小児の肥満と1型糖尿病

2型糖尿病は糖質過剰症候群です。しかし、拙著「肥満・糖尿病の人はなぜ新型コロナに弱いのか 「糖質過剰」症候群II」でも書いたように、自己免疫疾患も糖質過剰症候群であり、自己免疫が関係する1型糖尿病も糖質過剰摂取が原因の一つではないかと思っています。さらに小児の肥満が1型糖尿病のリスク増加と関連することは、1型もすべてではないかもしれませんが、糖質過剰症候群である可能性を示唆しています。

今回の研究では、イギリスの大規模ヘルスケア情報データベースの45万4,023人と、1型糖尿病患者コホート研究1万5,573人のデータを用いて、メンデルランダム化(MR)解析という手法により、小児期の肥満と1型糖尿病発症リスクとの関連について分析しています。

上の図は1型糖尿病の発症の可能性の2つの研究、一番下が2型糖尿病の可能性で、オレンジが小児の体のサイズ、青が大人の体のサイズのカテゴリーが増加ずるごとの可能性の増加を示いています。2型糖尿病はやはり大人の体のサイズ、つまり肥満が大きくかかわっています。しかし、1型は小児の頃の体のサイズが大きくかかわり、1型糖尿病の発症の可能性は2.27倍です。

得られた結果をもとに、小児の高度肥満の割合が15.9%から5.9%へと10%低下すると仮定し推定すると、1型糖尿病の新規発症患者数が約22%減少すると予測されました。

別の研究でも、子供のBMIの増加はすい臓に対する自己抗体を促進するというものもあります。706人の単一自己抗体陽性の小児を追跡し、累積過剰BMI(ceBMI、年々持続的にBMIが増加)をみると、ceBMIが0以上、つまり持続的にBMIが増加している9歳以上の子供は下の図のように、単一の自己抗体陽性から複数の自己抗体陽性になっている割合が高くなりました。(図はここより)

左が9歳未満、右が9歳以上です。黒い線がceBMIが0未満、グレーの線がceBMIが0以上です。9歳以上で自己抗体が陽性となって、年々BMIが増加している方が複数の自己抗体を持つ割合が高くなります。

さらに、食事アンケートとGI(グリセミックインデックス)という質の低いデータによる研究ですが、79人の膵島自己抗体陽性が見つかった小児(平均年齢4.8歳)を平均3.5年追跡したところ、17人の子供が平均年齢6.22歳で1型糖尿病と診断されました。平均のGIが高いことは自己抗体陽性の小児の1型糖尿病へのより急速な進行のリスクを2.2倍高くしました。(図はここより)

そして、上の図のようにGIにより3つのグループに分けると、最もGIが高い人(長い破線)が最も1型糖尿病への進行が早く、最も低い人と比較しておよそ8倍でした。

自己免疫疾患の代表的な疾患は性差が非常に大きく、女性の割合が多いのが普通です。日本では女性(女児)の方が割合は多いのですが、しかし、国によっては1型糖尿病は男女差が少なく、どちらかというと男性が多いのです。(ここ参照)何か自己免疫とは違う要因を示唆します。

糖尿病の根底にはβ細胞の脆弱性があり、自己免疫的な攻撃や高血糖やインスリン抵抗性などの代謝的なストレス、酸化ストレスなどに対しての感受性も個人個人で違うのでしょう。自己免疫も恐らく糖質過剰摂取が大きく関連していると思いますが、そこに非常に小さなころ、幼児からの糖質過剰摂取による頻回の高血糖や酸化ストレスなどが加わり、1型糖尿病を発症するのだと考えています。

私は1型と2型を完全に分けて考えるべきではないと思っています。どちらも直接的にも間接的にも糖質過剰摂取が大きくかかわる糖質過剰症候群でしょう。いずれにしても、子供でも、若くても、余計な糖質は摂ることは様々なリスクを上げる可能性が高いと思います。

 

「Childhood body size directly increases type 1 diabetes risk based on a lifecourse Mendelian randomization approach」

「子供の体のサイズは、ライフコースメンデルランダム化アプローチに基づいて1型糖尿病のリスクを直接増加させる」(原文はここ

4 thoughts on “小児の肥満と1型糖尿病

  1. リチャード・K・バーンシュタイン医師は、12歳のときに一型糖尿病を発症したのことです。炭水化物が多いものを避け、血糖値を厳格に管理するようにしたことで、もうすぐ90歳を迎えようとしています。一型糖尿病患者としては、かなりの長寿ですね。

  2. 因果関係不明ですが、糖質過剰摂取の蔓延と、
    アレルギーなどの自己免疫疾患の激増は、無関係とは思えません。

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