主要な臓器および組織の安静時代謝率

人間の臓器はそれぞれエネルギーの代謝率が異なります。主要な臓器の安静時代謝率はどれくらいなのでしょうか?

131人(男性67人、女性64人)の非肥満の健康な成人を分析しました。(表は原文より改変)

まずは年齢層別の参加者の特徴と体組成です。

すべての参加者 21〜30歳 31〜50歳 51〜73歳
参加者(人) 131 43 51 37
 男性 67 16 25 26
 女性 64 27 26 11
年齢(歳) 41.8±14.83 25.9±2.0 40.5±5.1 62.0±5.3
体重(kg) 73.7±12.4 70.0±11.3 74.8±12.5 76.7±12.7
身長(m) 1.74±0.08 1.74±0.06 1.75±0.09 1.73±0.08
BMI 24.2±2.9 23.0±2.7 24.4±2.8 25.4±2.7
脂肪(kg) 17.9±6.7 16.6±6.7 18.6±6.6 18.3±6.7
脂肪 (%) 25.0±8.3 24.3±8.7 25.8±8.2 24.6±8.1
除脂肪体重(kg) 55.9±11.4 53.3±10.0 56.2±12.3 58.4±11.0
骨ミネラル質量(kg) 2.58±0.46 2.53±0.40 2.61±0.46 2.62±0.54

若い世代は女性が多く、50歳以上は男性が多いので、体重や除脂肪体重などは年齢が高いグループの方が高くなっています。

下の表は主要な臓器および組織の質量と全身の安静時エネルギー消費量(REE)です。

すべての参加者 21〜30歳 31〜50歳 51〜73歳
肝臓(kg) 1.39±0.253 1.35±0.23 1.41±0.25 1.41±0.28
脳(kg) 1.33±0.11 1.33±0.11 1.34±0.10 1.32±0.12
心臓(kg) 0.31±0.08 0.31±0.09 0.30±0.08 0.33±0.07
腎臓(kg) 0.29±0.06 0.28±0.06 0.28±0.05 0.31±0.06
骨格筋(kg) 26.3±6.3 25.0±5.9 26.7±6.6 26.9±6.4
脂肪組織(kg) 19.4±6.4 18.4±6.4 19.9±6.3 19.9±6.5
残存臓器・組織(kg) 24.7±5.2 22.8±3.9 24.9±6.0 26.5±4.6
REEm(測定値)(kcal/d) 1575±241 1547±241 1590±248 1586±234
REEp(予測値)(kcal/d) 1588±234 1535±220 1596±239 1636±236
REEm − REEp(kcal/d) −13±80(0.068) 11±80(0.36) −6±79(0.59) −50±67(<0.001)

面白いことに、男女、体格、年齢の差があるにも関わらず、臓器の重さはほぼ一定ですね。安静時エネルギー消費量も年齢が上がっても大きくは低下しないように見えます。また、これも面白いことに(ちょっとこじつけ?)、グルコースやケトン体を作る肝臓とそれを消費する脳の重量がほとんど同じであり、血液を送り出す心臓とその血液をろ過する腎臓の重量がほとんど同じです。

下の表は主要な臓器および組織の安静時代謝率です。

臓器/組織 以前の研究 21〜30歳 31〜50歳 51〜73歳
kcal/kg/d kcal/kg/d kcal/kg/d kcal/kg/d
肝臓 200 202(199、205) 199(197、202) 194(191、197)
240 242(238、245) 239(236、242) 233(229、236)
心臓 440 443(437、450) 438(432、444) 426(420、433)
腎臓 440 443(437、450) 438(432、444) 426(420、433)
骨格筋 13 13.1(12.9、13.3) 12.9(12.8、13.1) 12.6(12.4、12.8)
脂肪 4.5 4.54(4.47、4.60) 4.48(4.42、4.54) 4.36(4.29、4.43)
残存 12 12.1(11.9、12.3) 12.0(11.8、12.1) 11.6(11.4、11.8)

年齢とともにやや代謝率が低下するものの、そこまで大きな変化ではありませんね。先ほどと同様に、面白いことに、肝臓と脳の代謝率は似ていて、心臓と腎臓の代謝率もほぼ一緒です。これらの休まずに働く臓器とは対照的に筋肉や脂肪は安静時の代謝は非常に少ないですね。特に脂肪組織は筋肉の3分の1程度です。

これらの中で増やしたり減らしたりできるのは筋肉と脂肪だけです。筋肉量を維持する、または増やすことは安静時のエネルギー消費を維持するのには必要かもしれませんね。

また、休まずに働く臓器には安定したエネルギー供給が必要でしょう。そのためには脂肪酸、ケトン体が最も重要でしょう。

 

「Specific metabolic rates of major organs and tissues across adulthood: evaluation by mechanistic model of resting energy expenditure」

「成人全体の主要な臓器および組織の特定の代謝率:安静時エネルギー消費の機械的モデルによる評価」(原文はここ

2 thoughts on “主要な臓器および組織の安静時代謝率

  1. あらゆる臓器にエネルギーを供給する血管を健全に保つ事が大事ですね。
    その為にも糖質制限は必須ですね。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      血管も臓器も高血糖を避け、インスリン過剰分泌を避けることが必須だと思います。

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