一つは50〜60%の炭水化物、20〜30%の脂質(飽和脂肪酸は10%未満)、20〜25%のタンパク質の食事の高炭水化物低脂質のコントロール群です。(表は原文より改変)

変数ベースライン0〜3か月3〜6か月
低炭水化物コントロール低炭水化物コントロール変化の平均差低炭水化物コントロール変化の平均差
1日あたりのKcal1805±771840±971701±521664±10418±991642±621600±119−3±103
炭水化物(E%)42.1±1.245.9±1.712.5±1.048.5±0.7−31.9±2.113.4±1.248.4±1.0−30.5±2.2
タンパク質(E%)19.4±0.818.9±0.822.9±0.621.4±0.81.1±1.323.4±0.722.5±1.00.4±1.3
脂質(E%)38.2±1.234.5±1.964.5±1.029.5±1.031.0±2.263.2±1.228.3±1.030.6±2.2
飽和脂肪酸(g/日)24.8±1.721.7±3.044.2±1.816.1±1.524.0±3.240.7±2.215.6±1.321.5±3.2
一不飽和脂肪酸(g日)20.8±1.618.5±2.736.1±1.713.6±1.319.9±3.133.0±1.812.5±1.117.7±3.1
多価不飽和脂肪酸(g/日)8.6±0.78.2±0.816.5±0.97.6±0.68.2±1.515.8±1.27.0±0.78.1±1.5
食物繊維(g/日)21.8±1.124.3±1.416.0±0.931.2±2.2-13.2±1.815.9±1.130.1±2.1-11.9±1.9
砂糖(g/日)46.2±3.154.6±5.922.4±1.255.4±4.1−26.0±4.622.2±1.552.1±4.9−22.1±4.8

上の表はベースライン、3か月、6か月の食事内容です。低炭水化物食では炭水化物は12~13%程度で、脂質は63~65%程度でした。飽和脂肪酸もたっぷりです。

コントロールの2倍以上の脂質割合です。

ベースライン3ヶ月6ヵ月
低炭水化物コントロール低炭水化物コントロール低炭水化物コントロール変化の平均差
HbA1c(mmol

/mol)

54.3±1.456.1±1.543.7±1.054.3±1.843.6±1.053.2±2.1−7.5±1.8
空腹時血糖値(mmol/L)8.6±0.39.3±0.47.2±0.28.6±0.47.2±0.38.7±0.5−0.7±0.4
血清インスリン(pmol/L)173±38156±19148±30165±21136±30158±25−35±23
HOMA-IR9.7±2.49.4±1.47.1±1.68.7±1.16.8±1.78.8±1.9−2.0±1.6
血清C-ペプチド(pmol/L)1251±881285±771147±931322±961070±751218±77−93±91
血中ケトン体(mmol/L)0.25±0.020.23±0.020.48±0.070.19±0.270.32±0.030.18±0.020.13±0.08
LDL(mmol / L)2.3±0.12.4±0.22.3±0.12.2±0.22.4±0.12.2±0.20.3±0.2
HDL(mmol/L)1.2±0.041.1±0.061.3±0.041.1±0.051.3±0.041.1±0.070.1±0.0
中性脂肪(mmol/L)1.91±0.172.12±0.251.42±0.111.93±0.221.42±0.111.66±0.15−0.05±0.23
総コレステロール(mmol/L)4.3±0.14.4±0.24.2±0.14.1±0.24.4±0.14.1±0.20.3±0.2
BMI(kg/m 232.5±0.935.2±1.430.8±0.934.5±1.430.7±0.934.9±1.5−1.4±0.4
重量(kg)97.7±3.2102.1±4.492.7±3.399.8±4.192.6±3.5101.9±4.4−3.9±1.0
胴囲(cm)110.9±2.1114.8±3.0103.7±2.2112.0±3.6103.2±2.3114.0±3.3−4.9±1.3
ヒップ周り(cm)108.4±1.7113.4±2.9107.5±1.9113.4±3.2104.9±1.8112.2±3.2−2.0±1.2

上の表は様々なパラメータの推移です。低炭水化物食ではHbA1cが有意に低下しましたが、血糖値やインスリン値、インスリン抵抗性は有意ではありませんが低下傾向でした。ケトン体は3か月で480μmoL/L 、6か月で320μmoLだったので、ある程度は糖質が制限されていたようです。体重やBMIも有意に低下していました。体重のコントロールとの平均値の差は6か月で-3.9kgでした。脂質を2倍以上も摂っていたのに、低炭水化物の方が体重減少です。

総脂肪量は低炭水化物で減少し、平均値の差は-2.2kgでした。除脂肪体重も低炭水化物食やや減少し、平均値差は-1.3kgでした。

高脂肪食は一般的な思い込み、イメージとは異なり、体重やBMIを減少させ、体脂肪量を低下させます。それはもちろん脂質の摂取を増やした分、糖質摂取量が減少したからです。さらに当然ですがHbA1cも低下させています。

高脂肪食というよりも糖質制限食は2型糖尿病患者の心血管リスク因子に悪影響を及ぼさないというよりも有益な効果をもたらします。

低脂肪食はいまだにヘルシーの象徴のような食事です。それはもちろん低カロリーとも結びついています。しかし、現実には高脂肪食、つまり高カロリーでも糖質制限食の方が健康的な食事と言えるのです。

2型糖尿病、心血管疾患が糖質過剰症候群であることを考えれば当然でしょう。太っている人に脂質の摂取量を減らすように指導したり、アドバイスしたりする医師や栄養士は、無知か騙そうとしているかどちらかでしょう。迷わず糖質制限ですね。

 

「Effects of a 6-month, low-carbohydrate diet on glycaemic control, body composition, and cardiovascular risk factors in patients with type 2 diabetes: An open-label randomized controlled trial」

「2型糖尿病患者の血糖コントロール、体組成、および心血管リスク因子に対する6か月の低炭水化物食の効果:非盲検ランダム化比較試験」(原文はここ

8 thoughts on “高脂肪食は太らないどころか体重が減少する

  1. 私個人の体感ですが、脂をたくさん摂るとお腹が空かなくなるのでおやつとか要らなくなります。
    まあ、世にいうおやつは糖質であることがほとんどなのでそもそも欲しくないんですけど 笑
    たまに脂を摂り忘れるとお腹が空きますね。
    お腹が空いたらナッツを食べたりオリーブオイルを飲んだりしています。
    1箱150グラムのバターを年間100箱は消費していますが体重は変わらないですね…
    BMI22は欲しいのですが、2月の健康診断では21.5でした…

    1. ミホさん、コメントありがとうございます。

      確かに脂とタンパク質をしっかり摂っていればお腹はあまり空きませんね。
      BMI21.5でも十分だと思います。

  2. 「低脂肪食はいまだにヘルシーの象徴のような食事です。それはもちろん低カロリーとも結びついています。しかし、現実には高脂肪食、つまり高カロリーでも糖質制限食の方が健康的な食事と言えるのです。」糖質制限者の常識ですが、
    世の中の常識になれば医療費削減に大いに寄与しそうですね。

    「2型糖尿病、心血管疾患が糖質過剰症候群であることを考えれば当然でしょう。太っている人に脂質の摂取量を減らすように指導したり、アドバイスしたりする医師や栄養士は、無知か騙そうとしているかどちらかでしょう。迷わず糖質制限ですね。」
    無知なのか、アップデートの習慣無いのか、糖質過剰で利益を得ているのか??

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      糖質制限は医療費削減には良いですが、医師は仕事が激減してしまいます。

  3. 清水先生、こんばんは。
    高脂肪に関して、糖質制限をすると、どうしても脂肪摂取の割合が大きくなると思います。
    最近、目にして少し気になるのは、高脂肪は前立腺がんの原因になるとの報告です。
    また、短鎖脂肪酸はIGF-1を増加させることで前立腺がんの原因になるとの報告があります。短鎖脂肪酸は、腸の栄養になるということでいいと思っていました。ただ、IGF-1が関係するならば、前立腺がんだけでなく、他のがんも増えるのではないかと思うのですが、不思議です。
    こういう報告は、糖質制限の条件かどうかわからないので、なんともいえないように思うのですが、どうでしょうか?

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      どの論文についてお話しされているのか不明なので、どうでしょうかと言われても答えようがありません。
      高脂肪食というキーワードから推測するとマウスの研究ではないでしょうか?
      人間の腸内細菌がIGF-1を増加させるという根拠の論文を教えて下さい。
      短鎖脂肪酸が悪いのであれば、食物繊維は危険ですね。
      でも、IGF-1は糖質過剰摂取で増加します。その方がメカニズム的に考えやすいですが。

  4. 清水先生、不十分なコメントで失礼しました。
    論文ではないので不十分な情報になります。1)と2)は大阪大学からの報告です。
    1)世界初! 腸内フローラによる前立腺がんの増殖メカニズムを解明
    https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210527_3
    2)腸内フローラが作り出す「短鎖脂肪酸」という物質を産生する細菌が、前立腺がん患者の便中に多いことを発見
    https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210707_1
    これは前立腺がん疑いの日本人からの便のようです。
    近畿大学からもニュースリリースされています。マウスの結果のようです。
    https://www.kindai.ac.jp/news-pr/news-release/2021/05/032555.html

    先生のブログでもIGF-1は糖質過剰摂取で増加するとあったと記憶しています。

    1. じょんさん、情報ありがとうございます。

      やはりネズミさんでしたね。
      人間でも短鎖脂肪酸を作る腸内細菌がいることは相関関係があるのかもしれませんが、
      本当に原因かどうかは怪しいですね。
      そして、もしこれが本当だとしても、どのような食事でその細菌が増加するかは人間ではよくわかっていないはずです。

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