たくさん薬を飲んでいるのは処方カスケードではありませんか?

高齢者ともなれば、山のように薬を飲んでいる人が珍しくありません。いわゆるポリファーマシー、多剤併用の状態です。どうしてそうなってしまうかというと、もちろん高齢者では様々な症状が出てきてもおかしくはないのですが、一方で一つの疾患や症状である病院から薬をもらった副作用で別の症状が発生し、その副作用に対してまた薬が処方され、その薬の副作用で…と無限ループのような状態が発生する可能性があります。この状態は処方カスケードと呼ばれています。

カスケードとは、連なった小さな滝のことで、数珠繋ぎ、連鎖的に物事が起きることを言います。

(上の図は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)について」より)

上の図のようにある病気、症状で受診した病院の薬によって副作用として別の症状が現れることがあります。その別の症状で別の病院に受診すると、知識のある医師であれば副作用だと気づくかもしれません。もちろん、副作用と気づいても元も薬をやめることができなければ、その副作用にまた別の薬が出てしまいます。どんどん薬が増えるのです。

有名な処方カスケードのパターンを示します。(図はここより)

 

元の薬の処方医と副作用の処方医が違うことも多いので、副作用による処方の変更をすることもできない場合も多いでしょう。患者もそして医師もどれが最初の症状で、どれが副作用の症状なのかがわからなくなってしまい、次々薬が増えて、どれ止めることができるのか考えることもしなくなるでしょう。

認知症の薬であるドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害薬には頻尿、尿失禁の副作用があります。そうすると尿失禁の薬である抗コリン薬という薬が処方されます。コリンエステラーゼ阻害剤を投与された認知症の高齢者は、その後抗コリン薬を投与されるリスクが1.55倍高くなるという研究があります。

抗コリン作用のある薬は脳にも作用することがあります。高齢者に抗コリン薬を使用するとその副作用で、せん妄という意識障害や、記憶障害や注意力の障害など、認知症様の症状が急性に見られることは、良く知られています。認知機能にも悪影響があります。認知症薬のコリンエステラーゼ阻害薬は脳内のアセチルコリンを増やす作用、一方抗コリン薬はアセチルコリンを抑制する薬なので、何をやっているか訳が分からない治療になってしまいます。

実際に、抗コリン薬を3年以上毎日常用量を使用した場合、認知症全体の発症リスクが1.54倍、アルツハイマー病の発症リスクが1.63倍と有意に増加するという研究もあります。(ここ参照)

さらに、認知症薬のコリンエステラーゼ阻害薬の副作用には不眠や興奮などがあります。そうすれば眠剤(安定剤)、興奮を抑えるような抗精神病薬が処方されることは容易に想像できます。副作用でめまいを起こせばめまいの薬、嘔気嘔吐を起こせば制吐剤ともう何が何だかわかりません。

認知症の薬を使っても効果は限定的です。認知症だけでなく全ての慢性疾患は予防からが重要であり、そのためには生活習慣、つまり、食生活改善や運動が必要です。多くの疾患は糖質過剰症候群です。食生活はもちろん糖質制限が基本です。それにより様々な症状が改善し、認知症にもなりにくくなるでしょう。処方カスケードに陥る前に、自分を見直すべきでしょう。症状を全て薬で良くしようとしてはいけません。まずは自分を変えるべきです。

医療は必要ですが、その前の段階の方が重要なのです。自分でできること、変えることをせずに医療にだけ頼ると、医療の餌食になる可能性があります。

 

「A prescribing cascade involving cholinesterase inhibitors and anticholinergic drugs」

「コリンエステラーゼ阻害薬と抗コリン薬を含む処方カスケード」(原文はここ

4 thoughts on “たくさん薬を飲んでいるのは処方カスケードではありませんか?

  1. 副作用も、想定内。
    副作用で処方が増えてもたらされる
    経済的利益も織り込み済み
    だとしたら、
    医療機関が潤う分、
    患者は不利益を被るの
    かもしれませんね。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      選べるのであれば、医師をちゃんと選ばないと。自分の体のことですから。
      しかし、住んでる地域によって選択肢がない場合は大変ですね。
      私も選んでもらえるような医療を心がけたいと思います。

  2. 世の中のほとんどの人が、医者は薬を出すのが仕事だと思っているので、薬を減らしたり出さなかったりするのが難しいのでしょうね。
    私はなるべく薬に頼らないような生き方を選びたいです。

    1. ミホさん、コメントありがとうございます。

      もちろんすべてではありませんが、薬を出すのが医師の仕事になっています。
      しかも、自分の専門領域しか見えていない医師が多く、自分の専門領域の症状さえ軽減すれば
      他の症状や副作用にはあまり関心がない人さえいます。
      結局根本の治療になっていないので薬は増えるばかりです。
      多くの疾患では、食事を変えずに本当に治療をすることは難しいと思います。

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