運動は健康のためです。激しい運動でなくても軽い運動でも(もしくは軽い運動の方が)十分健康に寄与するでしょう。
よく〇〇を食べると血液がサラサラになるという話がありますが、多くは根拠に乏しいと思います。また医師に言われて理由もよくわからず、血液をサラサラにする薬を飲んでいる人もいるでしょう。しかし、血液をサラサラにする機能は自分の体の中に標準装備されています。歩くだけでも血液が固まりにくくなる、つまりサラサラになると考えられます。
凝固および線溶系の異常は脳卒中や心筋梗塞のリスク増加の重要な予測因子です。
今回の研究では、片麻痺性歩行障害のある18人(男性16人、女性2人)の脳卒中患者を対象としています。平均年齢は66歳、BMIは27でした。70%以上(13/18)が補助歩行装置を必要とする程度に障害があります。最大の60%程度の運動を20分間行い、その前後で検査をしました。
上の図は組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)の活性をベースラインと運動直後と運動60分後で示しています。tPAは線溶系に関わる重要な因子で、つまり血栓を溶かす働きがあります。そのtPAは運動直後で大きく活性化(79%増加)し、60分後でもベースラインよりも上回って(41%増加)います。
上の図はプラスミノーゲン活性化阻害因子1(PAI-1)の活性です。PAI-1は線溶系の阻害因子で、さきほどのtPAを阻害することで血栓を安定化させます。凝固と線溶系は絶妙なバランスで成り立っていますが、PAI-1が増加してしまうと血栓ができやすくなることになります。糖質過剰摂取ではインスリンが増加し、PAI-1が上昇します。(「高血糖は凝固を促進し、高インスリン血症は線溶を阻害する」など参照)
PAI-1は運動の直後に18%の減少し、60分後にはさらに減少し、ベースラインから25%の低下を示しました。
たった1回のウォーキングで体の中ではこのような変化が起こり、血栓をできにくくしています。しかも、運動後1時間もそれが持続しています。
つまり、ずっと座ってばかりの生活で、しかも糖質過剰摂取をしていれば、いつ血栓が詰まって大きな問題を引き起こすかわかりません。
脳梗塞も糖質過剰症候群です。糖質制限+運動+日光が重要でしょう。
「A single bout of walking exercise enhances endogenous fibrinolysis in stroke patients」
「1回のウォーキング運動は、脳卒中患者の内因性線維素溶解を強化する」(原文はここ)