冠動脈CTにおける無症候性アテローム性動脈硬化症の程度とスタチンの影響

人間の体は進化の過程で様々なメカニズムが確立してきました。そのメカニズムが狂うを症状や病気を発症しやすくなります。そのメカニズムを狂わせているものの一つは間違った食事です。しかし、もう一つ重要なものがあります。それは薬剤です。薬剤は人間のメカニズムを狂わせます。食事を変えずに薬だけに頼ると、その後起きてくる症状が薬なのか食事なのかわからない場合もあるでしょう。

コレステロールは人間にとって重要です。そのコレステロールを作るメカニズムを低下させるのがスタチンです。LDLコレステロール値だけ下がれば健康になれるのであれば良いのですが、コレステロールの重要性を考えると、スタチンで健康になれるとは思えません。

今回の研究では、糖尿病のある人とない人で、冠動脈の状態および心血管イベントとスタチンの影響を分析しています。

9 カ国の 17 施設で冠動脈CTを受け、ベースラインのスタチン使用に関するデータが入手可能な、正常な冠動脈CT所見または非閉塞性プラーク (<50% の冠動脈径の狭窄) を伴う糖尿病の患者と、糖尿病のない患者が含まれていました。合計7,247人の患者 (平均年齢 56.8歳) が対象で、追跡期間の中央値は 5 年でした。主要⼼⾎管イベントとセグメント関与スコア(SIS)で評価しています。

主要⼼⾎管イベント(MACE)は、全原因死亡、⼼筋梗塞、標的⾎管⾎⾏再建術としています。セグメント関与スコア(SIS)は患者あたりのプラークを伴う冠状動脈セグメントの数を表しています。7,247 ⼈の患者のうち、181 ⼈ (2.5%) が MACE を経験し (⾮糖尿病で2.3%、糖尿病で3.9%)、MACE イベントの内訳は、死亡110件、心筋梗塞62件、PCI8件、CABG1件でした。(図は原文より)

上の図は全体のスタチンの影響です。冠動脈の石灰化(CAC)によって分けています。全体的に見れば、スタチンはCAC100以上の患者のMACEを減少させましたが、CAC1〜100の⼈には⼤きな影響はなく、CACが0の⼈ではMACEが増加しました。

上の図は糖尿病と非糖尿病を分けてスタチンの影響を見ています。糖尿病の場合、ベースラインのスタチンはスタチンを受けていない人と比較して、MACE はCAC≧100では 0.24倍、 SIS≥3では0.23でした。しかし、糖尿病であってもCACが100未満およびSISが1~2では、MACE はスタチン群と非スタチン群で違いが認められませんでした。

⾮糖尿病では、CAC スコアが0の場合、MACEはスタチンを服⽤している患者の⽅が2.40倍も高くなっていました。SISが0では2.18倍でした。CAC(1〜99または≧100)およびSIS(1〜2または≧3)ではスタチン群と非スタチン群で差がありませんでした。

つまり、スタチンは、CACスコアが低い糖尿病患者の心臓イベントの予防には効果がなく、さらにスタチンは非糖尿病患者の転帰を悪化させるのです。

それでも、医師はLDLコレステロール値だけを頼りにスタチンを処方するでしょう。まさか自分が処方したスタチンが悪影響を与える可能性があるとは思っていません。中性脂肪値やHDLコレステロール値に全く言及しないスタチン医者からはすぐに離れるべきかもしれませんね。

心血管疾患は糖質過剰症候群ですから。

 

「Extent of subclinical atherosclerosis on coronary computed tomography and impact of statins in patients with diabetes without known coronary artery disease: Results from CONFIRM registry」

「冠動脈 CT における無症候性アテローム性動脈硬化症の程度と、既知の冠動脈疾患のない糖尿病患者におけるスタチンの影響: CONFIRM レジストリの結果」(原文はここ

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